肌は乙女の命! パーフェクトスキンガード
そこからは激しい魔法の壮絶な打ち合い。迫り来る紅蓮の炎を聖なる障壁で防御、巨大氷結魔法や炸裂魔法を撃ちあいます。
魔王は分が悪いとみたのか、虚空から太刀を呼び寄せ構えます。
火の魔王の愛刀、紅蓮刀。
「水着なのに傷一つつかないとは!」
「これは絶対素肌防御! 肌は乙女の命ですからね!」
英語風スキル表示にするとパーフェクトスキンガードです!
日焼けもしないので、日焼け跡が好きな殿方には申し訳ないですが! 日焼けのあとのケアが大事なのでこの絶対素肌防御は手放せません。
私も同じく虚空から三つ叉の戟、海神の槍を呼び寄せます。これもガチャのLR。レジェンド級の武器です。
海神の槍を両手で構えます。
凄まじい早さの踏み込みをみせる魔王。私は身体強化魔法を限界まで自分にかけてます。見える! 対応できる!
数度打ち合い、お互い間合いを測ります。
彼は斬撃と見せかけ突き、私は突きとみせかけ払い、お互い様々な手を駆使し相手を見定めています。
この全力を出せる相手こそ――火の魔王の魅力。今死んでも私に後悔はありません。
火の魔王は上段の構え、火の位と呼ばれるその構えは彼に相応しい、小細工なしの必殺剣。
私は水平に構え、タイミングを図ります。
来る――神速の斬撃を流れ私は刹那で見切り、海神の槍を合わせて振るう。
「なんだと!」
三つ叉の槍の、刃の間で受け止めます。これが私の全身全霊――
「き、貴様の狙いはまさか!」
念願の再会相手の顔が驚愕にゆがむ様はいいものです。
紅蓮刀を挟んだままの槍をそのまま巻き込むようにねじります。
魔王が全魔力を放出し、私も対抗するために全魔力を槍に込め、純粋な魔力勝負となり――私が勝ちました。
槍を限界までねじり、紅蓮刀をへし折ることに成功しました!
呆然としている魔王は私をみて、こう告げました。
「降参だ」
「早くないですか」
他に武器はあるはずです。魔王なのだから。
「愛刀が折られた。我は浮気する主義はないのでな。他の武器を使う気にはならん。お前の勝ちだ」
「わかりました」
私も槍を下ろします。浮気しない主義はポイント超高いです! って何はしゃいでいるの、私。奥さんいたら泣くのは自分ですよ、と言い聞かせる。
って何奥さんんとか考えているの。ダメです。落ち着きなさい、私。
格闘戦や予備の武器を持ち込むことも可能でしょう。
火の魔王自体にダメージはありません。手加減してくれたのでしょうか。
こうみえて格闘戦は自信ありなので、そちらでもよかったのです。
水着は格闘スタイルにとても相性が良かったのです。
「賢者よ」
「はい」
火の魔王の問いかけに応じます。
「お前は強い。何故そこのような雑魚どもの仲間になっているか理解不能なほどにな」
「火の魔王に褒めていただけるとは恐縮です」
謙遜してみた。敵は数百年年生きている魔王。私は16。かの魔王には小娘にしか見えないだろう。
「会ったことがあるかな? 貴様とは」
「三百年前に少々」
「ふむ…… やはりお前はあの時の魔法使い」
「わかりますか?」
「すぐにわかったぞ」
この胸の奥からこみ上げる嬉しさはなんでしょうか。
「オーラが同じだ。あの時は我が勝ったな。ということは実質400歳近いのか」
「16です!」
実質も何も16歳です。前世はノーカウントしてください。お願いします。
思わず凄い殺気が漏れてしまいました。
「すまぬ。16歳だったな!」
あ、察してくれた! やっぱり火の魔王――いいなあ。
「はい!」
勢いよく返事してしまう私。チョロインの資格ありでしょうか。なんてね。
前世の私は初老の魔法使いだった。当時は50歳近くだった気がする。
そのときはこの火の魔王に倒された。リベンジを誓い、転生した。恨みでは無く、もう一度逢いたくて。
こんな形でしか私は交流できないから。
転生して神官の職に就き、攻撃魔法と奇跡系魔法、いわゆる回復魔法を極め、賢者の資格を得たのだ。
魔法使いの魔法の再所得が必要ないのは楽だったのです。
決してズルではないのですよ。
あの時は敗北した。
今度は――多分私一人でも勝てる。
なぜなら水着を着ているからです!
意味がわからない? でしょうね。私もわかりません。
賢き者にとっての不覚です。
これは神代の聖なる水着ともいえるもの。特別な力があるのです。原理とか聞かないでください。私もうさんくさいと思ってます。
スタイル的なコンプレックスはないですが、やはり少々場違いというもの。自覚はしているのです。
TPOはあえてわきまえないのです!
「問おう」
来た。この魔王は話がわかります。交渉でしょうか。
私はまた、この魔王に会いたかった。
なぜだかわからないけれど、本当に――逢いたかった。
「なんで水着なのだ?」
「そこなのですか?!」
驚いた。魔王たる者が、人間如きの姿を気にするなどと……
やめて!
真顔で指摘されると、とっても恥ずかしいから!
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