第108話 彼女

先週、同棲していた彼女と別れた





きっかけは些細な事だったが、もともと彼女が僕に依存気味だったのが原因だと思う





僕のアパートは狭く、気持ちを切り替えるためにも、彼女の持ち物を片付けて送ろうと思う





彼女は僕と別れた後、近くの違うアパートに住んだようだ





彼女のアパートに荷物を届けると、連絡しないように電話番号も消した





それからしばらくすると、荷物が届いた





中身は、彼女の持ち物だった





「なんで荷物が?」





荷物が届いてしばらくすると、彼女は何事も無かったように僕の部屋に着た





「僕たち、別れたでしょ!」





僕がそう言うと、不思議そうな顔をしたが、僕はやり直すことは出来ないと思い、追い出した





しばらくして、僕が部屋に居ない間に、彼女の私物が置いてあることに気づいた





「あ、スペアキー渡したままだった」





僕は、彼女のアパートに行って鍵を返してもらおうとドアを叩くが、居ないようだ。鍵も閉まっている





「タイミングが悪かったか。連絡もできないし、また来よう」





次の日、また僕の部屋に彼女の私物が置いてあった。僕はそれをもってまた彼女のアパートに行くが、留守だ





居留守かと思ってしばらくドアに耳を当てていたが、何の音もしないので、本当に居ないようだ





次の日も、また私物が置いてある。いい加減にして欲しいと、アパートへ行ってみる。すると、パトカーと救急車が来ていた





「何かあったんですか?」





僕は、近くに居たおじさんに聞いてみた





「この部屋で、自殺があったみたいだ」





見ると、それは彼女の部屋だった。次の日の新聞では、死後1週間とみられると書いてあって僕は鳥肌が立った





今でも時々、彼女の私物が増えていることがある

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る