第93話 オーク狩り
空腹で目が覚めた。よく考えたら昨日は結局昼飯を食っていないも同然の上、夕食も食えていない。人間、腹が減りすぎると痛いんだな・・・。
ラ「おはようございます!」
ラヴィがぺこりと挨拶した。
レ「おはよう。いつから居たんだ?」
ラ「源さんが起きる気配がしたので、転移してきました。なので、今来たところです!」
起きる気配が分かるとか、熟年夫婦にも無理だろうと思うが。日が昇り始めたばかりなので、日本であれば朝の5時から6時頃か? そも思っていたら腹が「ぐーっ」と主張を始めた。
ラ「あっ、お腹が空きましたよね? いま朝食を用意しますね。」
そう言うと、ラヴィはアイテムボックスから何かの巨大な卵を取り出した。
レ「・・・何そのでかい卵は。」
ラ「え? 源さんは恐竜の卵とか嫌いですか?」
好きも嫌いも、食ったこと自体が無い。見た目はニワトリの卵を100倍したような感じだ。煮るにも焼くにも時間がかかりそうだな。
レ「食ったことは無いが、ものすごく腹が減っていて、今すぐにでも食えるものが良いな。」
ラ「分かりました! すぐ焼きますね。火魔法レベル5!」
ラヴィの右手から火炎放射器の様に勢いよく火が出る。卵はあっという間に真っ黒になったが大丈夫なのだろうか? ラヴィはアイテムボックスから大きな石の器を取り出すと、その真っ黒の卵をふちでコンコンと当てて殻を割った。中身は普通のニワトリの卵と一緒だが巨大だ。
ラ「さあ、出来ましたよ!」
レ「・・・ありがとう。いただきます。」
俺はうがいの時に使った塩をかけると、白身にかぶり付いた。
レ「おっ、うまいな。」
うん、普通の卵の味がする。むしろ、濃厚さはこっちの方が上だ。中は予想通り生だったが、時間の止まっているアイテムボックスから出したのなら腐ってはいないだろう。
ラ「何をかけたんですか?」
ラヴィが興味深そうに俺の右手を見てくる。ちなみに、塩は葉っぱの様な物で包まれていた。
レ「塩だよ。使ったことはないのか?」
ラ「えっ、そういう使い方もできるんですか?」
レ「食べてみるか?」
俺はまだ口を付けていない白身部分に少し塩を振ってやる。ラヴィは恐る恐るカプリと小さな口で食べた。
ラ「・・・おいしいですね。」
ラヴィはパクパクと食べ始めた。もしかして、神は食べなくていいからと味見すらしてなかったんじゃないのか?
ニワトリの卵100個分は当然食えないので、途中で腹がいっぱいになった。それに食べあきた。
レ「うっぷ、ごちそうさま。さすがにこれ以上は入らないな。」
ラ「それなら、アイテムボックスで保存しておくので、また食べたくなったら言ってくださいね。」
そういうと、ラヴィは食いかけの卵をアイテムボックスへしまった。
レ「ちなみに、昨日の肉は何の肉だったんだ?」
ラ「ドラゴンの肉ですよ? 奮発しました! めったに手に入らないんですよ?」
あれはドラゴンの肉だったのか。まあ、俺の足ほどもある肉なんてそうそう見たことは無いからな。もしかして、ドラゴンの肉に火耐性とかあったんじゃないのか?
レ「ああ、貴重な食材をどうもありがとう。ただ、俺の胃は消化吸収できないみたいだ。」
ラ「それは、あの、ごめんなさい。」
ラヴィがしゅんとした。別にラヴィを困らせるつもりはなかったので頭を撫でてごまかした。うさ耳がぴくぴく動いているのでおそらく気持ちが良いのだろう。撫でるのをやめると耳が少しションと下がるのが面白い。
レ「それじゃあ、今日もがんばってダンジョンへ行こうか。」
ラ「はい!」
ラヴィは昨日転移した2階の階段前に転移してくれた。俺はそのまま階段を上り3階へ行く。3階は確かオーク達だったはずだ。
ラ「3階はオークですよ! スライム達と違って知能が高いので気を付けてくださいね?」
レ「ああ、分かっている。」
実際、オーク戦はいろいろとやばかったからな。ここのオークはどうなのかな?
俺は罠に気を付けながら歩いて行く。今となれば罠なんて大したことないけどな。ただ、マヒと装備解除はやばい、見た目的な意味で。そう思ってラヴィをちらりと見ると、コテンと首を傾げられた。
ラ「どうかしたんですか?」
レ「いや、何でもない。」
今まで心を読まれていただけに、不思議そうな顔をするラヴィが珍しく感じる。よそ見をしていたのが悪かったのか、ファイアボールの罠を踏んだようだ。一瞬だけ火だるまになる。魔力的にダメージは受けてない。
レ「うあっちい!」
幸いスラマントは燃えなかったが、スーツが少し焦げた。やばい、装備解除じゃなくても火系統の魔法を受けたら服が燃え尽きてしまう。
ラ「罠があるので気を付けてくださいね?」
慌てていないところを見ると、罠があることを今まで言わなかったのはわざとの様だ。罠がある事を知っていてひっかかっている俺はラヴィに文句を言うつもりは無いが。
レ「大丈夫、幸い死んでいないからな。」
最初にこれで死んだのを思い出した。
ラ「そうですね、火力が弱すぎましたか?」
レ「いや、強すぎるとこれからここを使う全員がここで死ぬぞ?」
ラ「あっ、確かにそうですね。」
ラヴィはクスクスと笑うと、先に進むように促してくる。俺は足元に注意しながら進んだ。すると、オークとハイオークが出てきた。オークは棍棒に皮の服で、ハイオークは木の棒に石をツルで縛りつけた斧と、皮の服を着ている。服装は未来のダンジョンよりも貧相だが、服の隙間から見える体は引き締まっていて豚顔の狼男みたいな感じに見える。
オ「ブモッ!」
ハ「ブフモッ!」
言葉はしゃべれないようだが、オーク同士で意思疎通ができるようだ。左右に別れたところを見ると、挟み撃ちにしろとでも言っていたのかな?
まずオークが棍棒で殴りかかってくるが、俺はそれを避けると、足をかけて転ばせる。それを隙と捉えたのか、ハイオークが斧を上から叩きつけてくるが、斧の部分に手を添えて軌道をずらし、オークに当たるようにしむけた。ぐしゃりとオークの頭が砕けて光となって消えた。
ハ「ブモーッ!」
それを受けて激高したのか、めちゃくちゃに斧を振り回しながら向かってくるが、俺の素早さからすれば全然遅い。俺はスラタン刀をハイオークの胸に刺す。刀を抜くと、少し血が出たがそのまま光となって消える。
ラ「落ち着いてますね! ここで多少は苦戦する予定だったのですが、思った以上に源さんが強くてびっくりしました!」
レ「・・・ありがとう。」
アヌビスや弥生が強いので、今まで自分が強いと感じたことが無かった。俺は照れ隠しに刀を振って鞘に納めると、先へ進んだ。
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