第54話 転落事故が多いマンション

このマンションは転落事故が多い




5階建てで、エレベーターも非常階段も着いている




配達をする人達、郵便局、宅急便、新聞配達、にとってはあそこのマンションは気を付けろというのが共通認識になっているくらいだ




マンションの住人も一人で出歩くな、出来る限り階段を使うなと注意はするものの、出ていく様子は無い




俺は、4階に宅急便を届けに行くところだ




先輩に注意を受けて、エレベーターを使用する




4階の一番奥がお客さんの部屋だ




「ごめんくださーい。宅配便です」




俺はチャイムを鳴らし、声をかける




「はいはい、今行きます」




しばらくして、ガチャリと鍵があけられ、40代くらいのおばさんが出てきた




「こんなところまでありがとね、これ飲んで」




おばさんはコーヒーを1缶くれた。ブラックだ




ハンコをもらって荷物を渡すと、おばさんは扉を閉めて鍵を閉めた




俺はそれを確認すると、歩き出した




そして、階段にさしかかったとき、「きをつけてね」とさっきのおばさんの声が聞こえた気がした




俺は振り向くが、誰も居ない




すると、エレベーターの方から「ダンダンダンッ」とスニーカーで床を叩くような音がした




俺はびっくりして近くの階段を下りた




すると、音も俺を追いかけてくる




踊り場の前で音が俺を追い抜いたとき、足を滑らせて階段から落ちた




幸い、5段ほどだったので大きな怪我はなかったが、痛みをこらえて急いで車に戻った




先輩にその話をする




「お前、エレベーターを使わなかったのか?」




「行きは使ったんですけど、帰りはエレベーターの方から急に音がしたので使えませんでした」




「あー、言い忘れてた事があった。あそこの住人からは何も受け取るな。お供え物だ。」




そういえば、と俺はポケットをさぐると、もらったはずのコーヒーが無かった




階段から落ちた時に落としたか・・・考えたくは無いが、消えたのか・・・




先輩が言うには、数十年前、自殺しに階段をゆっくり上がっていた女子高の生徒が、屋上に行く途中、足を滑らせて4階に落ちて死んだそうだ




「生きていたら、40歳くらいだろうか」




俺はそれを聞いて鳥肌が立った


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