第109話 クリア対象モンスター?
山を進むとそれ以降ドラゴンに会う事は無かった。山の頂上から付近を見渡すと、地平線がある。本当に別の星のようだ。
レ「そういえば、ここをクリアしても10階にはつかないって言っていたけど、エレベーターが無いならどうしたら9階がクリアになるんだ?」
ケ「おお、いいところに気が付いたな。この試験は実際に女神になったときと同様に、問題を解決するとクリアだ。ちなみに、この星のクリア難度はSクラスだけどな。見習いが受ける試験じゃねぇよな、ホント。」
ケルベロちゃんは「あたちが見習いだった時でもクリアは無理だな。」と笑っている。俺達にとっては笑い事じゃないがな。考えてみると、さっきのドラゴンを見習いだとすると、10倍した数値が女神のステータスだ。うん、普通に装備なしのワルキューレより強いわ。そこで、ワルキューレの武器を思い出す。あれ、何気に超高性能だよな?
レ「ワルキューレやアヌビスが神装備持ってるけど、あれがあれば余裕じゃないか? どうやったら手に入るんだ? 最初にイルナが持っていた死者の杖とか死者の衣もそうか?」
ケ「あー、あれらは色んな理由で作られるが、基本的には見つけたり、作られたら神様に献上されるな。そして、神様から働きに応じて授けられる。自分で作ったりもするが、ワルキューレのは上位の神様が作られた物で、本人のランクによって能力が上がる優れモノだな。ワルキューレが女神になった時に授けられたものだが、まぁ、今のワルキューレじゃ性能の1万分の1ほどしか引き出せてないな。ああ、ちなみにあたち達の本体が着ているスーツも実は神装備なんだぜ。」
どうりでただのスーツにあんな性能があるわけだ。神装備が本人の強さに比例する物なら俺達がもらっても大した性能にはならない。昔、ワルキューレの槍を借りた時も確か攻撃力100にしかならなかったしな。
ケ「そうだ! 神装備で思い出したけど、面白いものを作っていたんだった。ほら、イルナ、プレゼントだ。」
ケルベロちゃんはアイテムボックスから明らかに禍々しい鎌を取り出す。
イ「・・・ありがとう。でも、これは何?」
イルナは受け取った鎌をブンブン振っている。
ケ「前に見た神殺しの鎌をマネて作ってみた冥府の鎌だ。神装備じゃないから攻撃力は1000で固定だが、ある程度大きさを変えられるし、霊体にもダメージを与えられるんだぜ。普段持ち歩くときは手首に付けときな。」
それを聞いたイルナは鎌を小さくすると、鎌の柄の部分についている輪っかを手首に通す。すると、輪っかはイルナの手首の大きさに自動的に調整されて落ちなくなった。
レ「ちなみに、俺達へは?」
俺はダメ元で聞いてみる。弥生も期待に満ちた目をケルベロちゃんに向けている。
ケ「あ? あるわけ無いだろ、これを作るだけでもあたちがどれだけ頑張ったか。作るとしてもイルナのメイド服ぐらいだな。」
実はケルベロちゃんってイルナの事大好きなのか? それとも、メイド服仲間だからか? そういえば、もともとイルナのメイド服ってケルベロちゃんが持っていたやつだよな・・・。俺のスーツと一緒で防御力0だけど。
ア「ちなみに、我の神装備はお下がりなので我が作ったわけではないぞ。」
アヌビスは聞かれなかったからか、自分から言い訳をしている。まあ、現状で結構な攻撃力と防御力なので、それなりにいい装備だろう。神装備の話はそれぐらいにして、クリアの話に戻す。
レ「それで、クリア難度の事は分かったから、クリア条件は何だ?」
ケ「問題となっているモンスターを倒すことだな。問題を解決するのも試験に含まれるから、あたちからはアドバイスはしない。」
そもそも問題が何か分からないが、それすら自力で見つけろって事か? このままでは本当に目につくもの全て倒して行くしか無くなるのだが・・・。とりあえず、あそこに見えるでかい木を目指すか。
レ「まあ、エレベーターの到着先がここなんだから、まさか星の反対側って事は無いだろう。一番目立つあの木を目指すって事でいいか?」
ヤ「もう付近にはモンスターも居なさそうですし、いいんじゃないですか?」
ア「我もどこでもいいのじゃ。」
イ「・・・特に反対はしない。」
イルナの言い方がちょっと気になるが、巨大な気へ向かう事にした。
どこからでも見えるくらい巨大な木だな。木の周りは土と岩ばかりの平地で、存在感が半端ないな。
ついでに木陰で休もうと、木に近づくが、途中でケルベロちゃんがピタリと止まる。
レ「ケルベロちゃん、どうしたんだ?」
それには返事をせずにニコリとほほ笑む。俺は変だと思いながらも木へ近づく。下から見上げると、ビルの様に巨大だ。これだけの大きさになるには何年くらいかかるんだろうな? 1万年とかか? この木に登って見渡せば、問題が何か分かるかもしれない。そう思って後ろを振り向いたとき、空中に浮くアヌビスに大木が降ってきた。
レ「アヌビス、あぶない!」
ズシンとアヌビスは大木に潰される。アヌビスに0ダメージ。
ヤ「アヌビスちゃんも運が悪いですね。たまたま折れた枝に潰されるなんて。それにしても、これだけ木がでかいと、枝も大木の様ですね。」
イ「・・・違う、上。」
レ「上?」
俺は上を見ると、その枝はまだ木に繋がっていた。まさか・・・。
レ「弥生、木を鑑定してくれ!」
ヤ「木を鑑定ですか? 鑑定!」
ジャイアントトレント(植物):HP???、MP???、攻撃力???、防御力???、素早さ???、魔力???、スキル???
ジャイアントトレントに鑑定を阻害されました。
ヤ「鑑定できないです!? でも、名前はジャイアントトレントみたいです!」
この大きさでモンスターだと!! 俺はかつてない強敵の予感がした。問題ってもしかしてこれか?
アヌビスを潰していた枝が俺を薙ぎ払う様に攻撃してきた。素早さに関係なく、この大きさじゃ避けれない。零に250ダメージ。ダメージは思ったほどではなかったが、思い切り吹き飛ばされる。代わりに、枝が無くなってアヌビスが埋もれた地面から浮き上がってくる。
ア「ダメージは無いが、土だらけになったのじゃ! くらえ、闇の球!」
闇の球が幹に当たるが、見た目的にはしょぼいな。ジャイアントトレントに7000ダメージ。ダメージを受けたことを木が理解しているのか、複数の枝が俺達を襲う。零に250ダメージ。アヌビスに0ダメージ。イルナに1890ダメージ。弥生に1145ダメージ。ケルベロちゃんは丁度範囲外に居るため当たらない。ちくしょう、これが分かってて止まったんだな!
イ「・・・憑依。ヒノトリ。」
イルナはヒノトリを憑依させて木の幹に冥府の鎌を当てる。ジャイアントトレントに1500ダメージ。
イ「・・・思ったより硬い。」
イルナは物理攻撃では分が悪いと思ったのか、憑依を解く。
ヤ「私に任せてください! 投擲武器操作!」
弥生の手裏剣が幹に刺さる。ジャイアントトレントに10840。刺さった場所が消滅するが、巨大すぎて砂粒1つ分くらいしか消滅していないように見える。そう思っていたら、木が急にしおれ始め、一つの実をつける。まるで高速再生の様にあっという間に人間一人分くらいの実になると、ドスンと地面に落ちてきた。そして、中から全身が茶色で上半身は裸っぽい美女、下半身が根っこの様なモンスターが出てきた。ほぼマネキンの様で人形にしか見えないからエロくはない。弥生は一応鑑定をしてみる。
ヤ「今度は鑑定できました! でも、私は戦えませんね・・・。」
シンジュ(植物):HP80000、MP8000、攻撃力4000、防御力2000、素早さ2000、魔力0、スキル:物理無効、HP自動回復(大)
シ「下等な生物ごときが、私に攻撃をするとは。死ね!」
言葉は通じるが、話は通じなさそうだな。ここは普通に戦う事にしよう。俺以外が。
シンジュの根っこの様な足が伸びてアヌビスを拘束する。アヌビスに0ダメージ。同じように弥生にも根っこは行くが、弥生は回避したようだ。イルナはそれを見て俺の方を向く。
イ「・・・私にサラマンダーを融合させて?」
レ「そうか! わかったぞ。融合!」
イルナにサラマンダーを融合させると、イルナはリッチ化した。
イルナ(リッチ):HP24910/26800、MP5000、攻撃力10、防御力10、素早さ900、魔力13000、スキル:火魔法(8)、MP自動回復(中)
今まで魔法が無かったために魔力10倍のリッチ化は無意味だったが、融合によって魔法を使えるようになった。ヒノトリでも魔法は使えるが、憑依中はリッチ化する事ができない。
イ「・・・青炎」
イルナの手から青い炎の玉が発生し、シンジュに当たる。シンジュに13000ダメージ。木の本能からか、ダメージ以上に火を警戒するようにシンジュは離れた。そして、その隙にアヌビスも根っこから抜け出したようだ。さらに、距離を取れないようにイルナは追加で魔法を唱える。
イ「火の壁!」
周りを囲むように火の壁が生まれる。シンジュは逃げ道がないかどうかキョロキョロと見渡している。
シ「おのれ! 私に無礼を働くとは! 神罰を食らえ!」
シンジュは逃げ道が無いと悟ると、スキルに無いくせに腕を枝の様に伸ばしてきた。元々持っている能力の様だ。イルナに3890ダメージ。
ア「隙ありなのじゃ! 闇の球!」
アヌビスはシンジュの上から闇の球を落とす。シンジュに7000ダメージ。
ヤ「あぁっ、シンジュのHPが全部回復しました!」
時間をかけすぎたせいか、HP自動回復(大)の効果で全ダメージが回復したようだ。でも、1分以内に4万ダメージとか弥生じゃないと無理だろ。その弥生も物理無効で手も足も出ないのに。
イ「・・・何かないの?」
イルナは俺に問いかける。何かと言われても、何か・・・そうだ、重ねて融合させたらどうだろうか。
レ「ヒノトリ、イルナと融合してもいいか?」
ヒノトリはコアではないため、融合するには本人の意思が必要となる。ヒノトリはしゃべれないが、コクリと頷いたので、了承と取る。
レ「ヒノトリ、融合!」
俺はヒノトリの背中に手を乗せると、イルナに融合させた。
イルナ(リッチ):HP71020/76800、MP10000、攻撃力1500、防御力1500、素早さ1900、魔力23000、スキル:火魔法(10)、MP自動回復(特大)、飛行、自動蘇生
イ「くぅ、反発が・・。」
憑依できないリッチ化に無理やり融合させたためか、イルナの負担が大きいようだ。
イ「神には神を・・火の神、アグニ!」
融合によって火魔法が10になったイルナは、神の炎を唱える。ヒノトリの様な炎がシンジュに当たる。シンジュに23000ダメージ。それと同時にイルナのリッチ化と融合が解けた。
シ「私の体が! 火が!」
シンジュは火から逃れようと暴れるが、火は消える様子は無い。継続ダメージ23000。
シ「再生しない! なぜだ!」
継続ダメージ23000。シンジュはさらに暴れる。
イ「・・・その火は、敵を滅ぼすまで消えない炎。」
継続ダメージ23000。シンジュは消滅した。シンジュそのものはモンスターではなかったようで、コアは残らなかった。残念だ。シンジュがの消滅を見届けると、イルナは気絶した。俺はイルナを連れて退避する。
ヤ「ここからは、私の番ですね!」
こちらが片付いたので、弥生はジャイアントトレントに向く。ジャイアントトレントは動けないので、逃げようが無いが、気持ち的には逃げていると思う。
ヤ「投擲武器操作! 投擲武器複製!」
ジャイアントトレントに10840ダメージ×5。数十本あるうちの5本が当たった段階でジャイアントトレントはコアになった。
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