第36話 ヘルハウンドとライカンスロープ

ヤ「かわいい!メィルちゃんみたい!」





弥生はアヌビスの頭をよしよしと撫でているが、茫然としているアヌビスは気づかないのかされるがままになっている。思うに追い打ちだよな、それ。転移魔法でメィルが現れた。さすがにこの騒動なら来るよな。





メ「何がありました!ラヴィ様の居ない間に問題が起こると、私が怒られてしまいます!」





若干危機感がずれているが、メィルにも説明を聞いてもらおう。





ワ「アヌビスよ、そろそろなぜこうなったかの説明をしろ。」





ワルキューレはアヌビスの首を掴むと、ぶら下げた。





ア「降ろすのじゃ!説明をするから降ろすのじゃー!」





アヌビスはじたばたと暴れたが、低ステータスになった今、ワルキューレにダメージは無い。





メ「誰ですか、このちみっこいの。」





メィルはアヌビスの胸を見て、自分より下だと判断したようだ。





ア「誰がちみっこいの、じゃ!」





アヌビスは闇魔法を唱えると、闇の球をメィルにぶつけた。メィルに385ダメージ。





メ「がふぅ!?たった1撃でHPが半分近くも!」





いや、神だった時のアヌビスなら1撃で半分どころか何十回も死んでるよ?まあ、2分もあれば全快するだろうし、話を進めてもらおう。





レ「アヌビス、一応説明すると、こいつはメィルと言って女神の見習いだ。俺達の・・なんだろな?保護者とはまた違うし、担当者って感じか?」


メ「メ、メィルです。何があったか分かりませんが、私より強いことが分かったので服従します!」


レ「いや、服従する必要はないぞ。それに今は分裂で再現した分裂体だから、ワルキューレが居れば何とでもなる強さしかない。」


ア「ふんっ、我はアヌビス、惑星アヌビスの神じゃ。」





アヌビスはメィルに攻撃して多少すっきりしたのか、自己紹介はしてくれる。





ワ「では、何があったのか話してもらおうか。」


ア「仕方ないのぉ、我も今すぐ殺されるという訳でもなさそうだしの?」


ワ「それは話の内容次第としか言いようがない。殺さないにしても、コアのままアイテムボックスに封印するかもしれないぞ?」





アヌビスはワルキューレの脅しで「ヒィッ」と言うと俺の後ろに隠れた。どうせ何の壁にもならないがな!むしろ、俺よりアヌビスの方が強いだろ。アヌビスは取り合えず話をしないと始まらないと思い、床に座って話し始めた。





ア「何度も言うようだが、我は惑星アヌビスで神をしておった。我が星の生命体は、朝日が昇ると畑を耕し、暗くなれば家に帰るような生活を送っていたのじゃ。」


ヤ「地球で言うと江戸時代くらいですかね?」


レ「恰好を見るとエジプト文明くらいかもな。」


ア「そこ、こそこそと私語を話すでない!」





俺達はアヌビスに怒られたので、静かに話を聞くことにした。





ア「我はそんなのどかな生活を見守っていたのじゃが、突如異次元から侵略を受けたのじゃ。蝙蝠の様な翼をした軍勢が、家屋を潰し、田畑を焼き、人を斬り、家畜を食べる。我も抵抗し、何千の敵を討ち取ったか分からぬが、侵略者もそこまで抵抗されると思っていなかったのじゃろう、あっさりと退却していったのじゃ。たった数日の侵略であったが、すでに惑星アヌビスは人が住めるような環境では無くなっていたのじゃ。そして、我は仕返しと新天地を求め、その軍勢の後を追うように転移をしてここに来たのじゃ。」


メ「そんな軍勢見たことないので、次元違いじゃないですか?」





まるで人違いみたいに言うが、そういう事なのか?





ア「次元は合っておる。マーキングして居った者がここに来たはずじゃからの。今はマーキングが外れておるゆえ居場所が分からぬがな。」


ワ「昨日、1匹の悪魔を倒したが、おそらくそいつがアヌビスにマーキングされていたやつだろう。その件については、我々も把握している。それで、追いかけてどうするつもりだったのだ?」





ああ、昨日3階に居たやつか。あそこからいろいろと状況が変わったんだよな。





ア「謝罪・賠償させ、惑星アヌビスを治すなら良し、治せなければ領地を奪って移住するというくらいの考えじゃの。」





アヌビスは、一回は追い返した自負があるからか、勝てるつもりで来たらしいな。まあ、実際ワルキューレ並みの強さは持っているようだからな。





ア「まさか、神杖まで使って負けるとはおもわなんだ。この次元の神は強いのじゃな。」





アヌビスは「ふぅっ」とため息をつくと、これで我の話は終わりという風にワルキューレの方を見た。





ワ「話は分かったが、現在上位女神は居ないため、対応できない。報告するまで我々と同行してもらおう。メィルは一応ラヴィ様に連絡を取ってもらえるか?」





メィルは分かりました!と言うと転移していった。





ワ「さて、帰るかと言いたいところだが、敵が来たようだぞ?」





あれだけ派手に戦闘すれば、目立つよな。静かになったから出てきたのか?初めて見るな、黒い狼だ。弥生は鑑定をしている。





ヘルハウンド゛(獣):HP500、MP300、攻撃力80、防御力50、素早さ100+30、魔力20、スキル:遠吠え、魔炎、素早さ補正(中)





ア「どれ、この体に慣れるためにも我が相手をしようかの。」





アヌビスが槍にMPを籠めると、槍状になったが、以前ほどの力は感じない。ヘルハウンドは遠吠えで4匹の仲間を集めると、一斉に口から魔炎を吐いてきた。アヌビスはそれを、槍を回転させて防ぐ。あっちの次元は知らんが、こっちの次元だと槍で防ごうが当たったらダメージは一緒だ。まあ、ダメージは0みたいだが。





ヤ「源さん、新手です!」





弥生が指さした方から、人型のモンスターが近づいてきた。狼男か?弥生が即座に鑑定をする。





ライカンスロープ(獣人):HP800、MP400、攻撃力100+30、防御力70+7、素早さ120+24、魔力30、スキル:格闘術(3)、HP自動回復(中)、装備:ナックル・攻撃力30、皮のズボン・防御力10


格闘術(3)は攻撃力1.3倍、素早さ1.2倍、防御力1.1倍らしい。





レ「こっちはやばいぞ!俺達より確実に強い!」





俺は弥生をかばうように前に立つと、一応ペプシを作る。アヌビスはすでに2匹のヘルハウンドを倒しているが、まだ3匹残っているのでもう少し時間がかかりそうだ。ラカンスロープはペプシに素早く足払いすると、首にナックルで殴る。ペプシに120ダメージ。あっさりとペプシが倒されたのを見て、俺は慌てて次を作り出す。





レ「ユウ、出番だ!」


ユ「お呼びですか?お任せください!」


ヤ「きゃあ、また裸!?」





前回メィルに盗られたのと同様の強さを持つが、新たに作ったために装備が無い。ユウに俺のスラタンを渡すと、ライカンスロープに斬りかかっていった。弥生は目をつぶって目視できなくなったため、援護は不参加だ。





ライアンスロープはあっさりとユウの斬撃を避けると、蹴りを放ってきた。ユウに135ダメージ。ユウはその蹴りを掴むと、足にスラタンを刺した。ライカンスロープに13ダメージ。ユウの残りHP65に対してライアンスロープはまだHP787、それもHP自動回復(中)を持っているから1分で30%のHPを回復する。





ユ「弥生様、お願いします!」





ユウは最後の力を振り絞ってライカンスロープにタックルする。ライカンスロープに13ダメージ。ライカンスロープはユウの顔面を殴りつける。ユウに135ダメージ。ユウは消滅した。ユウの気配が無くなったため、弥生は目を開けたようだ。





ヤ「王子様!うう、これで!」





弥生はライカンスロープに手裏剣を指の間に挟み、投げれるだけ投げる。貫通、倒れたライカンスロープに33ダメージ×8。ライカンスロープは起き上がると、弥生に向かって行ったため、間に俺が入って守る。ライカンスロープは腹にナックルを打ち込んできた。零に80ダメージ。さっきの戦闘のダメージも回復していないので、俺は回復剤を使ってHPを回復した。





レ「これでもう少し耐えることができる!」





ライカンスロープは回し蹴りで俺を吹き飛ばす。零に80ダメージ。ライカンスロープはそのまま弥生に向かって走ろうとしたが、弥生の周りは濃霧の様に暗く、どこにいるのか分からなくなっていた。

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