第134話 銀行強盗

「動くな!」




俺は銀行に入ると、拳銃を取り出して銀行員に向ける




「きゃあぁ!」




銀行内に居た客は、俺の言葉を聞いていなかったのか、慌てて出口へと向かう




「動くなって言ってるだろ!」




俺は銃を構えると、威嚇のつもりで地面に向かって撃ったのだが、跳弾したのか、近くの女性に当たった




「うぅ!」




女性は腹を抑えて蹲る。それと同時に入口近くのランプが赤くなった。通報されたのだろう




「ちっ通報しやがったな!」




俺は銀行のカウンターにあった裸の数万円だけを掴むと、銀行から逃げた




俺はもともと土地勘があるため、パトカーの入れないような小道を通ると、生け垣を利用して隠れながら移動した




「たった数万円で重罪か」




俺は借金返済の足しにもならない金額に愕然としたが、やってしまったものはしょうがない




俺はアパートに帰ると、拳銃を返した




「どうだった?」




弟は組員で、今回の事を計画したのも弟だ




「だめだ、すぐに警察を呼ばれて失敗だ」




弟はテレビをつけると、緊急のニュースで銀行強盗について流れていた。そこに、丁度救急車に運ばれる女性が写っていた




「おぉ、一人殺したのか」




「こ、殺してない!」




俺は反射的に答えたが、もしかしたら、あの女性が死んだのかもしれないと思った




それから、何度か警察も家に来たが、弟が追い払っていた




防犯カメラにも顔は写っていないので、付近を捜査しているだけだろう




ある夜、夢を見た




「お前」




肉の塊の様な物が、俺に向かって指の様な物を伸ばす




「お前」




ぐちょっと足の様な物を前に出して進んでくる




「お前」




だんだんと近づいてくるが、俺は動けない




「お前」




俺の目の前まで来た時、目が覚めた




「どうした?うなされて。それより、あの女、助かったらしいぞ」




弟はニュースで情報収集をしていたのか、重傷だった女性に命の別状が無い事が分かった




俺はほっとしたが、数日後、新たな情報が入った




女性のお腹に居た赤ん坊は死亡したと




それ以来、俺は夢の中でたまに肉の塊に会う

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