第107話 ドラゴニュート

9階に着いた。ここで色々あったが、本当にダンジョン攻略を再開してもいいのだろうか?





レ「本当に大丈夫なんだろうな?」


ケ「ああ、心配するな。ここに用があるやつはもう居ないはずだからな。」





ケルベロちゃんの言い方に引っかかるものはあるが、大丈夫なら俺達は俺達のやるべきことをするだけだ。


9階は8階同様に広大なマップのようだ。8階が平原や森だったのに対して、9階は山がメインの様だ。やはり、ドラゴンと言えば山か。あぁ、やはり期待が膨らむな、どんなドラゴンに会えるんだろうか。


山道は3つに分かれていた。左、真ん中、右だ。見た感じ、左は普通の山道、真ん中は上り坂、右は下り坂になっている。これはどうみても真ん中が次の階に繋がる気がするのだが。





レ「あからさまなルート配置になっているが、どうする?」


ヤ「時間も無いらしいですし、真ん中でいいんじゃないですか?」


ア「それでは詰まらないのじゃ。8階同様に全部回るか、分かれてはどうじゃ?」


レ「分かれるのは反対だな。どう考えてもアヌビスの居ないチームが全滅する気がする。」





実際、アラクネレベルが居たら誰も対処できないだろう。まあ、弥生は素早さがある上に透明化もあるから逃げられるし、イルナは短時間ならヨルムンガンドや死なないヒノトリがあるから逃げられるだろうけど・・あれ、逃げられないのは俺だけか?





レ「やはり、一緒に真ん中のルートだな!」


ヤ「それが一番無難ですかね? とりあえず、敵を見てから決めましょうか。」





よく考えたら、強さを調べれるのは弥生だけじゃなか。ステータスを上げた後にアヌビスを復元させれば、もしかしたら鑑定を取り戻すことができるかもしれないが。攻略の過程に文句を言っていたメィルもいないし。





レ「あれ? そう言えばメィルは?」





過去に飛んでいたせいか、ずいぶん長い事見ていない気がするな。逆に、大人なメィルは見ているが、同一人物かどうかは現時点では不明だ。





ケ「・・・早く進んだらどうだ?」





ケルベロちゃんが長々とルートを決める俺達に待ちくたびれたのか、さっさと進めと提案してくる。まあ、メィルが居なくても問題は無いからさっさと進むか。





アヌビスを先頭に、俺、イルナ、弥生の順で狭い山道を登る。先頭がアヌビスなのは、単純に飛行しているので進むのが早いからだ。ちなみに、過去に行ったときに作った盾を弥生に鑑定してもらうと、何故か防御力が0だったので部屋に置いてきた。防御力が無いなら単なる重りになるだけだからな。それに、ここは盾で防いでも体に当たってもダメージは一緒なので、わざわざ攻撃を食らうような面積を増やす必要はない。急所を防ぐにはいいのだろうが、服の上からでも急所に当たるからあまり意味は無いだろうな。実際の回避率を上げた方がよっぽどいいだろう。





しばらく歩いていると、洞窟の様なものがあり、丁度そこからリザードマンっぽい敵が出てきた。素早く弥生が鑑定する。





ドラゴニュート(ドラゴン):HP25000、MP5600、攻撃力1000、防御力500、素早さ600、魔力1000、装備:ドラゴンスピア・攻撃力500、ドラゴンアーマー・防御力500、スキル:なし





リザードマンじゃなくて竜人だったのか。何が違うんだろうな? ああ、トカゲとドラゴンの違いか。





ド「ほぅ、ここに到達する者が居るとはな。私はこの山を守るドラゴニュートの騎士である。」





ドラゴニュートはそう言うと、おそらくドラゴンの牙を使った槍を構える。全身を覆う鎧は、恐らくドラゴンの鱗だろうか。ゲームだと後半に出てきそうないい装備だよな。戦う前に、ちょっと話をしてみるか。





レ「この山を守るってことは、ここが正解のルートってことか?」


ド「我々ドラゴニュートは、ドラゴン様を守るためにここに居るだけだ。去るのならば見逃そう。」





俺達は一旦ドラゴニュートから離れて小声で相談する。





レ「ルートは正解っぽいがこのまま進めばドラゴンとの戦闘も避けられなさそうだぞ。」


ヤ「正直、あのくらいの敵なら大して強くありませんよね? HPが多いだけでスキルもありませんし。」


ア「だが、我々と言っておったのじゃ。あやつを倒すとワラワラと洞窟から出てきそうなのが嫌じゃ。」


イ「・・・ダメージリンクで倒す?」





イルナの提案を実行した時の事を考えてみる。・・・ちょっと面白そうだ。俺はドラゴニュートに向かって歩いて行く。





レ「俺達は別ルートに向かう事にする。じゃあな。」


ド「そうか。私はずっとここに居るから、帰ったふりをしても無駄だぞ?」


レ「そんなことはしないって。なあ、イルナ?」


イ「・・・ダメージリンク。するだけ。」


ド「ダメ・・? なんだ?」


レ「なんでもない、じゃあな。」





俺はドラゴニュートとイルナが赤い光で繋がるのを確認すると立ち去る。ドラゴニュートから見えない位置に移動すると、イルナはヒノトリを憑依させ、弥生がイルナを攻撃する。クリティカル発生、イルナに4252ダメージ。ドラゴニュートに4252ダメージ。





ド「なんだ! どこからの攻撃だ!?」





ドラゴニュートはダメージだけ受けている状況に困惑している。HP回復を持っていない敵にはよく効くな。弥生はもう一度イルナに攻撃する。クリティカル発生、イルナに4252ダメージ。ドラゴニュートに4252ダメージ。





ド「皆の者、敵襲だ! 敵は透明化を使っているやもしれぬ!」





ああ、透明化を使って攻撃するのもよかったかもしれないな。ぞろぞろとドラゴニュートが洞窟から出てきそうなので、そのまま何回か弥生に攻撃してもらって止めを刺してもらう。ドラゴニュートは装備ごと消滅し、コアになった。次々に現れるドラゴニュートに見つからないように、弥生が透明化を使ってコアを回収してきた。





レ「やってはみたけど、地味すぎるな。」


ヤ「そうですね。少なくとも効率的ではないです。それに、憑依するならアヌビスちゃんを憑依させた方が早くないですか?」


ア「それもそうじゃの。じゃあ、やってみるのじゃ。イルナ、行くぞ!」


イ「・・・分かった。アヌビス様、行きます。憑依。」





イルナがアヌビスを憑依させると、アヌビス本来の神の姿に戻る。





イ「じゃあ、行ってくるのじゃ。」





イルナはアヌビスの神装をまとって飛行すると、ドラゴニュートの軍勢に突っ込む。





ド「なんだあれは、あれが襲撃者か?」


ド「分からんが、敵襲だ! 構えろ!」





ドラゴニュート達は知能がある分だけ、現状を把握しようとして逆に混乱している。本能のまま戦うモンスターの方がまだ対処が早いだろう。





イ「ほれ、影牢かげろう。」





イルナは影を操って牢屋を作ると、ドラゴニュートを閉じ込めていく。ドラゴニュートはその牢屋を攻撃するが、魔力で作られた物なのでドラゴニュートの魔力ではダメージを与えられないようだ。





イ「闇の玉! 闇の玉、闇の玉~!」





ドラゴニュートに51000ダメージ。ドラゴニュートに51000ダメージ。ドラゴニュートに51000ダメージ。あっという間に3体のドラゴニュートがコアになった。イルナは調子に乗ってどんどんとドラゴニュートを倒して行く。ドラゴニュートの方も、影に捕らわれていない者がイルナに攻撃するが、ダメージは0だ。その攻撃すら、イルナはわざと当たっているのだろう。わざわざ槍を掌で受けたり、頬をかすらせたり、白刃取りしたりしてドラゴニュートを煽っている。





ヤ「私もやりたくなってきました! いいですか?」





弥生も参加したくてウズウズしているようだ。本当に、いつの間に戦闘狂になったんだろうな?





レ「ああ、行ってくるといいよ。気を付けてな。」


ヤ「分かりました! 投擲武器操作! 投擲武器複製!」


イ「弥生も参加するならサポートするのじゃ。真闇!」





イルナの真闇に包まれたドラゴニュートは弥生のクナイがすべてクリティカルで当たる。クリティカル発生、ドラゴニュートに6304ダメージ×4。ドラゴニュートはコアになった。弥生はいつの間に腕を上げたのか、イルナ並みの速度でドラゴニュートを殲滅していく。そして、俺は隙を見てケルベロスでコアを回収していた。復元と違って融合なら俺も多少は戦えるが、本当に多少だと思うので今回は手を出さない事にする。


そして、イルナの憑依が解ける前にドラゴニュートの軍勢は全滅していた。うわー、コアが100個くらいあるんじゃないか? ドラゴニュートが全滅していたりしてな。





ヤ「源さん、聞いてください! とうとう投擲術のレベルが10になったみたいです!」


レ「じゃあ、ついでにドラゴニュート達のコアでステータスを上げるか。」


イ「・・・賛成、強くなる。」





源零:HP6113、MP5010、攻撃力700、防御力1500、素早さ1200、魔力1000、スキル:分裂、MP自動回復(小)、融合、装備:スラタン(刀)・攻撃力300、スラコート・防御力250





形無弥生:HP4092、MP6530、攻撃力2800、防御力600、素早さ1800+1620、魔力900、スキル:変化、投擲術(10)、空間魔法(7)、透明化、装備:スラクナイ・攻撃力250、スラ手裏剣・攻撃力250、スラマフラー・防御力250、忍者服・防御力5


投擲術が1上がり、当たった部分が消滅するようになり、常にクリティカルヒットするようになったようだ。空間魔法も1上がったようで、空間断裂を覚えたらしい。試しにその辺の岩に使ってもらったら、まるで紙を切るように真っ二つになったのにはびびった。ついでに、俺と弥生の装備も作り直す。





イルナ:HP26800、MP5000、攻撃力10、防御力10、素早さ900、魔力1300、スキル:ネクロマンシー、呪術、装備:腕輪・防御力50、指輪・防御力50





増えたMPでアヌビスも復元し直す。





アヌビス(分裂体):HP12500、MP11375、攻撃力375、防御力1250、素早さ1950、魔力3000、スキル:闇魔法(7)、MP自動回復(小)、魔法耐性(中)、鑑定、飛行、千里眼、転移魔法、蘇生、装備:神杖・魔力4000、聖なる衣・防御力4000


アヌビスの見た目はほとんど変わらないが、今までの傾向から恐らく18歳くらいなのだろう。弥生が計ると、身長160cm、Eカップとまた少し成長していた。装備も結構強くなっている。また、新たに蘇生が増えたので、これで死んでも大丈夫だな! いや、死にたくはないけど。

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