第74話 雪山で

「山小屋はどこだ」




我々登山同好会は、初めての雪山登山に苦戦していた




そろそろ、山小屋が見えるはずだ




天候が急に変わり、さっき通った道も、すでに足跡は無い




「仕方がない、ここで何か遮蔽物を作って野宿する」




風よけの木と、雪による壁で、直接の風雪を防ぐ




「隊長!」




若い青年が、彼女の様子がおかしいと訴えてくる




女性の様子を見ると、震えが止まらないようだ。おそらく低体温症だろう




強い風に濡れた体が原因だろう




今動いても、遭難するだけだ




青年は、一人ででも背負って下山すると言っているが、不可能だ




彼女は、青年に大丈夫だからと声をかけ、息を引き取った




青年も泣きつかれて、いつの間にか眠ったようだ




私も意識が飛んでいたのだろうか、目を覚ますと、いつの間にか風雪は止んでいた




すると、ライトのようなものが前方に見えた




誘われるように近づくと、山小屋があった




こんな近くにあったのかと思うと同時に、彼女が死ぬ前にここにこれたならと後悔した




ライトを照らしてくれたお礼を言おうと、山小屋へ入ったが、無人だった




私は迷わないように自分の足跡を辿り、青年を呼んだ




青年は、夢で彼女がこっちだよと手招きしていたそうだ




ただ、その方向は、私がライトを見た方向の様だった




私たちは、なんとか彼女の遺体を山小屋へ運んだ




次の日は、前日が嘘のように晴れ、警察に電話するとヘリコプターで迎えに来てくれた




私たちは、今でも彼女の墓参りを欠かさず行っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る