第22話 オーク肉とオーク
食堂に行くと、今日のおすすめ!と食券機にでかでかとポップが書いてある。
レ「今日のおすすめか。何々、オークのステーキに、オーク丼、オークのチャーシュー麺か。」
ヤ「オークって言うと、豚のモンスターですよね?おいしいんですかね?」
は「おう、うまいぞ!豚よりも濃厚な肉汁と、噛み応えのある肉、それでいて筋は無く、油も丁度いいときたもんじゃ。」
珍しく、注文前にキッチンから顔を見せてきたはじまる様。相変わらずのエプロン姿だ。
レ「じゃあ、俺はチャーシュー麺にするか。」
ヤ「私はステーキにします!いっぱい動いてお腹が空きました!」
俺達はそれぞれボタンを押し、注文を終えると、はじまる様は料理を作りに行った。
セルフの水をちびちびと飲んで時間を潰していると、はじまる様が「料理ができたぞ!」と呼んでくれた。
レ「ふーっ、ふーっ、うん、豚骨仕立てか。」
俺はつるつると濃厚な豚骨スープを絡めた麺をすする。
ヤ「わぁ、ナイフがスッて入ります!牛肉のステーキより分厚いのに!」
弥生はナイフで切り分けたステーキを、フォークで刺すとそのまま食べた。
ヤ「おいしぃです!タレをつけなくても、塩コショウの味だけでご飯がどんどん進みます!」
弥生はばくばくと白飯をかき込み、喉を詰まらせた。あわててみそ汁を飲んで、ふぅと息をついた。
レ「そんなに慌てて食わなくても肉は逃げないだろ。」
ヤ「逃げないとしても、おいしすぎて止まりません!」
俺達はおいしく昼食を食べ終え、食器をカウンターへ返した。
レ「今日はどうする?このまま3階を見てみるか?」
ヤ「そうですね、今後の攻略にもかかってきますし。」
俺達は話しながらエレベーターの方へ向かうと、2階のボタンを押した。
2階のエレベーター横の階段を上り、3階に行くと、さっそくモンスターが見えた。
レ「オークか、昼飯に食ったばっかりだな。とりあえずステータスを見てもらえるか?」
ヤ「そうですね。おいしそうに見えます!」
弥生はじゅるりとよだれを吸う音をさせるが、俺は人型のモンスターにしか見えないため食欲は別にわかなかった。見た目は、多少引き締まった体をしているが、ぴんくの豚を二本足で立たせて、棍棒を持たせ、革の鎧を着ている。
オーク(動物):HP300、MP100、攻撃力40、防御力20、素早さ20、魔力0、スキル:なし
装備:棍棒・攻撃力10、革の鎧・防御力5
レ「下の階で最後に戦ったスライムと大して強さが変わらないな。」
ヤ「そうですね、余裕そうですし、このまま攻略しちゃいますか。」
俺達がオークの方へ歩いていくと、オークが話しかけてきた。
オ「やっと来たか人間ども!男はエサに、女は繁殖用に捕まえてやる!」
ヤ「きゃあっ、しゃべりましたよこの豚!一気に食欲が減退しました!」
レ「俺もしゃべる知能があるのを相手にするのは何か嫌だな。」
俺達はしゃべったのにはびっくりしたが、敵のステータスが低いのをいいことに、まだ余裕な態度を崩さない。
オ「なめやがって!」
オークは急に後ろを向くと、逃げだした。
レ「急に逃げ出したぞ?とりあえず経験値になってもらうか。」
ヤ「そうですね、素早さもこっちのほうが高いので余裕です!」
俺達は、数秒間の相談で追いかける事に決め、十数メートル先のオークを追いかけ始めた。
オ「ちっ、足の速い人間どもめ!」
オークはさらにスピードを上げたようだが、素早さのステータスが俺達の半分以下のため余裕で追いつくことが出来た。それでも、300mくらい追いかけただろうか。
レ「手間をかけさせるなよ、豚。」
ヤ「追い詰めましたよ!」
俺達が追いついたとき、オークは行き止まりの通路に居た。俺達は徐々にオークに近づくと、急にビリッと電気が走り痺れた。そのまま床に倒れ込んだ俺達は、顔だけで周りを確認する。
レ「なっ、魔法スキルは無かったはず・・罠か!」
ヤ「あ、足元に罠が・・追いかけるのに夢中で気づきませんでした・・。」
オ「引っかかったぞ!お前らも出てこい!」
オークが廊下の先に声をかけると、行き止まりに見えた廊下の壁が消え、2体のオークが現れた。
ヤ「源さん、あっちの2体はやばいです!」
ハイオーク(動物):HP500、MP150、攻撃力50、防御力30、素早さ30、魔力0、スキル:なし
装備:斧・攻撃力20、鉄の鎧・防御力15
オークマジシャン(動物):HP150、MP150、攻撃力10、防御力20、素早さ25、魔力80、スキル:幻惑、木魔法(5)
装備:杖・魔力10、皮の服・防御力5
レ「誘い込まれていたのか・・。しゃべるだけじゃなくて知能も高いのか。」
ヤ「幻惑で行き止まりに見せかけていたようですね・・・。」
ハイオークはオークを黄色に塗って筋肉だらけにし、胴体は鉄の鎧を身に着け、斧を担いでいる姿で、オークマジシャンは女性型で、1mくらいの杖を持ち、ゆったりとした服で体形は分からないが、痩せているのだろう。顔も人間が豚の鼻をつけたくらいで、マスク等をすれば人間と区別がつかないくらいだ。
オ「幻惑にかかったようだねぇ、相手の魔力次第で効かないこともあるけど、この人間たちは魔力がそんなに高く無いようだねぇ。」
ハ「頭も良くないみたいだな?こんなにあっさりと罠にかかるとは!」
俺達は馬鹿にしたようなオークたちを見上げる。まだ痺れは取れない。
ハ「おい、オーク、女の方を立たせて捕まえていろ。」
オ「おら、立て!」
オークは、弥生の首を後ろから掴んで立たせる。
ハ「邪魔な服だな。」
ハイオークは弥生の服に斧を当てると、引き裂いた。
ヤ「きゃぁあ!やめて!」
弥生は痺れて動けないため、口では拒絶しているが、抵抗が出来ないようだ。
レ「やめろ豚ども!」
俺はオーク達をにらみつけるが、動くことは出来ない。
オ「うるさいねぇ、あんたは死ぬんだよ!」
オークマジシャンは木魔法で木の根の槍を作り攻撃してきた。零に69ダメージ。そして、俺の持ち物を漁るため、カバンの中身をぶちまけた。
ハ「ちっ、この鎖みたいな服は固いな。」
ハイオークは、弥生の鎖帷子を破壊するのに苦戦しているが、下はすでに下着姿になっている。白のレースか。一瞬弥生から殺気が飛んできたが、それはオーク達に向けてほしい。
ハ「めんどくせぇ、下から脱がせるか。」
ヤ「それだけはやめて!お願い!」
ハ「こんな布を付けてたら邪魔じゃねーか。」
ハイオークが弥生のパンツを脱がせようとしたとき、俺のカバンの中身が目についた。
レ「帰還の巻物使用!弥生も一緒にフロントまで!」
俺はとっさに帰還の巻物を使用すると、一瞬でフロントに戻ってきた。俺達はまだ痺れがとれず、床に這いつくばっていると、上からラヴィ様の声が聞こえた。
ラ「そんなところで寝ていられると、他のお客様に迷惑になります。」
ラヴィ様はそう言うと、俺達の状態異常を治してくれた。
ヤ「た、助かりました・・、けど、こっち見ないでください!」
弥生は空間魔法で新しい服を取り出すと、サッと着替えてしまった。
ヤ「さっきは痺れてて空間魔法から帰還の巻物を取り出せませんでした・・。」
レ「罠の存在を忘れていた。今度から気を付けよう。」
ヤ・レ「はぁっ・・。」
今回痛い目に遭ったな。豚に襲われるなんて、弥生にとっては死ぬよりもトラウマになりそうだからな。俺は購買に寄って帰還の巻物を買い直した。
レ「魔法を使う敵に、戦闘力が高いオークか・・。」
ヤ「今度会ったら必ずぶち殺します!」
弥生が決意を新たに、殺気を放っていた。
俺達は一旦2階層に行くと、スライムのコアを集めた。スライム狩りの最中、弥生が思いついたように言ってきた。
ヤ「源さん、ちょっと試したいことがあるので、分裂体の塊を作ってくれませんか?」
俺はMPが回復すると塊にして弥生に渡した。そろそろ夕方になるので、俺達はダンジョンを出てビジネスホテルに向かった。出迎えてくれたサーベラスを撫でていると、ケルベロちゃんが歩いてきた。
ケ「おかえりなさいませワン。」
レ「ああ、ただいま。今日は3階層の攻略も行けるかと思ったけど無理だったわ。」
ケ「オークにやられるようじゃ先が思いやられるワン。」
レ「そう言うなよ、油断したというか、あんなに人間っぽい奴らだと思わなかった。」
ヤ「それにエッチでした!最悪でした!もう許しません!」
弥生は憤慨すると、しゅっしゅっとシャドウボクシングをしている。
ケ「オークはメスなら誰とでも子を作れるワン。生まれてくるのは必ずオークだから、生まれたら焼くワン?」
ヤ「生まれませんよ!?ぎりぎり大丈夫でしたから!」
ケ「そうですかワン。それでは今日の夜はオークのステーキにしますかワン?」
ヤ「わざとですか!今日のお昼にもう食べました!」
俺はケルベロちゃんにからかわれている弥生を生暖かい目で見守った。
ケ「それでは、料理が決まりましたらフロントまでコールして下さいワン。」
言葉の応酬が終わったのか、ケルベロちゃんは俺にそう声をかけて部屋の鍵を渡してくれた。
部屋に入り、料理を頼んだ。俺は刺身の盛り合わせ、弥生はマルゲリータピザと、オークに全く関係なさそうな料理にした。
料理を食べ終わると、弥生は試したいことがあるとさっさと部屋に帰り、俺は特にすることも無いので、ケルベロちゃんに雑誌を取りよせてもらって暇を潰した。余ったMPは一応分裂体にしておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます