第96話 フェンリル(笑

ラヴィの転移で4階から再開だ。




レ「転移直後に襲われることもあるんじゃないか?」


ラ「あっ、そういえばそうですね。何か安全に行き来できる方法を考えないとマズイですかね?」


レ「俺は大丈夫だけど、ここで苦戦するような人が居た場合、いきなりヘルハウンドに囲まれるとかがあったら即死するだろうな。」


ラ「むむっ、その場合は私が助けるかもしれませんが、私が居ない場合も考えられますよね。何かいい案が無いか考えてみます。」




いい案が将来的にエレベーターになるのだろうが、今現在はエレベーターなんてどこにも存在しないからアドバイスしても意味が無いだろう。放っておいても大丈夫そうだし、俺にとっては今の転移の方が歩く距離が短いので楽だ。




ユ「またライカンスロープやケルベロスがやってくるようですね。」




耳を澄ますと、確かに複数の足音がする。2足と4足の足音の差は分からないが、チャリチャリと爪の音がするからケルベロスは居るのだろう。十秒後には接敵するだろう、ユウがすでに剣を鞘から抜いて警戒している。




レ「来たぞ!」




見たところ、ライカンスロープと・・・フェンリルじゃないか? 青い巨体で白い息を吐いているので間違い無いだろう。




ラ「珍しいですね。あれはレアモンスターのフェンリルです。」




やっぱりフェンリルだったか。ここではレアモンスターという扱いみたいだな。




レ「レアモンスターは普通のモンスターと違うのか?」


ラ「普通のモンスターより強いのです。ずっと同じ階に留まろうとしたりした時に、対象者を排除する時にも出ますが、私達はまだ来たばかりですしね。」




メィルが言っていたズルとはまた違うのか? どの程度の強さか見てみるか。




レ「ユウ、苦戦するようだったら手伝うからな。」


ユ「分かりました。僕が先に戦います。」




ユウは剣を正眼に構えると、眉間に突きを出す。ユウの剣は見事に突き刺さり、フェンリルは消滅した。それを見て、ライカンスロープは戦意を無くしたのか、虎耳が下がる。ユウは容赦なくライカンスロープにも斬りかかり、殲滅した。増援が無い事を確認した後、ユウは剣をしまう。




ユ「思ったよりも弱かったですね。」


ラ「いいえ、ユウ様が強いんですよ! きゃっ。」




ラヴィがユウを褒めるが、ラヴィの方が断然強いので、比較対象は常人なのだろう。俺もユウも常人と比べるなら遥かに超人だ。




ラ「あ、あとレアモンスターは次の階層付近に出やすいので、そろそろ次の階ですかね?」




ラヴィ自身もダンジョン内の構造を教えられていないのか、疑問形だ。俺の記憶によれば確かこの辺りに階段があったはずだ。




レ「お、あったあった。」




俺達は、まだ時間があるので5階層に進むことにした。


5階層は不死者の階層だ。俺は一応警戒しながら臭いをかいでみる。




レ「くんくん、よしっ、腐った臭いはしないな。」


ラ「どうしたんですか? ここはアンデットやスピリットと呼ばれるモンスターがでる階層ですが、不死者といえども腐っている訳では無いですよ? あれ? アンデットが出るっていいましたっけ?」




ラヴィは可愛く首を傾げているが、俺の知識は未来の物なのでラヴィより詳しいはずだ。




レ「何となく、臭いが気になっただけだ。前の階層は獣臭かったからな。」


ラ「そうですか。でも、臭いを無くすことは出来ないので、ご了承くださいね。」




一応ラヴィを誤魔化して探索を開始する。最初に接敵したのはマミーだった。不死者は基本的に刀の様に斬ったり突いたりする攻撃に強いはずだ。俺はスラタン刀の代わりにハンマーを作り出した。




ユ「僕にも棍棒を作ってもらえませんか?」




俺はユウに棍棒を作ってやった。オークが持っていたただの木の棒と違って、トゲトゲのついた威力が高そうなやつだ。


俺がハンマーでマミーの足を砕く。マミーの右足が折れたようで、倒れ込む。しかし、痛みを感じていないようで、折れた足でも歩いてきた。


マミーは掴みかかるようにユウに近づいたが、ユウは棍棒をマミーの右肩に当てると、右腕が落ちた。




レ「うげ、気持ち悪いな。」




マミーの右手は切り離されても動いている。こういう時、魔法があればいいんだが。そう思った時にピンときた。あれ、俺ももう魔法使えるじゃん。




レ「融合、ガーゴイル!」




俺はガーゴイルと融合すると、体の表皮は石のように固くなったが、体の動きを阻害する事が無い不思議な感覚だった。さらに、体感的に飛行と火魔法が使えるようになったと分かる。




レ「これでどうだ、火の玉!」




俺はアイススライムと融合していた時のように、10cmくらいの火魔法を使う。乾燥していたマミーは予想以上に燃え上がり、あっさりと燃え尽きて消滅した。




ユ「助かりました。ここでは物理攻撃は不向きですね。」


レ「仕方ないさ、昔は俺もアヌビス頼りだったからな。」




ラヴィも声をかけようと思っているっぽいが、うまくかける言葉が見つからないようで、「あー、うー。」と言っている。さらに出てきた3体のマミーにも同様に火の玉をぶつけて消滅させた。楽に倒せるとこれはこれで面白いな。


次に出てきたのはスペクターだった。相変わらず霊体の癖に透明でも無ければ飛行もしていない。のんびりと歩くように近づいてくる。




レ「ユウ、俺がやる。」


ユ「分かりました。」




スペクターには物理無効があるはずなので、ユウの出番はない。


スペクターは周りを夜のように暗くし、その暗さに紛れて闇の玉を撃ってくる。




レ「その程度の攻撃は効かないな。」




俺は盾でそれを受けると、衝撃は受けたがダメージは無い。闇の玉が飛んできた方へ逆に火の玉を撃ち込んでやると、風船が破裂したようにパァンという音と共に闇が晴れて明るくなった。




レ「あいつ、中身はガスだったのか?」




誰も答えを知らないので、俺の独り言になってしまったが気にしない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る