第7話<シーラの噺2> かぐやひめ
今回お話するシーラの話は、よく見聞きする物語と重なる部分があるので、ちょっと比較でタイトルにさせてもらいました。
もしかするとこっちが本当の話?みたいな錯覚を私は起こした覚えがあります。まぁ、話の内容は実際の物語とはかけ離れてますが。
室町時代、平安時代に編纂されたと思しき「竹取物語」。
作者不明といわれるこの話よりもっと昔に。
シーラは「かぐやひめ」を体験しているそうです。
この「かぐやひめ」の意味は「かがやくひと」。
しかも、その姿は女性ですらないよう。
シーラ曰く、それは神様=創造主なんだそうです。
『一番はじめはね、私、石だったの』
シーラは少し暗い顔で話しだしました。
『世界には何もなくて。銀色の人みたいなものが降りてきて・・・』
そこから、生物が現れ始めるんだそうです。
シーラも、いろんな姿にされて様子見されていたのですが、どの姿になっても、だめだだめだとやり直しをさせられたそうです。
なぜなら、シーラには生存競争に勝とうという意思が全くない生体だったからです。
生存競争に生き残れない生は生きていけず、シーラはすぐ死んでしまう人生を繰り返していきます。
彼女曰く、みんな仲がいいのがよかったから・・・と言っていましたが、おおよそ、野生の生き物にそれはふさわしくない姿だったでしょう。
神は悩みました。
シーラがなんの生き物になったら彼女が生き抜こうという意思が生まれるのだろうと。
そうこうして時代は変わり、動物が現れ始める頃、ようやく彼女の最初の入れ物が定着します。
それが、石でした。
神は、ついにしびれをきらして石の中にシーラの魂を入れます。
こうすれば、もしかすると動きたい、生きていたいと変わってくれるであろうと。
すると。
神の意図とは別に、シーラは石の人生を満喫し始めます。
『そしたらね、みんなが私のところに来て、色々お話してくれるの』
石になったシーラの元には、様々な生き物が彼女の元に集い、その日あったことや、他愛ない話をしに来てくれたそうです。
だから、シーラはその話を聞いてるだけでひたすら楽しく、石でいることが楽しくて仕方なかったようです。
が、これは神の怒りを買います。
こんなはずじゃなかった。
神は、石を蹴りつけ、割ってしまいます。
蹴りつけられ、ヒビが入った時点で、石の生命、シーラの記憶はそこで終わっています。
その蹴りつけた神が、シーラ曰くオオクニヌシだそうです。
え?と思った読者諸君、あなたは間違ってはいません。
なぜなら、オオクニヌシは優しく、とても温厚な神とされているからです。
ですが、シーラの語るオオクニヌシは、今語り継がれるオオクニヌシのイメージを大きく塗り替えてしまいます。
読者諸君、ここで思い出していただきたいのは、序盤の家族紹介です。
あの話をしたわけは、シーラの語る人物が、私の家族に似通っていたからです。
シーラの語るオオクニヌシは。
私の父の性格そっくりでした。
彼は万物を作ることができ、気が短く、今で言う競争社会を作り上げようとしました。
彼は、シーラに生存競争の中で生き残ってほしかったのです。
が、シーラはいつも思惑と違う動きばかりする魂で、いつも彼はシーラを見て腹を立てていたといいます。
その他の昔話の話もシーラが話してくれる話は、今我々が親しんでいる昔ばなしとは全く違う話で、彼女はその話を淀みもなく語ってくれました。
その中には何度もオオクニヌシ、イザナギ、スサノオがでてきます。
彼女の語る物語に出てくる登場人物は、だいたい決まっていて、生き物や人物に、それぞれの神々が化けてシーラをやっかんだり殺したり、はたまた助けようとする。
そんな話ばかりでした。
自分の頭がおかしくなったのかとも思いましたが、シーラの語る話は、私では到底想像できる話ではありませんでした。
古典の世界と彼女はつながってるのか?と何度も歴史を振り返りたくなったのは無理からぬ話だったわけです。
そしてまだまだ驚かされたのが、「かぐやひめ」は元々シーラが話してた話が本当だということ。
作者不明といわれますが、もとをたどるとシーラに行き着くというのです。
また、古事記を作ったのもシーラだというのです。
「え、じゃぁ、古事記・・・本居宣長って・・・」
『そうだよ。私だよ。でも、オオクニヌシが全部書き換えちゃった』
シーラは記録をつけるのが好きで、起こったことを生まれ変わった時に綴ることを好んでやっていたようです。
つまり、彼女は自分の過去世をすべて覚えて記録をつけていたことになります。
が、その記録はすべてオオクニヌシによって書き換えられてしまったというのです。
シーラが書いた記録のオオクニヌシは、悪いことばかりしていますが、それをこっそりいいように後でオオクニヌシが改ざんしていた、ということになります
。
『だからぜーんぶ違う話になっちゃってるの』
彼女は大層残念そうでした。
こうして彼女はこの後も何度と無くオオクニヌシに殺されたりスサノオに救われたりして生きたり死んだりを繰り返すのです。
バカバカしいばかりの話ですが、聞いたあの当時は私にはシーラの話が半信半疑でも大層おもしろく、愉快でたまらなかったものです。
あの父が?
あの母が?
そういう役割???
今となっては妄想の世界の話。
でも、全てが嘘なのかといえば、それは今でもわからない。
本居宣長の話をはじめ神様の話もだいぶ怪しいのですが、これが、シーラの語ってくれた物語、1つ目です。
余談ながら、シーラが本当に本居宣長だったなら、きっと彼女は私のときのように、本居宣長の意識に重なっていたのかもしれません。
シーラがそういう意識体なら、色々な生き物に生まれ変わり、自分の過去世を覚えていることにも納得がいくような気がするので、最近はそんなふうに考えています。
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