第164話 3日目?-4

ア「我の出番が無かったのじゃ……。」


イ「アヌビス様、私も無かった。」




もう終わった事だし、二人には他の時に活躍してもらうとして、今回は我慢してもらうしかないな。すると、ニーナがトテトテと近づいてくる。




ニ「ほえー、人間にしてはやるのです。最後は格好つかなかったし、戦いもほぼモンスター任せでしたが、それを含めてあなたの実力だと思うので、うん、合格なのですよ。私の初めての人にしてあげてもいいのですよ?」




突然のカミングアウトに全員がぽかんとした表情になる。八岐大蛇に生娘って言われたのを気にしているのか?




レ「いや、見た目が小学生に手を出したら普通に犯罪だろ。」


ニ「いやいや、こう見えても年だけなら億の桁なのですよ?」


レ「いや、見た目を重視させてください。」


ニ「それじゃあ、私のすべてを見せてあげるのです!」




ニーナがそう言うと、体が光だした。これは、あの時の服の変化のやつか? そう思ってみていると、光っていて詳細は見えないが、全裸のシルエットが少しずつ大きくなり、さらに大きくなり、うんと大きくなり、6mくらいになったところで突っ込みを入れる。




レ「ってでかすぎだろ!」




すると、一旦ピタリと大きくなるのが止まり、光も収まって全身が分かる。半分ドラゴンのような見た目になっている。




ニ「え? これでもまだ全然元の姿には程遠いのですよ?」


ケ「ニーズヘッグだった時の姿に戻るのは止めろ。こいつらを踏み潰すつもりか?」




ケルベロちゃんからの冷静な突っ込みにより、ニーナは元の小学生くらいの大きさに戻った。どっちが元かは知らないが。




ヤ「次は白竜の所へ行きますか?」




俺は八岐大蛇のコアを回収し、弥生がニーナをブロックするように俺にニーナを近づけさせないようにしている。そんなことをしなくても、俺はニーナに手を出すつもりは無いぞ? 力づくで来られたら、どれだけ抵抗しようが無駄だろうし。そんなことを考えていたら、どこかで大きな音がする。




レ「なんだ?」


ヤ「あっちの方から聞こえた気がします!」




八岐大蛇の居た洞窟の更に向こう側の島からの様だ。ケルベロちゃんとニーナが血相を変える。




レ「ケルベロちゃん、何が起こっているか見に行こう! 転移で連れてってくれ!」


ア「あー、やめとけやめとけ、行っても死ぬだけだぞ?」




いつの間に居たのか、八岐大蛇の洞窟の上に、横に寝転んだ40代くらいのおっさんが居た。そして、尻をぼりぼり掻きながら欠伸をする。




ケ「お前は、アスタロス!」


ア「あー、お前は犬の……誰だっけ?」


ケ「あたちは犬じゃない! ケルベロだ!」


ア「まあ、どうでもいいが、行くなら止めないが、さっきも言ったが、死ぬだけだぞ? メィルとかいう女神が喧嘩を売ってきたからな。」


レ「メィルが? ケルベロちゃん、転移を!」


ケ「だが、アスタロスを放っておくわけには!」


ア「俺は何もしないが。復活したばかりで働く気も起きねぇし。」




アスタロスは再び欠伸をする。その隙に、弥生が鑑定をかける。




アスタロス(悪魔):HP90億、MP70億、攻撃力8億、防御力5億、素早さ7億、魔力4億、スキル:??? ステータス補正:攻撃力2倍、防御力2倍、素早さ2倍、魔力2倍




ヤ「ひっ、ラヴィ様より強い……?」




弥生がステータスを見て小さく悲鳴をあげる。大声を出したら、それだけで「死ぬ」みたいな。しかし、鑑定された事が分かっても、アスタロスは何かをする様子は無い。本当に戦う気どころか、動く気もなさそうだ。




ア「おっ、終わったみてーだな。」




ひと際大きく音がして、さっきまであった島が消滅する。その反動でここにも津波が押し寄せたが、アヌビスが闇の壁が防いだ。そこへ、何かが転移してきた。場所はアスタロスの近くだ。




ベ「ここに居たのかアスタロス。帰るぞ。」


ア「へいへい。ヴェリーヌの嬢ちゃんはどうしたんだ?」


ベ「まだ2体の女神と遊んでいる。じきにそちらも片が付くだろう。」




転移で現れた美青年の手には、気を失っているらしいメィルが掴まれていた。




メ「うっ、れ、零?」


ベ「もう気が付いたか。やはり、一旦コアにして持ち帰るか。」


レ「や、やめ……。」




俺の目の前でメィルはあっさりとコアになった。消滅する寸前、「逃げろ」と口が動いた気がした。




レ「貴様ぁ!」


ケ「やめろ!」




勢いのまま攻撃しようとした俺の肩を、ケルベロちゃんが掴む。それを無理やりはがそうとするが、ステータス差で無理だった。




レ「離してくれ! メィルが!」


ニ「ダメなのですよ! 殺されるのですよ!」




ニーナも弥生を押さえつけている。しかし、押さえつけられていないアヌビスが飛び出した。




ア「メィルを返すのじゃ!」


ヴェ「邪魔。」




飛び掛かるアヌビスの目の前にヴェリーヌが現れ、アヌビスを攻撃したらしい。クリティカル発生、アヌビスに2199868000ダメージ。アヌビスはコアになった。




ベ「終わったのか?」


ヴェ「はい。無事女神ランクⅡのコアを回収しました。こいつらは?」


ベ「ランクⅢのコアなぞ、こいつが手に入ったからにはもう要らぬ。」


ヴェ「はい。それでは帰還しましょう。」




3人の悪魔は、俺達の事が本当にどうでもいいようで、転移していった。




レ「何故止めたんだ!」


ケ「見たら分かるだろ! 戦っても死ぬだけだぞ!」




ケルベロちゃんがアヌビスを蘇生させながら叫ぶ。




レ「そんな事、分かってる! だけど、何もしないわけには!」


ニ「無理なのですよ。あの方は……あいつは、力を封印される前は元中級神。10分の1に力を封印されている今ですら下級神並みの実力なのですよ。誰も勝てないのですよ。」


レ「それなら、もっと上の、そうだ、はじまる様を呼べば!」


ケ「最高神様がそう簡単に動けるわけがないだろう! 落ち着け!」




本気で怒鳴るケルベロちゃんに、ビクリと体が怖気づいてしまう。落ち着いてなど居られないと叫ぶのは簡単だが、冷静な部分で叫んでどうなると思っている部分もある。あのメィルを、カリヴィアンですら余裕で戦っていたメィルをあっさりと倒すような奴だ。命が助かっただけでも儲けものだったのだろう。そう思っていたら、さっきよりも大きな衝撃が地面を伝わる。




ニ「!!? 星が、星が砕けるのですよ! 急いで退避するのですよ!」




さっき行われていた戦闘は、相当激しかったらしく、その余波で星自体にひびが入っていたようだ。巻き込まれたら絶対に生き残れないので、素直に全員ケルベロちゃんの転移でダンジョンへ転移する。そして、ダンジョン内もあわただしく動いているようで、見たことも無い神々が右往左往している。そして、その中からラヴィ様がこちらへ向かってきた。




レ「ラヴィ様、メィルが……。」


ラ「それは後にして。状況が悪化したわ。サンガ様が倒されてしまったの。」


ケ「サンガ様が!?」


ヤ「サンガ様って誰ですか?」




弥生が俺達を代表してニーナに聞く。その間にも、ケルベロちゃんとラヴィ様の情報交換が続いているからだ。




ニ「下級神様なのですよ。それも、最も硬いと言われる防御特化の神なのですよ。確か、防御力が50億だと聞いた事があるのです。」


ヤ「ごじゅうおく……? 本当に、桁が違う防御力ですね……。」


レ「それが倒されたって? 倒したのは、メィルを倒したやつか?」


ニ「推測ですが、そうだと思うのですよ。ただ、名前は知らない方がいいのですよ。あなた達では、聞いた瞬間に呪われる可能性が高いのですよ。」


レ「くそっ、メィルの仇の名前も知ることが出来ないなんて!」




俺達は、できる事もなく、ビジネスホテルに返されてしまった。星自体が無くなり、居場所のなくなったニーナは、暫定的に俺達の護衛として据え置かれることになった。ニーナは「やったのですよ! 未来の旦那様の近くに居れるのですよ!」と息巻いていたが、弥生が「そんな事はさせません!」と俺をよそに言葉での攻防を繰り広げていた。

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