第54話 ネクロマンサー

俺達は元気になったアヌビスを中心に5階の攻略を進めていた。マミーは魔力が低いし、スペクターはそもそも魔法じゃないと倒せない。マミーは俺と弥生でも対処できるため、時間はかかるが俺がマミーを押させて弥生が攻撃、たまに現れるスペクターはアヌビスの闇の球で攻撃とサクサク狩り始めていると、新しいモンスターが出た。真っ黒な騎士鎧を着て、ヘルムから見えるのは、スケルトンの様な骸骨だけだ。ただ、立派な大剣を持っている。ガシャガシャとうるさく歩いてくる間に、弥生がステータスを鑑定する。





黒騎士(不死):HP4500、MP1200、攻撃力300、防御力200、素早さ150、魔力100、スキル:剣術(6)、魔法耐性(大)、装備:闇の剣・攻撃力50、闇の鎧・防御力50


剣術(6)は攻撃力1.6倍、素早さ1.5倍、防御力1.4倍、クリティカルダメージ1.3倍加算、衝撃波、剣の壁だ。





弥生からステータスを聞いたアヌビスが、「我に任せるのじゃ!」と言うと、黒騎士は右手を前に出して止まれとジェスチャーした。





黒「我は剣士、魔法は無しでお願いしたい。」


レ「いや、お願いされても困るんだが・・・。」





下手にしゃべれるモンスターが相手だと、問答無用に攻撃しにくいよな。これが無言で突っ込んできたならアヌビスに「やっちまえ!」って言うんだけど。





ヤ「ここは、私の出番ですか?」





さっそくワーウルフに変身した弥生が、首をゴキゴキと鳴らしている。





黒「剣士の決闘に女が出るものではないわ!」


ヤ「なんか怒られました・・・。」





いつの間に決闘になったんだ?それに、俺の攻撃力じゃ黒騎士にダメージを与えられない。俺はチラリとワルキューレを見ると、ワルキューレはコクリとうなずいた。





ワ「よし、私が審判をつとめよう。」


レ「そっちじゃない!」





俺は別にワルキューレに公正な審判をお願いしたわけではなく、相手にする必要あるの?と訴えたかったのだ。人間、口に出して伝える事って大事だね!言わなくても心を読んでくれるラヴィ様みたいなパターンもあるけど。





ヤ「ルールは、寸止めルールでいいですか?」





弥生が勝手に進めるが、ルール有なら俺でも何とかなるか?寸止めルールは、クリティカル判定になる場所に先に武器を突きつけたら勝ちだ。スポーツなら実際に当てたら反則負けだが、今回はそこまで厳密にはしない事となった。ワルキューレと反対側に弥生が移動し、アヌビスは空中から不正が無いか見張る。





黒「それでよかろう。いざ尋常じんじょうに勝負!」





俺は刀を構えると、黒騎士の動きを見た。素早さは俺の方が高いため、じっくり見れば俺に有利なはずだ。





黒「うぉりゃー!」





黒騎士が大剣を振ると、斬撃が飛んできた。俺はなんとか避けると、文句を言った。





レ「おいっ!?魔法は禁止じゃなかったのか!」


黒「何をおかしなことを言う。これは剣術であるぞ。」





俺はワルキューレを見る。





ワ「うむ。これは剣術スキルであって魔法ではない。よって有効な攻撃方法だ!」





ワルキューレは公平に審判をしている。俺に有利にする気が無いのか?





レ「ちなみに、俺がこの決闘で負けたらどうなる?」


黒「当然、首をもらう。」





何を当たり前のことをというニュアンスで言われたが、当然じゃないだろ!ここでも口で伝えなかったことの弊害へいがいが出ている。武人の常識は一般人の非常識なんだよ!





黒「そういうわけだ、くらえ!」





黒騎士は2回、3回と斬撃を飛ばしてくる。俺は何とか斬撃をかわす。





レ「そっちがそのつもりなら、俺にも考えがある。これでも食らえ!」





俺は20体のペプシを作り出すと、黒騎士に向かわせる。





黒「なんのこれしき。」





黒騎士が地面に剣を突き立てると、剣の壁が地面から生えてきた。3体のペプシが剣の壁に当たる。ペプシに490ダメージ。ペプシに490ダメージ。ペプシに490ダメージ。それを見て、他のペプシの行動が止まる。俺はペプシのダメージ量を見て、剣術スキルのステータスアップ分が考えから抜けていた事に思い至った。





レ「ちょっと待ってくれ。」





俺は手帳を取り出し、黒騎士のステータスを書くと、スキル補正を書き込む。攻撃力300+補正180+武器50、防御力200+補正80+防具50、素早さ150+補正75。あれ、実は素早さも負けてるじゃん。





黒「そろそろいいか?」





律義に待ってくれた黒騎士が尋ねてくる。





レ「ああ、サンキュー。もういいぞ。」





俺は手帳をしまい、改めて刀を構えなおす。





黒「それでは、それ、それ、それ!」





黒騎士は斬撃を3つ飛ばしてきたが、俺は分裂体で壁を作って防ぐ。思ったんだけど、飛ぶ斬撃に寸止めって絶対無いよな!俺は砕けた壁の後ろから、ペプシを2体、両手で掴んで黒騎士に向かって投げた。





黒「その程度か!」





黒騎士はあっさりと2体とも斬り伏せる。ペプシに490ダメージ。ペプシに490ダメージ。そのまま黒騎士は俺に向かってくると、喉のどに突きを入れてくる。クリティカル発生、ユウに1250ダメージ。





黒「我の勝ちだ!」





黒騎士は勝ち誇るが、それは俺そっくりのユウだ!俺は消えたユウの後ろから刀を突き出して黒騎士の喉に突きつける。きちんと寸止めしたぞ!





黒「ぬぅ、認めん!認めぬぞ!分身とは卑怯なり!」





黒騎士は決闘を無視して俺に向かって大剣を振り下ろしてくる。





ワ「見苦しいぞ。」





ワルキューレは横から槍で黒騎士に攻撃する。黒騎士に105670ダメージ。ワルキューレは黒騎士の


コアを拾うと、俺に投げ渡す。





ワ「ほら、零殿の戦利品だ。」


レ「いいのか?」


ワ「うむ。勝負はお主の勝ちだ。勝つと信じていたぞ!」


ヤ「私も、源さんが勝つと信じてました!」


ア「我もじゃ!さすが我の主あるじじゃ。」





みんなが褒めてくるので、照れ隠しにコホンと咳をする。





レ「じゃあ、この調子で攻略を続けるか!」


ヤ・ア「おー!」





その後、黒騎士も出てきたが、おかしな提案をしてくることも無く、アヌビスが魔法で倒した。


5階のエレベーターが見えてきた。





レ「エレベーターが見えてきたな。」


ヤ「じゃあ、そろそろですかね?」





俺達は経験として、そろそろ何か出てくる気がしていた。





ネ「ヒヒッ、お前たちか?私の邪魔をしているのは。」





予想通り、新しい敵が出た。人間の頭蓋骨の様なものがついた杖をもって、ボロボロの布を頭からかぶって目だけ見えるように穴をあけた様な見た目だ。声からして女だと思うが、小さいな。老婆か?弥生にステータスを鑑定してもらうが、鑑定できなかったようだ。鑑定できないなんて初めてじゃないか?





ア「なんじゃ、おぬしは。」





アヌビスは警戒して杖を構える。





ネ「私はネクロマンサーさ。せっかく魔界から持ち込んだ感染ゾンビを倒すわ、マミーを倒すわ、知能を改善した黒騎士を倒すわ。私に何か恨みでもあるのかね?」





この階に来てからの問題は、全部こいつのせいらしい。





レ「そう言われると、恨みしかないが。」





こいつのせいで、感染して死にかけるわ、一騎打ちさせられるわ、臭い思いをするわで一つもいい事は無い。





ア「敵だという事は分かったのじゃ、闇魔法!」





アヌビスは闇の球をぶつける。魔法無効、ネクロマンサーに0ダメージ。





ワ「むっ、まさかその衣は「死者の衣」か?」


レ「なんだ、その死んだ人が着る服みたいなやつは。」


ネ「失礼な!私は死んでなぞいない!」





ネクロマンサーは何がそんなに腹が立つのか、わめいているが無視する。





ワ「魔界でもリッチと呼ばれる高位のアンデットが持っていた物だ。どこに行ったかと思えば、お前が持っていたのか。」





ワルキューレはそういうと、槍を突き出す。物理無効、ネクロマンサーに0ダメージ。





ワ「ばかな!まさかその杖は「死者の杖」か!」


レ「なんだ、その死んだ人が持ってた杖みたいなやつは。」


ネ「お前、ばかにするのも大概にしろ!」





とうとう我慢できなくなったのか、ネクロマンサーは俺を杖で叩いた。零に0ダメージ。





レ「えっ、思ったより弱い?」





ワルキューレはこのやり取りの間に死者の杖の説明をしてくれる。





ワ「魔界でもデミリッチと呼ばれるリッチの中でも最強のリッチが持っていた物だ。どこに行ったかと思えば、お前が持っていたのか。」





デジャブみたいなやり取りだな。じゃあ、このネクロマンサーって物理攻撃は効かないし、魔法攻撃も効かないとか無敵じゃね?





ヤ「魔法が効かないから、鑑定も効かなかったんですね。どうします?逃げますか?」





弥生が言う事も一理ある。パワーアップしたワルキューレの攻撃すら効かないやつと戦ってられるか。

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