第106話 ダンジョン攻略17日目

俺は目が覚めると、のびをする。まだ闇の壁が張ってあるところをみると、アヌビスは起きていないようだ。時計を確認すると、丁度6時30分だった。俺は歯磨きをしに洗面所に行くと、丁度パジャマ姿のイルナがトイレから出てきた。





レ「おはよう、イルナ。」


イ「・・・おはようございます。」





イルナはぼーっとした顔でそれだけ言うと、さっさと部屋に戻っていった。俺が蛇口をひねるのと、風呂場から弥生が出てくるのが同時だった。弥生は頭からタオルをかぶって頭を拭いている。





ヤ「イルナちゃんもシャワーを浴びますか? きもちいいです・・・・よ?」





そこで俺と目が合った。





ヤ「きゃあぁぁ! なんで源さんがここにいるんですか!? 覗きですか?! エッチ!」





弥生は透明化を使ったようで見えなくなった。攻撃されないだけマシだが、俺は蛇口を閉めるのも忘れて固まっていると、アヌビスが入ってきた。





ア「なんじゃ? 朝からさわがしいのじゃ。おっ、零おはようなのじゃ。」





そこで再起動された俺も返事を返す。





レ「アヌビス、おはよう。今、目の前に裸の弥生が居た気がしたんだが、目の錯覚だったようだ。」


ヤ「目の錯覚じゃありません! さっさと出て行ってください!」





弥生は透明なままバンッと風呂のドアを閉めた。俺は歯磨きを諦めて蛇口を閉めるとアヌビスと共に部屋に戻った。





レ「闇の壁が張ってあったけど皆起きていたんだな?」


ア「我は力が戻ってきたからか、睡眠時間が以前より短くなったのじゃ。闇の壁は今解くのじゃ。」





アヌビスは体の大きさに合わせた様に、子供の様な大きさの時と高校生くらいの大きさの時で睡眠時間が変わったらしい。以前は9時間寝ていた物が、いまは7時間もあれば十分らしい。そもそも、神だったころは寝る必要も無かった様だが。そして、闇の壁が解かれると、今度は丁度イルナがメイド服に着替えている途中だった。





イ「・・・エッチ。」


レ「ご、ごめん・・ってそのまま着替えるのかよ!?」





イルナは相変わらず眠そうな顔で、まったく恥ずかしそうにしていない。口ではエッチと言っているが、行動は変わらずここで着替えている。保護者が居ないとここまでカオスになるのか・・。アヌビスもこういうことには無頓着だから、弥生が止めないと誰も止める人が居ない。俺は自分の意思で小部屋に退散する。





レ「次行ったときはアヌビスが着替えているとか無いよな?」





俺は浴衣からスーツに着替えると、大部屋の様子を見る。服に着替えた弥生と、イルナが居るが、アヌビスは部屋に着替えに行ったようだ。俺はホッとした。歯磨きに向かうとするか。





レ「弥生、さっきは済まなかったな。」


ヤ「・・いえ、私もきちんと確認もしないで、思い込みでイルナちゃんだと思って出てしまいました。なので、今回はぎりぎりセーフとして罪に問いません!」





えっ、俺って罪になる所だったの? そういえば、ここでは犯罪者ってどうなるんだ? そもそも法律ってあるのか? 俺は様々な疑問が浮かんだが、とりあえず許してもらえたようなので歯磨きをするか。


歯磨きから戻ると、全員揃っている。あっ、ワルキューレが居ないけどいいか。





レ「よし、飯にするか。」


ヤ「それなんですが・・・。気がついたらこれが置いてありました。」





ワルキューレがいつも寝ている場所にテーブルがあり、その上にはオニギリとお湯を入れて作るみそ汁が置いてある。今日はこれを食べろって事か? ケルベロちゃんにも余裕が無いようだな・・。まぁ、飯を用意してあるだけまだマシか。オニギリの他には、うめぼし、しゃけ、昆布、シーチキン、塩など具材が置いてあるので、自分で作れって言う事だろうな。すべて塩握りじゃないだけ親切か。





ア「我は、ホットケーキがいいのじゃ・・。」





アヌビスはしょんぼりした顔をする。





ヤ「これもおいしいですから、食べてみてください。」





弥生はアヌビスの分もオニギリを作ると手渡している。イルナは梅干しが初めてらしく、美味しそうに見えたのか、そのまま1個パクリと食べて、めったに見られないような「酸っぱい!」顔をしている。吐き出さないのは誉めてやろうか? 俺は無難に塩にぎりとシャケ握りを食べた。弥生は昆布と梅干か。アヌビスはシーチキンが気に入ったようで、お代わりをしている。イルナは梅干に慣れてきたのか、ゆっくり咀嚼しているようだ。





皆「ごちそうさまでした。」


レ「案外、こういう朝飯もいいな。」


ヤ「そうですね、あら? 何かありますよ。」





テーブルを片付けると、皿の下に置手紙があった。





ヤ「えっと、普通にダンジョン攻略していて下さい、ラヴィより、だそうです。」





走り書きの様に書いてあるので、そうとう急いでいるんじゃないのか? 口で伝えた方が速そうなんだが・・、ああ、これを置いたのはケルベロちゃんか。だとしても口で使えればいいんじゃないか?





俺達はフロントに向かうと、ケルベロちゃんの分身が居た。なぜ分身だと分かるかというと、服が違うからだ。戦闘服っぽい迷彩服を着ている。





ケ「おはよう、準備は良いか? 今日はあたちがついて行くぜ!」





やはり、語尾に「ワン」がつかないので分身だな。





レ「ワルキューレやラヴィ様は?」


ケ「あたちの本体を含めて忙しいので、今は誰も居ないぜ。」


レ「そんな状況でダンジョン攻略してていいのか?」


ケ「むしろ、急げって命令されている。あたちも、中止になる前にクリアしたほうがいいんじゃないかと思うぞ。」





えっ、そこまでヤバいの? 中止になったら俺達も戻ることは出来なくなるだろうし、急いだほうがいいかもな。





レ「わかった、じゃあ今日は9階からだな。」


ケ「じゃあ、ホテルの外に出たら、あたちが9階まで転移させてやる。」





移動時間も惜しいのか、ケルベロちゃんはすぐにダンジョンへ転移してくれた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る