第142話 地球-6

空間の裂け目はそこかしこで発生しているらしく、車のぶつかる音や叫び声、泣き声などが聞こえてくる。発生範囲は分からないが、少なくとも目に見える範囲だけでもなんとかしたい。




レ「よし、ケルベロスタイプは敵認定されると尚更混乱に拍車がかかるだけだから、ユウの様な人型タイプで行こう。ただ、強さと見た目をどうにかしないとな。」


ヤ「せめてこれが使えればいいのですが……。」




弥生はアイテムボックスから鑑定眼鏡を取り出し、もう一度鑑定してみるが、発動しないようだ。




コ「それは、誰かが作った神具です? 見たところ、神力が切れてるみたいです。」


レ「電池切れかよ!?」




地球だから使えなかったわけではなく、単に充填されていた神力とやらが切れているらしい。




ヤ「それは補充できるんですか?」


コ「貸してみるです。うっ、思ったよりも器の容量がでかいです……が、がんばって注入するです!」




コレが鑑定眼鏡を持ち、何かを注ぎ込むと眼鏡が光りだす。しばらくして、光が収まると同時にコレがガクリと膝をつく。




コ「な、なんとか補充出来ましたです。しばらく休ませてほしいです。」




コレは弥生に眼鏡を渡すとゼハーッゼハッーと息を荒くして横になる。俺達は特段MPが減ったからと言って疲れないが、神力は別なのか? それとも、単にコレが弱いだけか……。




ヤ「あっ、鑑定が使えました! あのゴブリンはレッサーゴブリンと言ってゴブリンの半分くらいのステータスしかないですね。」




レッサーゴブリン(亜人):HP8、MP1、攻撃力5、防御力2、素早さ2、魔力1、スキルなし




レ「……そのステータスってどの程度の強さだっけ?」




最近は数千万とか数億とかのステータスばかりでいまいち強さの感覚を忘れた。




ヤ「比較対象に、その辺の男性を鑑定してみます!」




弥生はまだ異変に気付かず逃げていないその辺にいる外回りの仕事をしているっぽいサラリーマンを鑑定する。




営野行助(人間):HP4、MP10、攻撃力4、防御力3、素早さ6、魔力0、スキルなし、装備:スーツ・防御力0、カバン・防御力0




レ「くっ、地味に最初の俺よりステータスが高いのが羨ましい。」


ヤ「このステータスならゴブリンから逃げるのはそんなに難しくないですし、数人で殴るもしくは何かバットみたいなものでも装備して攻撃すれば倒せそうですね。」


レ「俺が最初にゴブリンと戦った時はもっと苦戦した記憶があるが、レッサーならそんなものか。とりあえず、攻撃力10、防御力5程度あれば十分だな。分裂!」




俺はMPがある限り分裂を使い、とりあえず50体用意した。




レ「これをいろんな容姿に変化させてゴブリンを倒させるぞ!」


ヤ「分かりました! 変化!」




弥生の変化によって普通の人よりも強そうな外見の男女になる。




レ「なんかどっかで見た事あるような顔が多いな……。」


ヤ「分かります? オリンピックに出てるようなアスリートを参考にしたので……。想像で人の顔なんてそうそう作れませんよ!」




ちょっと逆切れぎみに弥生が主張するが、まあ、他人の空似で誤魔化せると思うからいいや。仮に本人にインタビューされたところで違います、で終わるしな。




レ「よし、分裂体達よ、ゴブリンを倒してこい! 間違っても人間を攻撃するなよ!」




一応知識はそれなりに入れたはずだが、分裂体達は無言でバッと散開する。ゴブリンを1発で倒せるという事は、普通に人間も1発で死ぬだろうからな。一番近くにいたレッサーゴブリンが、ボルト風の分裂体の蹴りを食らって消滅する。ちなみに素早さも10あるので常人の2倍近い素早さだ。




ヤ「私も頑張って倒しますね! 投擲武器複製! 投擲武器操作!」




レッサーゴブリンに14632ダメージ×100。見える範囲に居たレッサーゴブリン100体の頭部が弥生のクナイによって消滅する。相変わらず弥生のせん滅力が高い……。レッサーゴブリンに襲われかけていた女性が、急にレッサーゴブリンの頭部が吹き飛んで消滅したので、びっくりして腰を抜かしているぞ。車を乗り捨てて逃げた人も多く、交通機関もマヒしたらしい。交差点には人影が無くなった。そこに今までと違う巨大な空間の裂け目が出来る。そして、そこから大量のレッサーゴブリンが溢れてきた。そのゴブリンたちは攻撃することは無く、綺麗に整列している。




イ「人間の中にもなかなかやるやつが居るものね。」


ボ「くっ、俺の事はいい! 早く逃げろ!」




……そんなセリフ回しをする風に作った覚えはないが、空中に現れた悪魔っぽい少女に頭を掴まれ、ジタバタしているボルト風の分裂体が捕まっていた。




コ「お前はイブリアル!」




神力とやらが多少回復したのか、いつの間にかコレが側にいた。




ヤ「イブリアル……コレよりさらに雑魚ですね。」


イ「何だと貴様! 人間の分際で私を馬鹿にするのか!」




偉そうに出てきた割に雑魚らしい。まあ、見た目はコレに悪魔の角を付けただけだしな。




イブリアル(悪魔):HP300、MP400、攻撃力100、防御力50、素早さ150、魔力100、スキル:透明化、千里眼、蘇生、HP自動回復(小)、MP自動回復(小)、飛行、水魔法(5)、転移魔法、空間魔法(2)




ちなみに、弥生はコレのステータスも鑑定していたようだ。




コレ(女神候補):HP500、MP1000、攻撃力150、防御力100、素早さ300、魔力200、スキル:透明化、千里眼、異世界召喚、蘇生、HP自動回復(小)、MP自動回復(小)、飛行、火魔法(5)、転移魔法、空間魔法(2)、時空魔法




コ「あいつはイブリアルといって、元女神候補の裏切り者なのです! 異世界召喚を覚えることができない万年落ちこぼれなのです!」


イ「言ってはならんことを! ゴブリンども、やってしまえ!」


ボ「ぐああぁぁ!」




見せしめなのか、イブリアルはボルトっぽい分裂体の頭部を握りつぶすと、分裂体はコアになった。そして、それをきっかけにしてレッサーゴブリンたちが襲い掛かってくる。




ヤ「投擲武器操作! 投擲武器複製! 貫通! 衝撃波!」


イ「……は?」




弥生のクナイによる波状攻撃ですべてのレッサーゴブリンが消滅した。

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