第12話 分裂の応用

レ「昨日の夜考えていたんだけど、俺達はゴブリン程度の攻撃ならもうほとんどダメージを受けることは無いし、注意すべきは罠だけだ。」


ヤ「そうですね、私たちは魔力が低いので、魔法ダメージはほぼそのまま受けちゃいますし。」


レ「そこで、分裂スキルに知能を与えてみようと思う。分裂!」





俺はMP20くらい使って、上半身だけの分身を作った。





レ「はいよる君だ!ひたすらほふく前進だけする上半身をイメージして作った。最初は足だけ作ろうと思ったけど、裸の下半身とか嫌だろ?」


ヤ「裸の上半身だけなのも嫌ですけど、下半身だけよりはマシですかね・・。」





弥生は漫画であれば顔に縦線が入るような表情をしつつ、ひたすらほふく前進をする上半身を見ていた。分身は、壁にぶつかってもひたすら直進しようとするので、位置を直すのが面倒くさい。失敗か?でも、せっかく作ったししばらく様子を見るか。俺達は分身の後をついて行って、位置を修正しながら進んだ。角を曲がったあたりでゴブリンが現れ、上半身だけの分身を見て一瞬ぎょっとしたようだが、普通に攻撃してきた。分身に8ダメージ。分身は消滅した。





レ「罠にかかる前に普通にやられたな。」


ヤ「そうですね、それに弱すぎませんか?」


レ「確かにな。ダメージからみて防御力2しか無いようだな。ステータスは見たか?」





会話しながらもゴブリンを倒し、コアを拾った。





ヤ「いえ、そもそも見たいとは思わなかったので見ていません。」


レ「じゃあ、今度はもう少しマシなやつをイメージして作ってみるか。分裂!」





俺はMP20を使って今度はある程度自分で判断できる知能をもつようにイメージしてみた。イメージはペプシ〇ンだ。イメージしやすかったからか、単なる慣れかわからないが、自分以外のイメージでもある程度作れるようになったみたいだ。MPが少ないからか、大きさは1mくらいだが、命令を待つように待機している。





ヤ「うーん、水色のペプシ〇ンはまずいので、スパイダー〇ンカラーに変化!」





いや、それもどうかと思うが、分身の色が赤黒のネット模様になった。





ヤ「ステータスは、HP20、MP0、攻撃力5、防御力5、素早さ4、魔力0ですね。」


レ「イメージが良かったのか、さっきのやつよりはまともだな。よし、分身よ、色の違う床や、他と違うところを見つけたら教えてくれ。」





分身はなんちゃって敬礼をするとほふく前進で調べていった。会敵したゴブリンはすべて弥生が投擲で倒し、俺はコアを拾いながらマッピングをしていた。投擲の材料は俺がMP2で作った。2時間ほど進んだろうか、分身がほふく前進をやめて立ち上がった。俺達の方を向くと、床を指さしている。分身を作るのに慣れたらしゃべれるようにしたいな。





レ「青色の床か。昨日は赤でファイアーだったから、これはアイスってところか?」


ヤ「鑑定眼鏡で見ても、罠としか出ませんね。何か投げてみますか?」





俺は弥生にMP1で1センチの立方体を作って渡した。弥生は分裂体に変化をかけてクナイ型にすると、投擲で床を攻撃した。床に刺さったクナイは急に凍結し、砕けた。





レ「よし、この調子で罠を解除しながら進むか!」





俺は再び分身に罠を探すように命令し、ダンジョンを進んだ。それから2時間ほどして十数回の戦闘をこなし、数個の罠を回避してエレベーターを思われる場所に着いた。





レ「これが1階のエレベーターか?」


ヤ「そうみたいですね、眼鏡にもエレベーターと出ています!」





俺はマップにエレベーターの位置を書き込むと、エレベーターのスイッチを押した。これで記録されたはずだ。





レ「さっそく使ってみるか?時間もそろそろ12時だし、戻って飯でも食うか。」


ヤ「そうですね、そういわれるとお腹が空きました!早く帰りましょう!」





俺達はエレベーターに入ると、「フ」と書いてあるボタンを押した。おそらくフロントだろうと予想をし、動いた感じはしなかったが扉があくと見慣れたフロントだった。そもそも上下に動いて1階からフロントまで行けるわけないから、実質ドコでもドアみたいな転移方式か。2階のエレベーターの位置も1階の真上ってわけじゃなさそうだな。





ラ「おかえりなさいませ。1階クリアおめでとうございます。眼鏡は役に立ちましたか?」


ヤ「確認がとりやすくて便利です!まだアイテムの鑑定とかはしていませんが、賢くなった気分です!」


ラ「それはよかったです。これで1階とフロントを自由に行き来出来るようになりました。この後どうしますか?」


レ「お昼を食べてから、2階に挑戦しようと思います。ゴブリンは余裕で倒せるようになったので。」


ラ「分かりました、それではまた後程。いってらっしゃいませ。」





ラヴィ様はお辞儀をして食堂に行く俺達を見送ると、フロントに戻っていった。





ラ「ところで、この人形は何でしょうか?」





俺達はスパイダー〇ンカラーのペプシ〇ンをエレベーターに忘れたままだった。


俺達は食堂に着くと、さっそく注文することにした。





レ「俺は今そんなに腹減ってないから月見うどんでいいや。」


ヤ「私はほどほど動いてお腹が空いたので、山盛りのチャーハンにします!」





俺達はそれぞれ食券のボタンを押すと、席に着いた。





は「おまちどう!月見うどんとチャーハンじゃ!」





はじまる様がキッチンから料理を持ってきてくれた。そういえば、ここでは料理の取り寄せはしてないのだろうか?ケルベロちゃんと違い、はじまる様はしっかりと作っているようだ。それとなく聞いてみると、「単なる趣味じゃ!」と答えてくれた。





だったら、特別ルールはラヴィ様が料理しないことと関係なさそうだな。料理できなくてもケルベロちゃんみたいに取り寄せればいいだけだしな。俺達は雑談しながら料理を食べ終えると、食器を返却し、はじまる様にごちそうさまを言うと、購買に向かった。





購買にはすでにラヴィ様が待機していた。アイテム数が増えていたけど、今回は、鑑定眼鏡もあるので、ラヴィ様にアイテムの説明をしてもらわなくても何とかなる。








レ「今回はこれにしよう。」





俺は一つの巻物を取ると、弥生に渡した。





ヤ「帰還の巻物ですか?ピンチになったら帰るためですか?」


レ「それもあるけど、一番の問題はトイレだ!エレベーターに着くまで4時間!ダッシュで行って敵を無視しても1時間はかかるだろ?入口とエレベーターの真ん中の時とか困るだろうと思ってな。」


ヤ「そういわれれば・・、今まではそんなに長くダンジョン内に居ることも無かったですけど、これからもそうだとは限りませんし!でも、分裂と変化でなんとかなりそうですけど?簡易トイレを作るとか。」


レ「た、確かに。でも、MPもいつもあるとは限らないし・・?」





そういわれて俺は必要性が下がった感じを受けた。でも、何回も入るダンジョンの廊下にトイレした後が分かるのも嫌だろ?





ヤ「まあ、他に買えそうなものも無いですし、ピンチになったときには使えるので買っておきましょう!」





俺達は、今回の冒険で手に入れたゴブリンのコアの大半を使って帰還の巻物を2枚買った。これって一人1枚使うのか?





ラ「トイレはところどころにありますよ?きちんと男女別れていますし、水洗です。あと、帰還の巻物は半径2m以内に居て、使った人が連れていきたいと思った人も一緒に戻ってこられますよ。」


レ「相変わらず心を読むんですね?でも、一応ばらばらになったときのために一人1枚ずつ持つことにします。」





俺達は購買を後にすると、エレベーターに向かった。忘れていた分身と一緒にエレベーターに入ると、1階のボタンを押した。


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