第108話 ホワイトドラゴン

ドラゴニュートは数が多いだけあって結構ステータスが上がった。洞窟からはもうドラゴニュートは出てこないが、中にまだ居るかもしれないので無視して先に進む。


ドラゴニュートが守っていただけあって他にはモンスターが居ないようだ。普通の登山みたいに登っていくと、盆地になっているところに白いドラゴンが鎮座しているのが見えた。


ドラゴンの方もこちらの方に気が付いているのか、すでに警戒しているようだ。目は青色では無いな。白い全身に黒い目が目立つ。翼が無いからドラゴンというよりも首長竜に見える。弥生がステータスを鑑定する。





白竜(ドラゴン):HP30000、MP6800、攻撃力1000、防御力700、素早さ700、魔力1200、スキル:竜の力 





白「お前たちが何者かは知らぬが、ドラゴニュート達はどうした?」


レ「山の入口に居たやつらなら、倒してきた。」


白「そうか、ならばお前たちがワシに倒される事にも文句はあるまい。」





白竜は恐らくスキルを使ったのだろう。全身からオーラの様なものが立ち上る。弥生は再びステータスを確認した。





ヤ「大変です! 白竜のステータスがすべて1.5倍になっています!」





竜の力は初めて見るスキルだったが、ステータスが全部1.5倍になる効果があったらしい。白竜のステータスを聞いた時には、装備有のドラゴニュートより弱いんじゃね? って思ったが、スキルがあるだけでここまで変わるのか。ぜひ、白竜のコアが欲しい。


白竜は立ち上がると、息を吸い込む。そして、長い首を振りかぶった。





レ「なんかヤバそうだ、避けろ!」





白竜はブレスで広範囲を攻撃する。全員が回避行動をとったが、白竜より素早さの低かったイルナが逃げ遅れる。イルナに1390ダメージ。今のイルナにとっては大したダメージではない。白竜も思ったよりダメージが無かった事、俺達が回避したことに表情を変えた。





白「お前たち、何者だ? この星の者では無いな?」





俺はその言葉に違和感を覚えてケルベロちゃんを見る。





ケ「言い忘れていたが、9階はドラゴンの星だ。だから、ここの階をクリアしても10階にはつかねーな。」


レ「そういう大事な事を今言うか!? じゃあ、ドラゴニュートもモンスターじゃなかったのか?」


ケ「その辺はダンジョンと変わらないように配慮してあるから、安心して戦いな。」


レ「本当だろうな? ドラゴンの星で大量虐殺とかシャレにもならんぞ。」


白「答える気は無いか。ならば、死ね!」





白竜は自分の問いに答えない俺達に苛立ったのか、体からオーラが増える。





ヤ「源さん、ドラゴンのステータスが2倍・・・2.5倍・・・いえ、3倍になりました!」





えっ! この星の生物って戦闘力があがるの?! 単に竜の力の効果か?


白竜は尻尾を振り回して攻撃してきた。白竜のステータスが3倍になっているため、俺の素早さすら上回っている。これには俺も反応できなくなっている。零に1250ダメージ。イルナに2890ダメージ。





ヤ「大丈夫ですか?」





弾き飛ばされた俺とイルナに弥生が近づいてきた。俺は「大丈夫。」と答えると、対策を考える。アヌビスに任せれば簡単なんだが、やられっぱなしもしゃくだ。





レ「融合、スぺクター。」





俺はスペクターのコアを取り出すと融合した。見た目は変わらないが物理無効と闇魔法(4)を使えるようになった。高速で近づいてきた白竜は俺を踏み潰す。物理無効、零に0ダメージ。





白「なんだと! ワシの攻撃が効かぬ!?」


レ「闇夜!」





白竜相手に闇の球を当てても俺の魔力じゃ0ダメージだろう。なので、俺は辺りを暗くする闇魔法を唱える。アヌビスの真闇ほどではないが、深夜くらいには暗くなった。急に暗くなったため、白竜は俺を見失ったようだ。俺は白竜の心臓のあたりに刀を刺す。クリティカル発生、白竜に1000ダメージ。ダメージは微々たるものだが、一矢報いたのでよしとしよう。





ヤ「私も戦います! 投擲武器操作! 投擲武器複製!」





弥生の5本に増えた手裏剣は白竜の大きな体に当たる。クリティカル発生、白竜に6660ダメージ×5。白竜はコアになった。





レ「ちょっ、弥生さん、強すぎないっすか?」


ヤ「投擲術が10になったからですかね? どこに当ててもクリティカルは強いです!」





弥生がとうとうチートキャラになってしまった。俺なんてクリティカルあてても1000ダメージよ? 方やドラゴンを1回の攻撃で屠ほふるんよ? 俺の出番が無いな。





イ「・・・私も戦いたかった。」





最初に攻撃を受けただけのイルナも不満の様だ。





ア「我なんて何もしていないのじゃ!」





アヌビスが参加するとヌルゲーみたいになるから、基本的に命令しない限り攻撃させていないからな。実際、ステータスが3倍になった白竜が何をしてもアヌビスにダメージを与えられないだろうし。





レ「なあ、弥生、白竜のコアもらってもいいか?」





俺は一応倒した弥生に聞いてみる。いつもは俺が回収役だから特に聞くことは無いが、今回のコアは是非とも欲しいからな。





ヤ「源さんの為になるならいいですよ。」


レ「サンキュー、融合、白竜。」





俺はスペクターの融合を解除して白竜のコアと融合する。うおぉ、ステータスがマジで3倍になる! こりゃヤベェ! すげぇ!





ケ「そろそろ落ち着いたらどうだ?」





皆は、俺がいきなりダッシュしたりジャンプしたりしているのを見て呆れていたようだ。一番短気なケルベロちゃんが注意した感じか。





レ「あっ、悪い。ちょっと楽しくてな。」





感覚的に、竜の力は1~3倍の間でステータスを増やせるようだが、倍率を増やせば増やすほどMPを消費するみたいだ。





レ「ところで、ケルベロちゃんに聞きたいんだが。ドラゴニュートの時も思ったんだ、なんかモンスターらしくないなって。それで、別の星ってどういう事だ?」


ケ「あ? どういう事も何もそう言う事だ。8階まではチュートリアルで、ここからが本番って事だぜ。」


レ「どういう事だよ!?」


ケ「ちっ、説明するのもめんどくせーが、良く聞け、以前はそもそも8階までしか無かった。8階をクリアした者にはそのまま神界へ行って最終試験だったんだが、それじゃあダメだといつの時代にか知らないが横やりが入ったらしくてな? 9階を挟むことになったんだ。元々9階の構想はあったらしいから、連れて行くかどうかはその時次第にするつもりだったんじゃないか? 詳しくはあたちも知らないが。」





ケルベロちゃんもラヴィ様に比べれば全然新しい神に入るらしく、ケルベロちゃんが女神になった時にはすでに9階が運用されていたそうだ。時代と共に知的生命体が増え、女神の増員や評価の与えられやすさから、女神になれるようになるまでの期間が短くなってきたようだ。じゃあ、ワルキューレのステータスがラヴィ様に比べて低いのも時代の流れか・・・。





ケ「それより、時間が無いからさっさと進むぞ。」





ケルベロちゃんはそう言って俺達をせかした。

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