愛情!独力!貪利!愛憎渦巻くトレジャーハント⑦

「環さん大丈夫か?」

 保健室に着いた俺たちは、環さんをベッドに横たわらせて休ませる。

「……はい。だいぶ落ち着いてきました……」

 そう言う環さんの顔色は先程よりもだいぶ良くなっていた。

「……本当にごめんなさい……。……私、昔から人混みが苦手で……」

 またしても申し訳なさそうな顔で環さんは謝る。

「なーに。俺たちはもうパートナーなんだ。迷惑なんてかけあってなんぼだよ」

 環さんの頭を撫でながら慰める。

「……ありがとう……ございます」

 頭を撫でられて少し落ち着いたのか、笑顔を見せて安心したような素振りを見せる。

「なんだかこうしていると、一年前にも似たような状況があったような気がするな……」

 昨年にも保健室で誰かを介抱したような記憶がある。

「……!……恋次さん覚えて……」

 環さんが驚いたような表情を浮かべてこちらを見てくる。

「環さん、どうし──」

「さっ、恋次。必要な物買い揃えてきたし、そろそろ謎解き始めるわよー」

 たんだ、と聞こうとした矢先に飲み物などを買いに行っていた火燐が戻ってきた。

「おー、火燐。ありがとな」

 お礼を言って火燐から飲み物などを受け取る。

「ほら、環さん。飲み物や軽食を摂って体力を回復させなきゃ」

 ペットボトルやサンドイッチなどを手渡そうとする。

「……むー……」

 しかし何故か環さんは不機嫌そうな顔をして受け取らない。

「あ、あのー……。環さん? 一体どうしたんですか?」

 先程まで普通に話していた環さんが不機嫌になっていることに焦った俺は、思わず敬語で話してしまう。

「……せて……」

 環さんがボソッと何かをつぶやく。

「え?」

 聞き取れなかったので思わず聞き返す。

「……食べさせて……!」

 怒った表情で、なぜか変なことを要求してきた。

「そ、それぐらいお安い御用さ……?」

 環さんの勢いに圧されて謎の口調で了承してしまった。

「……あーん……」

 俺の返事を貰うと、すぐさま口を開けて待機状態になる環さん。

(これは一体どういう状況なんだ……!)

 あまりの展開の早さに頭が混乱してしまう。

 なぜ環さんが不機嫌になったのか、どうして俺が環さんにご飯を食べさせなければならないのか。

 何一つ理解ができないまま事態が進んでいく。

「……(チラッ)」

 俺が戸惑っていると、環さんがこちらをチラりと見て催促してくる。

(やるしか……ないのか……!?)

 近くにあったサンドイッチを手に取り、環さんに向き直る。

「あ、あーん」

 意を決して環さんの口元へ食べ物を運ぶ。

「……あむっ」

 俺が差し出したサンドイッチを環さんはその小さな口で咀嚼する。

(な、なんで俺はこんなにドキドキしているんだ……!)

 ただ食べ物を差し出して食べさせているだけ。

 たったそれだけのことなのに、目の前の女の子から目が離せないほど釘付けになっている。

「! ……ケホッケホッ……」

 環さんに見とれていると、喉に詰まったのか環さんが咳をする。

「環さん大丈夫か? ほら、水でも飲みな」

 環さんにペットボトルを渡そうとする。

「……飲ませて……」

 しかし環さんはペットボトルを受け取らずに俺の元へと突き返す。

「……え?」

 思わず聞き返す。

「……飲ませて、恋次さんの口から直接……」

 頬を赤らめながらとんでもない要求をしてきた。

「は、はぁ!? い、いやさすがにそれはマズいというかなんというか……」

 いきなりとてつもない難題を押し付けられた俺は焦って呂律が回らなくなる。

「……ダメ……?」

 可愛らしくおねだりをしてくる環さん。

 その姿はまるで小動物のような愛らしさが溢れている。

「ダメというわけではないけど……その……」

 恋愛を奨励しているとはいえここは健全な学び舎。

 このような事をしてしまってもいいものかとガラにもなく考えてしまう。

「……」

 本当にやっていいのか、という意志を込めて環さんの方を見つめる。

「……(コクリ)」

 環さんは準備万端といった感じで頷く。

「じゃ、じゃあいくぞ」

 ゴクリと生唾を飲み込んで、いざ決行しようとした瞬間──。

「はい、ストーップ」

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恋戦恋勝 りょーき @Torune

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