第90話 後悔
ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ、公園のブランコが風も無いのに揺れている
俺はそれをベンチに座りながら見ていた
あれは、とても暑い日だった
その日、妻が仕事で忙しく、4歳の娘の面倒は俺が見ることになっていた
家に居ても、「遊んで、遊んで」と付きまとってくる娘に、久しぶりの休みだった俺は、相手をするのがめんどうになり、公園に連れて行くことにした
俺は公園にある屋根付きのベンチでスマフォを見ていた
娘は、何が楽しいのか、走り回ったり、滑り台を滑って「あちち!」と言って途中で飛び降りたしていた
たまにこっちに着て「パパ、遊ぼう!」と言うが、俺は「今読んでる小説が見終わったらね」と言ってはぐらかした
しばらくして、娘が砂場で山を作るのに夢中になって呼びに来なくなった
そろそろ帰ろうかと思った時、娘は丁度ブランコに乗っていた
「帰る・・ぞ?」
俺がそう声をかけようと思った時、娘の手がブランコから離れ、空中に投げ出された
「大丈夫か!」
近寄ると、ちょっとしたすり傷はあるが、泣いていないし、そんなに痛くなかったのだろうと判断した
「ほら、帰るぞ」
俺は娘を連れ帰ろうと手を掴んで立たせようとしたが、娘はぐったりして起き上がらない
おでこを触ると熱かった
俺は救急車を呼んだ。救命医の話では、熱中症だろうと
「水分は取らせましたか?」
「いえ・・」
「この暑い中、帽子もかぶせないで何をしていたんですか!」
しばらくして、妻も病院に到着し、看護婦と同じように怒っていた
娘は、助からなかった
俺はうつ病になり、会社を辞め、妻とも離婚し、今は貯金を削って生活している
時間がある時は、こうやって公園で娘が乗っていたブランコを見ている
「俺も、死なないかな」
自分で死ぬ勇気が持てず、娘と同じように熱中症になって死にたいと思った
「おじちゃん、遊ぼう!」
見ると、娘と同じくらいの女の子が、一人で公園に着ていた
「ママかパパは?」
「家でパソコンしてる!」
俺と同じような、子供を放置するタイプの親みたいだ
俺は、しばらく遊んでやると、汗をかいているようなので、女の子にジュースを買ってあげた
「もう、大丈夫だね!」
そう言うと、女の子は消えた。娘が、様子を見に来てくれたんだろうか・・・
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