第143話 地球-7

イ「馬鹿な! 貴様、本当に人間か?」




さっきのなかなかやるやつってボルト風の分裂体の事だったらしく、その前の弥生の戦闘は見ていなかったようだな。




イ「……そうか、お前たちは他の星の女神候補生か何かか。ちっ、救援がいやがるとはな。」


コ「いえ、彼らは……。」


イ「ふんっ、異世界召喚が使えるからっていい気になるなよ!」




人の話を聞かなさそうなやつだな。それに、レッサーゴブリンならそれこそボクシングチャンピオンとか、拳銃を持った警官でも十分倒せる程度のモンスターだろう。




レ「俺達は……。」


イ「だが、コレが居ることは想定内だ。こちらもそれに応じた切り札を用意している。」




本当に人の話を聞かないやつだな。




コ「切り札って何です!? 何をしようとしてるですか!」


イ「ふふふっ、神獣を知っているか? その辺のモンスターとは格が違う、本物の強さを持っている。」


ヤ「地球にはそもそもモンスターなんて居ませんが?」


イ「レッサーゴブリンを倒していい気になっているようだな。だが、その程度は神獣にとっても朝飯前だ。お前たちが何人でかかろうとまるで相手にならないだろう。」


レ「なあ、弥生。本当にそんな神獣があいつの言う事を聞くと思うか?」


ヤ「うーん、微妙ですね。何か言う事を聞かせる道具でもあるんですかね? 少なくとも魅了のスキルは見当たりませんが。」


イ「何をごちゃごちゃ言っている。いでよ! フェンリル!」


コ「フェ、フェ、フェンリル! あわわ、これは本当にヤバイです! に、逃げるです?」


見た目はまじまるのダンジョンで見たのと同じ、4mくらいの水色の狼だ。弥生がさっそく鑑定をしている。




フェンリル(神獣):HP7000、MP1000、攻撃力400、防御力300、素早さ400、魔力200、スキル:水魔法(8)




コレは逃げるといいつつ、弥生の後ろに隠れただけで転移はしていない。




イ「逃げてもいいのかな? その辺の人間がすべて死ぬぞ?」


ヤ「人間には絶対勝てないのは確かですね。どうしますか?」


レ「本物の神獣か。あのときは俺達も死を覚悟したよな。結局あのときはアヌビスが居たから楽勝だったが。」


イ「ふふふっ、恐怖に怯えるがいい!」


フェ「ガルルルゥ!」




フェンリルは唸り声をあげ、よだれを垂らしている。ダンジョンの時と違い、本物の生物っぽいな。そして、その目はイブリアルを見ている。




イ「ちっ、ちょっと! 私じゃなくて敵はあっちだ!」




イブリアルは噛みつかれてはたまらないと、空中に浮かぶ。見た感じ、完全に支配下に置いているわけでは無さそうだな。フェンリルは仕方なさそうに俺達の方を向いて、2mほどの水球を作り出す。




イ「いけっ、フェンリル! ジャイアントウォーターボールだ!」


ヤ「なんですかそれ。」


イ「うるさい!」




フェンリルは一番弱そうなコレの方を向くが、その前には一応弥生が構えている。そして、水球が放たれて弥生に当たる。弥生に0ダメージ。衝撃で多少吹き飛ばされるかと思ったが、パァン!と弥生は右腕で水球をはじいた。




イ「な、なんだと! フェンリル! 手加減なんか要らないぞ! 早く倒せ!」




フェンリルは別に手加減しているわけではないだろうし、今の弥生は余裕でフェンリルの魔力を上回っている。




フェ「ガオーッ!」




フェンリルは技を変え、水圧カッターの様に極細の水で斬りつけてくる。今度は俺の方が先に当たりそうだ。




レ「よっと。」




俺は濡れるのも嫌だったので、分裂体で軽く盾を作って防ぐ。零に0ダメージ。




イ「お前もか! 一体何者なんだ!」


レ「今更かよ! それに、何者も何も、ただの地球人だぞ。」




日本人で通じるかどうかわからなかったので、とりあえず地球人にしてみた。別にイブリアルが異星人という訳じゃないが、女神候補やらなんやらでは無い事は伝わって欲しい。




イ「嘘をつけ!」




……やはり伝わらなかったようだ。




コ「す、すごいです! 神獣の魔法が全く効いていないです!」




コレも俺達の実力をあなどっていたのか、今更尊敬の目で見てくる。




イ「ふ、ふんっ。少し魔力が高いようだな。だが、フェンリルは物理攻撃力の方が高いのだ!」




よく考えたら、フェンリルの魔力はコレと同じだ。あいつ、フェンリルのステータスもコレのステータスも知らないんじゃないのか? まあ、コレもフェンリルを見た目で強いと判断してるだけっぽいが。




コ「は、早いです!」




フェンリルは一瞬で間合いを詰めると、弥生に右手の爪で攻撃してくる。だが、コレにとっては素早くても、俺達にとってはあくびが出るくらい遅い。弥生はクナイで爪を受け止める。弥生に0ダメージ。




フェ「ガ、ガル?」




弥生はそのままキンッと爪をはじくと、フェンリルの眉間にクナイを投擲して刺した。クリティカル発生、フェンリルに13500ダメージ。フェンリルはレッサーゴブリンと違ってコアになった。俺はそのコアを拾い、すぐに復元した。




フェ「ガルーッ!」


レ「いけ、フェンリル! 噛みつく攻撃だ!」


イ「なっ、動けない!」




弥生はこっそりと変化で糸状にした分裂体でイブリアルを固定していた。それをひっぱってフェンリルの攻撃が届く範囲に引きずり下すと、フェンリルが噛みつく。イブリアルに350ダメージ。イブリアルはコアになった。




レ「……弱い。」


ヤ「ですね。」




ステータスで知っていたとはいえ、あっさりと女神候補を倒すことが出来た。




コ「やりましたね! それにしても、フェンリルを従えるとは本当にすごいです!」


レ「厳密には従えているわけじゃないんだが、まあ、似たようなものか。」


ヤ「これで異変は終わりですかね? 他の場所の様子を見に行きますか?」


レ「そうだな。よし、フェンリルに乗って街を調べよう!」




しかし、フェンリルの足は俺達よりも遅く、さらにフェンリルを見た人が驚いて逃げるので、倒してコアに戻した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る