第97話 鍋料理

それからマミーを数体倒し、スペクターも数体倒したころ、グーラが現れた。ここのグーラは少ない布で大事なところを隠しただけの格好なので、未来よりも色っぽい。




ユ「女性には手を出したくないので、僕は待機ですね。」




ユウはそう言ったが、グーラは早々に獣化した。また、しゃべる様子も無いので知能が低いのだろうか? どっちにしろ言葉は通じないかもしれないが。




ユ「僕は女性には手を出したくないのですが、獣化したならば容赦はしません。」




ユウはそう言うと、あっさりとグーラに対して攻撃する意思を見せる。獣化したグーラはスラリとした狼風で、布もどういうわけか巻かれたままだ。ただ、元々の見た目が獣のモンスターよりは知能が高いようで、こちらの様子をうかがっているようだ。そのグーラがチラリと上を見た。




レ「ん? 何かあるのか?」




そう思って俺もつられて上を見ると、その隙に足を噛みつこうとした。




レ「おっと、あぶないあぶない。」




俺にとってはスピードが大したことなかったので、ひょいと足を上げて回避した。そして、上げた足でそのままグーラの頭を蹴ると、「ぎゃんっ」と思ったより吹っ飛んで行った。




ユ「次は、僕が行きますね。」




ユウは追撃の為にグーラに向かって走って追いつくと、倒れて隙だらけの腹を刺した。グーラはしばらく痛みに体を捻った後に消滅した。それから、剣を携えたモンスターが現れた。剣と言っても、がたがたで鉄の塊を剣風にしただけという様な粗末なものだが。




レ「ん? あれは初めて見るモンスターだな?」


ラ「え? 今までのは見た事あるモンスターだったんですか?」


レ「あー、いや、あんまりモンスターに見えないなって意味だ。」




ラヴィには適当に誤魔化すと、確かオークやライカンスロープも未来と違っているから、こいつも恐らく黒騎士に該当するモンスターなのかもしれない。この時代にはまだ鎧とか無さそうだしな。


剣士は型も何もない、ただ剣を振り下ろすような攻撃をしてきた。




ユ「全然なっていませんね。」




ユウはそれを剣で受け流すと、剣士の剣は地面にカツンと当たり、大きな隙を見せる。その隙を見逃さず、ユウは剣士のがら空きの脇腹を切り裂いた。




レ「・・・人型の傷は見ていると自分も痛く感じるな。」




今にも内臓がこぼれそうな傷を見て、俺は自分の腹を押さえてしまう。それを聞いてユウは気を使ったのか、心臓に当たる部分に剣を刺して止めを刺した。




ユ「物理攻撃だと、どうしても痛そうに見えてしまいますね。」


レ「まあ、仕方ないのかもしれないが、できるだけ痛そうな攻撃は無しだな。」




そう言ったところで弥生がグリフォンのお尻の穴に手裏剣を刺していたイメージが頭に浮かび、つい自分のお尻を押さえてしまう。




ラ「さすがにグーラのそこを攻撃するのはダメですよ!」


レ「いや、しないよ!?」




ラヴィが変な勘違いをして注意してきたので、即時訂正する。幸い、その後のグーラもすぐに獣化してきたので、そこまで忌避感無く倒せたが、ユウは慣れたのか、剣士の首を落としていた。うぅ、今夜は悪夢を見そうだ。


そして、そろそろ次の階が近いのでヴァンパイアっぽいモンスターが出てきた。




レ「・・・なんか、貧弱に見えるな。」




どちらかと言えばグールくらいに見える。耳がとがっていて目が赤く、口から長い犬歯が見えるが、服はただの布だし裸足だし。




レ「ちょっと試してみるか。復元!」




俺はヘルハウンドのコアを復元した。未来であればヴァンパイアの10分の1ほどの強さしかない。これで強さを測ってみたいと思う。




ラ「へぇ、いつものケルベロスとは違うんですね?」


レ「ああ、これは復元で作ったから、元のモンスターだ。」




ここのヘルハウンドとも少し見た目が違うのは時代の流れなのだろうな。俺のヘルハウンドの方がスラッとしていてカッコいい。


ヘルハウンドはさっそく貧相なヴァンパイアを敵と認識し、走っていく。ヴァンパイアの方は血魔法を使って眷属の蝙蝠を召喚し、ヘルハウンドに攻撃した。蝙蝠はあっさりとヘルハウンドに蹴散らされたが、ヴァンパイアに噛みつこうとしたヘルハウンドの攻撃は回避された。




レ「思ったよりもいい勝負をしているんじゃないか?」


ユ「そうですね、僕たちが知っているモンスターの強さの10分の1くらいでしょうか?」




ラヴィに聞こえないように俺とユウは話し合う。といっても、両方の知識量は一緒なので余り意味は無いが。


そうしている間に、ヘルハウンドはヴァンパイアに負けてコアに戻った。ヴァンパイアの方も何カ所か噛まれた傷があるようで、すでに満身創痍だ。ユウはヴァンパイアに近づくと、あっさりと首を落とす。ヴァンパイアはアンデットなので、傷口から血が出なかったため、まるで人形の様で少し安堵した。そう言えば、全部アンデットだったな。今思えば、剣士の傷も痛そうではあるが血はほとんど出ていなかったし、グーラもそうだった気がする。その割に心臓が弱点なのか? よくわからんな。全員スペクターくらいあっさりと消滅してくれると助かるんだが。




丁度階段があったので、ここで一旦戻ろうと思う。




レ「ラヴィ、そろそろ昼飯にしようと思うんだがどうだ?」


ラ「ユウ様はお腹が空きましたか?」




ラヴィはユウの方を気に掛ける。




ユ「僕はどちらでも大丈夫ですけど、せっかくですから戻りましょうか。」


ラ「わかりました、転移!」




ラヴィによって食堂に転移してきた。ユウの意見が優先されるのは釈然としないが、世の中やはり顔なのだろうか・・。




レ「今日は魚が食いたい気分だ。」


ラ「魚ですか? うーん、このあたりでどうですか?」




地球のカンブリア紀に出てきそうな奇妙な魚が多い。アンコウっぽいものがあるので鍋でもいいかもな、調味料も塩しか無いし。




レ「ユウ、鍋にしようか。」


ユ「分かりました。作ってきますのでしばらくお待ちください。」


ラ「あっ、私もお手伝いします!」




ラヴィも野菜を切るだけなら大丈夫だろう・・大丈夫だと良いな・・。


しばらくして、熱々の鍋ができあがったようだ。ユウがチョイスしたのか、白菜の様な野菜や、ニンジンの様な野菜、大根の様な野菜も入っている。




皆「いただきます。」




今回はみんなで食べる。鍋はやはりみんなで食べないとな!


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