第4話 スキル練習とステータス

レ「とりあえず、自分の分身を作るイメージで・・分裂!」




俺は立ち上がると、某漫画の忍者をまねて、印は適当に組んでスキルを使用するイメージをする。すると、俺の体の輪郭がぶよっとして俺と瓜二つの分身が目の前に作れた。ただし、全裸で。




ヤ「きゃーー、源さんのエッチ!変態!」




弥生は、某猫型ロボットの源さんがお風呂を眼鏡の子に見られた時と同じようなリアクションで、いつの間にか握っていたクナイで分身を刺した。ダメージ2。刺された分身はあっさりと消滅した。この分身のHPは2以下で防御力は1か・・。




あのクナイ、プラスチックの偽物っぽいし武器攻撃力を1として計算してだが。




レ「ご、ごめん。まさかこんな結果になるとは・・。」


ヤ「い、いえ。びっくりしただけです。そういえば、スライムってよく考えたら服なんて着ていませんよね・・。」




仮にスライムに服を着せたとして、その状態で分裂したらどうなるかは分からないが、おそらく今と同じ状況になるだろう。今度は、きちんと服を着たイメージで自分の分身を作ってみるか。




レ「今度は、スーツを着た姿の俺をイメージしながら・・分裂!」




しかし、スキルに慣れていないせいか、今度の分身も全裸だった。




ヤ「も、もう!わざとですか!そんなに裸を見せたいんですか!」




今回弥生は、いきなりクナイで刺すことなく、赤くなりながら後ろを向いた。うん、MP使うしもったいないからできれば攻撃しないでほしい。




レ「ごめん、わざとじゃないんだけど。一応スキルの確認をするからしばらく後ろを向いていてくれるかい?」




俺は一応分身を後ろに隠し、後ろを向いたままの弥生にそのままでいるようにお願いした。そして、分身の方を向き、確認する。




レ「見た目は俺と同じだが、動かないな・・。イメージが足りないのかMPが足りないのか、中身もスカスカっぽくて触れると風船みたいだ。」




今回使ったMPは1。1だから密度が無くてスカスカなのかな?もう少し試してみよう。今度はMP量を増やし、10分の1フィギュアを想像しながら右の掌の上に現れるイメージをした。




レ「10分の1の俺、分裂!」




すると、今度は掌の上にぶよぶよとした物体が、プラスチック並みの強度を持った人形の様になった。MPを込めてやれば密度が上がり固くなる事が分かった。




レ「やった!弥生、固くなったぞ!」




俺はフィギュアっぽい俺を握りしめて弥生の方へ向けた。呼ばれた弥生は、振り向いた。




ヤ「固くって・・、キャー!どこを固くしたんですか!変態!」




弥生は俺の後ろの分身を見たようで、クナイを投げて破壊した。クリティカル発生、6ダメージ。うん・・どこかの急所に当たったようだ、どこかは分からないけど・・。それにしても投げるのうまいな・・。




レ「ち、ちがう、このフィギュアだよ。」




俺は一応人形の下半身を掴んで上半身しか見えないようにして弥生に見せた。弥生は顔を赤くしながら俺の右手の方を見た。そして、人形の頭をつんつんしている。




ヤ「あ、こっちでしたか。確かに固いですね、プラスチック人形みたいですね。」




かわいい女の子が自分そっくりの人形をつんつんしているのを見て、俺もちょっと照れた。




レ「じゃあ、今度は弥生のスキルを試してみようか?確か変化だったよね?」




俺は人形をコートのポケットにしまうと、そう言った。




ヤ「触れたものを変化させる・・。うーん?」




弥生はイメージが浮かばないのか、腕を組んで首をひねっている。




レ「じゃあ、羽を作ってみるとかは?メィルみたいに背中に羽がある!ってイメージするとかどう?」




俺はメィルをみた後だからか、ふと、そういう発想が思いついた。




ヤ「分かりました、やってみます!背中に羽~背中に羽~変化!」




弥生は、目をつぶり集中力を高めながら、胸に手を置いて変化と唱えた。すると、弥生の背中には天使の様な真っ白い羽が生えた。




ヤ「できました!羽と言ったらやっぱり天使ですよね!」




弥生は首を回し、自分の背中に羽が生えていることを確認した。うん、両手を胸の前でグーで握っているから今のところ大丈夫だけど。俺はゆっくりと後ろを向いた。Dくらいか?




レ「喜んでいるところ悪いんだけど、ちょっと服の方を確認してもらえるかな?」




弥生は後ろを向いた俺を見て首を傾げ、不思議そうに自分の服を見る。




ヤ「服ですか?・・て、キャー!わざとですね!やっぱりわざとこうなるように誘導したんですね!」




弥生の服は、羽になった体積分が減っていて、上半身裸になっていた。弥生は胸をガードしながら後ろを向き、「戻れー、戻れー」と唱えた結果、元の服に戻った。




ヤ「はぁ、はぁ、一応確認しますけど、本当にわざとでは無いんですよね?」




俺はいつの間にか壁際に追い詰められ、クナイを握った弥生に詰め寄られていた。




レ「本当の本当にわざとじゃないよ!ごめん!だから、クナイでは刺さないで!」




俺のHPは3、クリティカルを受けたら死ぬ!




ヤ「わ、分かりました。今回までは信じます。次やったら、刺しますよ?」




弥生はにっこりと両手でクナイと持つと素振りする。俺は冷や汗をかきながら、ぶんぶんと首を縦に振る。しばらく息を整えて、再度冷静にスキルについて話し合う。




レ「俺の分裂はMP使用量によって大きさや固さを変えられるようだ。知識の譲渡はまだできないけど、後々慣れたら出来ると思う。そして、弥生のスキルは変化させる体積分の物質が要るようだな?」


ヤ「そうですね、あの時胸に手を当てていたから、羽に必要な分だけ服が変化してしまったようです。ふふっ、思い出したらいろんなイメージが・・。」




弥生は、さっきの恥ずかしい姿を思い出したのか、偽クナイを左手でなぞると、本物の包丁に変えていた。再び包丁をなぞると、今度はアイスピックになった。元の偽クナイに戻すと、にっこりと俺の方を見た。




レ「それは、うん、ごめんなさい・・。さ、さて、これを踏まえてここから帰る手段を検討しようか。」




俺の特技はMPで分裂体を作り出す、弥生はMPで物体を変化させる・・。制限がどの程度あるか分からないが、とりあえず試してみるか。俺はコートのポケットからさっきの人形をちゃんと下半身を握った状態で取り出すと弥生に見せる。




レ「もしかして、この人形を変化させられないか?」




俺はさっきプラスチックっぽいクナイを包丁に変えているのを見て、同じくプラスチックっぽい人形になった俺の分裂体も変化させられるんじゃないかと考えた。




ヤ「この人形をですか?生物って変化させられるんですかね?」




分裂体が生物かどうかはわからないが、弥生が半信半疑で触れた人形はみるみる小さくなり、金属っぽい水色の鍵になった。




ヤ「そこのドアノブを見てたら鍵のイメージが浮かんだので・・。」




俺はとりあえず鍵になった分裂体をドアノブに差し込もうとするが、さすがに適当に作っただけの鍵が合うわけがなかった。でも、それでいいならと思い1階の扉の前に移動した。




MPが全快になるまで休み、MP全てを使うイメージで「分裂!」と唱えると、分裂体を右手から生み出す。イメージに慣れてきたのか、金属並みに固い10㎤の塊として生み出すことに成功した。




レ「弥生、これを武器に変化させてくれないか?短刀か柳刃包丁みたいなイメージで。」




俺は塊を弥生に渡した。感覚的に鉄の塊っぽい感じがするから、それなりの武器になるだろう。




ヤ「分かりました!じゃあ、短刀に変化!」




弥生が変化を使って作った短刀は、水色の短刀になった。とりあえず、スライムの分裂を使った短刀、略してスラタンとでも呼ぼうか。




こうして、護身用の武器、スラタン(攻撃力10)を手に入れた。そして、さっきの鍵に変化させたやつを鞘に変化させてもらった。抜き身は危ないしな。




レ「それと、これはどうやって使うんだろうな?」




俺はポケットからスライムのコアを取り出して、てのひらで転がした。




ヤ「飴玉ですか?丁度おなかが空きました、頂いてもいいですか?」


レ「あっ」




俺が返事をする前に、ひょいとスライムのコアをつまむと、弥生は口に放り込んだ。




レ「ちょ、吐き出せ!」




俺は慌てて弥生を怒鳴ると、弥生はびっくりしたのか、スライムのコアをごっくんと飲み込んだ。




ヤ「ごほ、ごほっ!びっくりして飲んじゃったじゃないですか!飴玉一つくらい、いいじゃないですか!それにしても、何の味もしませんでしたが、何味の飴ですか?」




弥生は胃に違和感を覚えるのか、胸をトントンと叩いている。




レ「それは飴じゃなくてスライムのコアだ!女神様がスライムのデータを圧縮した物だ。どんな効果があるかも分からないのに・・。」




俺はあえて死体とは言わないようにした。俺がそう言われたなら、即吐き戻すからだ。そんな汚い事になりたくはない。




ヤ「えーっ、そうだったんですか!でも、特段変わった様子は無いですが・・。あ、なんかステータスを上げられるみたいです!」




弥生はそう言うと、俺には見えないステータス画面を見ているようだ。スライムのコアを消化して経験を得たとかか?




ヤ「えっと、ステータスが5、割り振れるようです。HPに1振るとHPが10、MPには振れなくて、攻撃力、防御力、魔力、素早さは1振ると1上がるみたいですね。」




弥生は、ステータスのプラスマークとマイナスマークを押してステータスの変化を見てみた。




レ「とりあえず、即死が怖いし、逃げるが勝ちってときもあるだろうから、HPか防御力、素早さ辺りに振ったらどうだ?まだ魔法も無いし。」


ヤ「そうですね、今のHPだと怖いので、HPに2、防御力に1、素早さに2振ります!」




弥生はステータスを割り振ると、決定ボタンみたいなところを押してステータスを確定した。確定するときに見たステータスを、偽クナイで壁にがりがりと書いてもらった。




形無弥生:HP22、MP35、攻撃力2、防御力3、素早さ6、魔力1




何気にMPも5増えていた。MPにはステータスを振れないと言っていたから、他に理由があるのだろう。まあ、後々わかるか。あとは、どうやってここから出るかだが。




少しMPも回復したようで、鍵穴に指先からMP2くらい使って分裂体を突っ込んでみる。




レ「弥生、この分裂体をそのまま固める事はできるか?」




弥生は鍵穴から少し溢れている分裂体に触れると、「変化!」と唱えた。弥生が指を離すと、分裂体は金色の鍵になっていた。




レ「よし、このまま回してと。」




いいなこのコンボ、俺が材料を出して弥生が製造する感じで。ガチャリと鍵が開き、非常階段の扉を開いて俺達は再び1階へ足を踏み入れたのだった。


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