第141話 地球-5

ア「そういうことで、あーしは仕事に戻るッス。あっ、何かあった時のために通信機を渡しておくッス。使い方はコレに聞いてくれッス。」

コ「えーっ、あたしが教えるですか?」

ア「やっぱり植林の方がいいッスか?」

コ「ぜひ、あたしにやらせてくださいです!」

ア「どっちにしろあとで植林は確定なんスけどね。」

コ「そんなぁ……。」


がっくりと肩を落とすコレを尻目に、アルスリアは転移していった。


コ「仕方ないです。使い方はですね……。」


俺達はコレから通信機の使い方を学び、一回コレにかけて使えることを確認すると弥生のアイテムボックスに入れておくことにした。


レ「サンキュー、コレ。」

コ「……それじゃ、あたしは植林しにいくです……。」


コレはそう言うと、トボトボと歩いてアパートを出て行く。スキルについては使用許可を貰っておいたので、俺達に関してはこれで問題になることは無いだろう。まあ、あまり目立つような使い方はしないで欲しいッスって言われたからほどほどにしておくか。


レ「さて、結構時間がたってしまったが昼食にするか。」

ヤ「そうですね。なんだかんだあってお昼がまだでしたね……お腹がすきました。」

レ「今からまた出かけても、時間がかかるだろうし……カップ麺でも食うか。」

ヤ「それがいいです! 中毒性のあるカップ麺ですね!」

レ「言い方……。まあ、無性に食いたくなることがあるのは認めるが。」


俺はヤカンにお湯を入れ、沸かす。インスタント麺系は結構備蓄してあるからいつでも食える。そうだ、これを機に弥生のアイテムボックスにも地球の食料を入れておくか……まあ、ケルベロちゃんに言えば何でも取り寄せてくれるからあんまり意味はないかもしれないが。

お湯が沸いたのでカップにお湯を注ぎ、3分待つ。その間見ていたニュースで昨日の強盗の事件がでていたが、俺と弥生は名前すら出ることは無かった。いや、出ても困るんだけどな。俺は会社に行ってることになってるし。そういう意味では、あまり出歩くのもだめかもしれないが、何かあったらアルスリアに頼んで証拠を隠滅してもらおう。などと考えているうちに3分経った。


レ・ヤ「いただきます!」


うん、やっぱり久々のカップ麺はうまいな。弥生も夢中で食べているようだし、俺もさっさと食べ終えてしまおう。


レ「ごちそうさま。」

ヤ「ごちそうさまでした! 宇宙から帰ってきた宇宙飛行士もこんな感じなんですかね?」

レ「俺達の方が宇宙より遠いところに行ってたけどな。むしろ、次元すら違うっていうな。」


そう思うと、やっぱり地球はいいなって思う。ただ、気を抜きすぎるとステータスを抑え忘れそうで怖いが。今の俺達にとっては車なんかよりよっぽど歩く方が早い。だが、それを人並みにするには……意思の力だけでいいんだけどな。もっとアリを潰さないようにつまむような感覚とかを……と思っていたんだが、日常生活の力加減は体が覚えていた。


ヤ「カップを片付けて、お茶を入れてきますね。」

レ「おう、サンキュー。お茶葉とポットはキッチンの上に置いてあるから。」

ヤ「分かりました。」


弥生って案外女子力高いな。部屋に2人きりとか、一昔前の俺じゃ考えられない事だな。弥生は湯飲みを2つテーブルに置くと、急須でお茶を入れてくれる。俺はティーパックより急須派なんでな。


レ「ずずっ、うん、うまいな。お湯の温度も丁度いい感じだ。」

ヤ「これでも接客もしていたんですからね。職場じゃ職員分のお茶くみもさせられてましたし。」

レ「ああ、これならどこへ出しても恥ずかしくないな!」

ヤ「どこへ出すつもりですか!」


弥生とそう笑っていた瞬間、世界がずれた気がした。エレベーターが上がる瞬間のあの感じだ。


ヤ「? 何か変な感じがしませんでしたか?」

レ「弥生もそう感じたか?」


俺達は何があったのか確認するために外へ出た。すると、玄関前に空間の裂け目が出来ていた。


レ「何だこれ?」

ヤ「あっ、何か出てきます!」

レ「……これは、ゴブリンか?」


まるで裂け目が生み出したかのようにドサリと緑の物体が落ちてくる。それはすぐに立ち上がると、俺達に攻撃してきた。


ヤ「やっぱりゴブリンですね。」


弥生は一瞬のうちに手刀でゴブリンの首を刎ねる。血は出ず、ドラゴンの星の時のように粒子となって消えた。それにしても、弥生の判断が早すぎて怖い。それに素手で斬首とか修羅の国かよ……。


ヤ「見て下さい! さっきの空間の裂け目がいろんなところにあります!」


弥生の言う通り、街中に裂け目が現れ、そこからモンスターが生み出されているようだ。俺はすぐにアルスリアに連絡を取る事にした。さっき貰った通信機を弥生から受け取り、かける。


レ「アルスリアか? 街中にモンスターが現れた!」

ア「こっちでも確認してるッス。あーしはちょっと悪魔と戦闘中ッスからあんまり余裕がないのでコレを行かせるッス。コレ、聞いた通りッスから転移して……何とか頑張れっす。」

コ「指示が雑すぎです!? アルスリア様は大丈夫なんです?」

ア「正直、コレが居ても足手まといッスからさっさと行って欲しいッス。」

コ「正直すぎる!? 嘘がつけないからって言葉をオブラートに包むくらいはできるです!」

ア「さっさと行けッス!」


アルスリアの声を最後に通信が切れ、こちらに転移陣が現れる。


コ「ふぎゃっ! せめて丁寧に送って欲しかったです!」

レ「……これ、俺達にお守を任せたんじゃないのか?」

ヤ「そうですね、確実に足手まといですし。」

コ「あなた達もひどいです!? 女神候補と言っても地球上では一番強いですよ?!」


俺と弥生は肩をすくめると、どうすればいいのか調べることにした。

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