第55話 イルナ

ネ「逃がすわけが無いだろう?ネクロマンシー。」





ネクロマンサーの周りに黒い穴の様なものができると、その中からゾンビやマミーがうじゃうじゃと湧いてきた。


ワルキューレは、手を出すかどうか迷っているようだ。ネクロマンサー本体はともかく、ネクロマンシーされたモンスターは通常の敵扱いらしい。





ネ「さあ、お前たち、あいつらをやっつけろ!」





ゾンビとマミーが襲ってくるが、俺も弥生も素早さが高くなっているため、余裕で対処する。俺に関しては攻撃が当たってもクリティカルじゃない限りはダメージ0だな。


俺達がゾンビ達を対処していると、何か動きがあったようだ。





ネ「や、やめろぉ!返せぇ!」





見ると、アヌビスが死者の衣をひっぱって脱がせ、空中に逃げている。衣を脱がされた姿は、ツインテールの小学生にしか見えない。黒いパンクみたいな格好だ。老婆じゃなくて幼女か。





レ「そうか、攻撃は効かなくても脱がせることは可能なのか。弥生、鑑定を。」


ヤ「はい!鑑定!」





ネクロマンサー(悪魔):HP9600、MP1000、攻撃力10、防御力10、素早さ10、魔力10、スキル:ネクロマンシー、転移、MP自動回復(大)、装備:死者の杖(物理無効)





ネ「返せ、返せ!」





ネクロマンサーはジャンプして取り返そうとするが、届かない。


ネクロマンシーしたゾンビやマミーは倒され、衣が無くなったため、ワルキューレに影の牢獄に入れられる。





レ「お前、何そのHP極振りみたいなステータスは。」


ネ「死にたくないんだもん。」





防御力を上げても、魔法で攻撃されるとダメージを受けるし、魔力を上げても物理で攻撃されるとダメージを受ける。じゃあ、両方に対応するためにHPを上げようという発想らしい。





ネ「魔界のどさくさでリッチ師匠達がやられて、師匠達が持っていた杖と衣を手に入れる事ができた。これで無敵だと思ったのに・・。」





今は、杖も衣もワルキューレが没収し、アイテムボックスに入れられているので、ネクロマンサーのステータスじゃゴブリンくらいしか倒せないな。





レ「どうするんだ?もう無害に近いこの少女は。」


ヤ「あー、親戚の姪っ子みたいです~。」





弥生は牢屋の隙間から手を入れると、頭を撫でている。





ネ「触るな!」





ネクロマンサーは手を振り払った。弥生に0ダメージ。





ワ「悪魔は漏れなく殲滅せんめつだな。とりあえず、ラヴィ様に突き出すか。」


ネ「くっ、転移!」





ネクロマンサーは転移を使うが、転移の魔法陣が完成する前に、ワルキューレが魔法陣を槍で壊した。





ワ「転移させるわけが無いだろう。弥生、縛ってくれ。」





物理的につながってしまえば、仮に転移したとしても、接触先も一緒に転移されるらしい。弥生は分裂体をロープ状にすると、ネクロマンサーを縛り、端をワルキューレに渡した。





ヤ「それじゃあ、5階クリアです!」





俺達は、エレベーターで帰る事にした。すでに夜の7時になっていたらしい。思ったより長く戦っていたようだ。結構集まったコアを使ってステータスを上げておくか。





源零:HP1513、MP1010、攻撃力180、防御力300、素早さ230、魔力150、スキル:分裂、MP自動回復(小)、装備:スラタン刀・攻撃力100、スラコート・防御力70





形無弥生:HP1292、MP1230、攻撃力450、防御力180、素早さ280+196、魔力170、スキル:変化、投擲術(8)、空間魔法(5)


投擲術(8)は投擲ダメージ1.8倍、素早さ1.7倍、飛距離1.6倍、クリティカルダメージ1.5倍加算、貫通属性付与、投擲武器操作、投擲武器に衝撃波付与、投擲速度増加だ。





俺達はフロントに向かうと、受付はメィルだった。まあ、もう夜の7時だしな。





メ「お帰りなさいませ、ワルキューレ様。おかえり、お兄ちゃん、お姉ちゃん達!」





メィルはうれしそうにほほ笑んでいる。





ワ「ラヴィ様に連絡を取れそうか?」


メ「少々お待ちください!」





メィルは、奥にひっこむと、連絡を取りに行ったようだ。しばらくして、メィルが戻ってくる。





メ「今は手が離せないそうで、用件は明日にして欲しいそうです。」


ワ「緊急と言えば緊急だが、逃がさなければ大丈夫だろう。このままホテルへ連れていくか。」


メ「そちらは誰ですか?」





メィルはネクロマンサーを見る。ネクロマンサーは目をそらす。





レ「ダンジョンで捕まえた悪魔で、名前はネクロマンサーだ。」


メ「えぇっ、悪魔!」





メィルはびっくりして戦闘態勢に入る。





ヤ「悪魔と言っても、ゴブリン並みに弱いですよ。」


ネ「くぅ、せめて杖と衣があれば・・。」





ワルキューレは引きずるようにホテルへ連れていく。メィルは、「明日、朝一で連絡を取ってみます!」と言って帰っていった。


ビジネスホテルに着くと、ケルベロちゃんにも報告する。





ケ「これが問題の悪魔ですかワン?」





ケルベロちゃんは攻撃にならない程度にネクロマンサーのほっぺたを突っつく。





ネ「触るな!」





弥生の時のように指を振り払おうとしたが、触れる前にサッと指を引かれたため空振りした。当たってたらネクロマンサーの方が死んでたりしてな。





ケ「あたちに任せてもらっていいかワン?」


ワ「はい!ご自由にどうぞ!」





まあ、ケルベロちゃんに逆らえるわけがないので、任せることにした。


俺達は部屋に向かう。





ワ「ケルベロ様に任せれば、万が一にも逃げられることは無くなったな。安心だ。」


レ「追跡スキルを使うのかな?とりあえず、飯にするか。」


ア「我はホットケーキにするのじゃ!」


ヤ「そればっかりだと、いつか健康を害しますよ?」


ア「その時は、再現し直してもらうのじゃ!」





弥生は「はぁ」と嘆息すると、ご自由にと諦めた。フロントに電話すると、ケルベロちゃんが出た。ネクロマンサーの声も聞こえるから、そこに捕まっているのだろう。





レ「ネクロマンサーがいるようだけど、飯の注文しても大丈夫か?」


ケ「あたちの分身が見張っているので、大丈夫ですワン。」





大丈夫なようなので、俺は刺身を。アヌビスはホットケーキを、弥生は牛丼を、ワルキューレは珍しくホットパイを注文した。すぐにケルベロちゃんが現れた、テーブルに料理を並べてくれる。俺は刺身をつまみにビールを飲み、皆もそれぞれおいしくいただいた。





皆が帰った後、俺はアヌビスを風呂に入れ、寝る準備をしていると、ドアを叩く音がした。





レ「誰だ?」


ケ「あたちだ!面白いものを見せてやるから、開けろ!」





ドアを開けると、メイド服のネクロマンサーがいた。





レ「どういうことだ?」


ケ「聞いてくれよ!こいつ、他の世界でネクロマンシーに失敗して悪魔に憑依されていた、ただの人間みたいだぞ!」





ネクロマンサーは涙目でメイド服のスカートを握りしめている。





ケ「そういうわけで、悪魔も取り除いたから自由にしていいぞ!じゃあな!」





ケルベロちゃんはそういうと、霧の様に消えていった。本人じゃなくて分身なのか。





ネ「ご、ご迷惑をお掛けしました。私の名前はイルナと言います。」





俺は、「ちょっと待っていろ。」と伝え、着替えて戻ってきた。そして、弥生の部屋に行く。





レ「弥生、起きているか?」


ヤ「起きていますよ?入りますか?あっ、着替えるのでちょっとまっててください。」


レ「じゃあ、先にワルキューレも呼んでくるよ。」





俺はワルキューレの部屋をノックすると、ワルキューレは普通に起きていたのか、ネグリジェじゃなくて普通の鎧姿だった。





ワ「どうしたのだ?ネクロマンサーを連れて。ケルベロ様は?」





ワルキューレは矢継ぎ早に質問してくるが、それをまとめて弥生の部屋で説明をすると伝えると、弥生の部屋に向かった。と言っても隣だが。





レ「もう入ってもいいか?」


ヤ「はい、大丈夫ですよ!」





俺達は弥生の部屋に入ると、先ほどの話をした。すると、弥生は鑑定し直した。





イルナ(人間):HP9600、MP1000、攻撃力10、防御力10、素早さ10、魔力10、スキル:ネクロマンシー





ヤ「あ、本当に悪魔から人間になってますよ!ただ、スキルもいろいろ減っていますが。」


イ「・・・憑依中は、対象のスキルを使えるようになるから・・。」





悪魔の場合は、魂じゃないのでほぼ肉体を乗っ取られているような状態だったようだ。性格は本人の影響が大きいらしく、そのおかげでHP極振り状態だ。





レ「ケルベロちゃんからは好きにしていいって言われたけど、どうする?」


ワ「悪魔じゃなかったのなら、私はどうもこうもしない。」


ヤ「じゃあ、私の部屋で一緒に暮らします!」


イ「・・・いいの?」


ヤ「姪っ子だと思えば、全然大丈夫です!」





こうして、イルナは弥生と一緒に暮らすことになった。俺とアヌビスは、部屋に戻ると、アヌビスはすでに半分寝ているような状態だったので、寝かせた。俺はこれから事について考えながら、横になっていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。

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