第60話 ガーゴイル、グーラ

レ「とりあえず、6階の敵の強さを見てから、どの程度5階でステータスを上げるか決めようか。」


ヤ「わかりました、では、6階に行きましょう。」





弥生の声がまだ冷たく聞こえるのは俺の気のせいだろうか?気のせいであって欲しい。





イルナは、今日はもう憑依を使えないという事で、戦闘には参加しない。ネクロマンシーでマミーを召喚してもいいけど、今までの傾向から、おそらく6階では何の役にも立たないだろう。ネクロマンシーは俺の復元と同様に、コアがあればそのコアと同じモンスターを作れるらしい。コアが無くても、死体の一部とかでもいいらしいが、ダンジョンではむしろそっちの方が手に入らないだろう。


イルナに、肉壁用にスペクターのコアを渡した。俺のMPでは、復元で完全に同様の能力を持たせるのは、スペクターが限界か。





俺達はエレベーターで5階に行き、横の階段から6階に向かう。6階は、いつもの廊下と違い、王宮並みに広くなっていた。廊下の高さは10mくらいで、幅も10mくらいになっている。そして、廊下にはずらりと石像が並んでいた。





レ「急にファンタジーらしい見た目になったな。」


ヤ「そうですね、6階のコンセプトは鳥みたいですから、飛行の邪魔にならないようになっているんですかね?」


レ「ああ、ハーピィとか出るのかな。」


ヤ「・・・上半身が美女とは限りませんよ?」


レ「いや、うん。ごめん。」





言い訳しようと思ったが、下手に言い訳すると期待していたように見えるから止めておこう。





アヌビスも、いつもの廊下より広いから、飛行速度を上げて飛び回っている。





イルナが物珍しそうに、石像に触っていると、急に石像が動き出してイルナに噛みついた。イルナに90ダメージ。





レ「弥生、この石像が敵だ!」


ヤ「分かりました、鑑定します!」





弥生が鑑定すると、石像のほとんどがモンスターだった。


ガーゴイル(石像):HP2000、MP1400、攻撃力100、防御力500、素早さ300、魔力300、スキル:飛行、MP自動回復(中)、火魔法(5)


攻撃力は低いが、防御力がメチャメチャ高い。それに、魔法を使ってくるようだ。





レ「イルナ、離れろ!」





イルナに向かってガーゴイルが火の玉を飛ばす。





ア「危ないのじゃ!」





イルナに当たる前に、アヌビスが防いだ。アヌビスに0ダメージ。





レ「ワルキューレ、死者の杖と死者の衣をイルナに渡せるか?」


ワ「ダメだ。あれはもともと神々の持ち物。最終的にイルナ殿が持っていたとはいえ、所有権は無い。」


レ「じゃあ、仕方ない。イルナ、これでもかぶっていろ。」





俺は自分のスラコートをイルナに渡す。ガーゴイルが俺にも飛びかかってきて腕に噛みついてきた。零に0ダメージ。





石像は、次々とガーゴイルになって飛び回り、隙を見て魔法や噛みつきで攻撃してくる。





ヤ「この数は、対処できません!一旦帰りましょう!」


レ「分かった、みんな集まってくれ。」





俺は、弥生、アヌビス、イルナ、ワルキューレを対象に選ぶと巻物を取り出す。





レ「帰還の巻物、俺達をフロントへ!」





俺達は無事フロントに帰ってきた





ヤ「ふぅ、危なかったですね。私も火の玉だらけで死ぬかと思いました!」


レ「それに、イルナに装備を作っていなかったな。弥生、頼めるか?」


ヤ「分かりました!指輪と腕輪にしますね。」





弥生は、俺の分裂体を指輪・防御力50と腕輪・防御力50にして渡した。俺は代わりにイルナからコートを返してもらった。





ア「我はガーゴイルなぞ余裕じゃ!」


レ「毎回アヌビスだけに頼っているのもダメだから、しばらく5階でコアを集めるよ。」





俺達は5階に戻り、マミーとスペクター、黒騎士を狩っていた。この階層、敵の種類が少ないなと思ったのが悪かったのだろうか。行ったことの無い通路から、ヒタヒタと足音が聞こえる。姿を現したのは、アラビア風の服を着た美女だった。





グ「こんにちは、冒険者さん?」


レ「お前は、モンスターか?」


グ「あら、いい男ね、魅了!」


レ「え・・? あ・・、よお、久しぶりだな、グーラ。」





俺は久々に知り合いに会った。元気そうでよかった。





ワ「あれは、モンスターだ。弥生殿、鑑定を。」


ヤ「え? わ、わかりました! 鑑定!」





グーラ(不死):HP2000、MP1000、攻撃力200、防御力100、素早さ100、魔力400、スキル:魅了、獣化





レ「何をしているんだ、弥生。こいつは、俺の知り合いでグーラって言うんだ。」





俺は弥生にグーラを紹介する。





ヤ「源さん、しっかりしてください、そいつはモンスターですよ!」


レ「何を言っているんだ、弥生。ほら、モンスターを探しに行くぞ。」


ア「話にならぬのじゃ、闇の球。」





アヌビスがグーラに向かって闇魔法を使う。





レ「やめろ!アヌビス!」





俺はその攻撃を間に入って受け止めた。零に1073ダメージ。





ア「あわわわっ! ごめんなのじゃ、当てるつもりは無かったのじゃ!」





俺は闇魔法で吹き飛ばされた後、魅了が解けたようだ。





レ「あれ、俺は?」


ヤ「意識が戻りましたか? 源さんは下がっていてください!」





弥生は俺をかばうように立つ。





グ「あら、今度は可愛いあなたが相手かしら? 魅了!」


ヤ「!!?」





弥生は顔の前を腕でガードする。弥生は「あれ?」と不思議そうな顔をしている。





グ「ちっ、運がいいわね。もう一度、魅了!」


ヤ「あれ、グーラちゃん? グーラちゃんもこっちに来てたの?」


グ「そうよ、そして、そこの男に襲われているのよ。」





グーラは弥生の後ろに隠れるようにして、俺を指さす。





ヤ「えぇっ、じゃあ、私が倒してあげるよ! 投擲武器操作!」


レ「弥生、やめろ!」





俺はペプシを作り、いくつかガードしたが、手裏剣の1つが俺に当たった。ペプシに882ダメージ、ペプシに882ダメージ、ペプシに882ダメージ、零に288ダメージ。やばい、残りHPが152しかない上に、帰還の巻物も無いぞ!





ア「弥生、やめるのじゃ!」


ヤ「あなたも、グーラちゃんを襲った奴の仲間ね、投擲武器操作!」





手裏剣がアヌビスに当たる。アヌビスに0ダメージ。





ヤ「ダメージが0!? グーラちゃん、逃げて!」





弥生はグーラをかばって逃がすが、逃がすわけには行かない。





レ「待て、グーラ!」


ヤ「邪魔しないでっ!」


レ「あ・・。」





俺の目の前に、手裏剣が迫る。





イ「ネクロマンシー、スペクター召喚!」





俺の目の前に、スペクターが召喚され、手裏剣はカキンと弾かれた。物理無効、スペクターに0ダメージ。





レ「イルナ、助かった。」





イルナはグッと親指を立てた。


俺はユウを2体作ると、弥生を押さえつけさせた。





ヤ「放してください! いくらイケメンでも、許しませんよ!」





そういいつつ、弥生は振り払っていない。





レ「アヌビス!」


ア「任せるのじゃ!」





アヌビスは闇魔法をグーラに当てる。グーラに823ダメージ。





グ「きゃあぁ、こうなったら、獣化!」





グーラは、ハイエナに変身すると、俺に向かってくる。


俺はそれを抱きとめると、拘束した。零に0ダメージ。





レ「アヌビス、やってくれ!」





アヌビスは闇の球を2回当てた。グーラに823ダメージ。グーラに823ダメージ。グーラはコアになった。グーラを倒すと、弥生の魅了が解けたみたいだ。





ヤ「あれ、いつの間にかイケメンに囲まれてる!」





俺はアヌビスにユウを破壊してもらった。ユウに1223ダメージ×2。





ヤ「ああ、もったいない!」





弥生はムンクの叫びのようにほっぺたを両手で挟んだ。

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