愛情!独力!貪利!愛憎渦巻くトレジャーハント⑤

 数日後。

 乙音先輩主催のトレジャーハントに参加する人たちが体育館に集められた。

「それにしてもすごい人数だな……」

 それなりの広さがある体育館を埋めつくしそうな程の人数がいる。

「そうね……。はぐれないようにしないと」

 そう言って火燐は身体をグイグイと押し付けてくる。

「いやさすがに体育館ではぐれようもないだろ……」

 室内で迷子になれたらそれはそれで才能だろう。

「……ん? あれ? 環さんどこ行った?」

 先程まで一緒にいたはずの環さんの姿が近くにない。

「私も知らないわ……。てっきり私とは反対方向から恋次にくっついているのかと思ってた」

 学園内なので大丈夫だとは思うが、この人混みだ。

 万が一ケガでもさせてしまったら申し訳が立たない。

「俺は入口の方から時計回りに壁沿いを探してみる。火燐はその対角から時計回りに壁沿いで探してみてくれ」

 焦った俺は火燐に指示を出して、環さんを捜索しようとする。

「えぇ、分かったわ」

 そうして二人で捜索のため、動き出そうとした時に声をかけられた。

「尋ね人はこの子かい?」

 近づいてきた人物の傍らには具合が悪そうにしている環さんがいた。

「あぁ、その人です! どうもありがとうございます──って小金井じゃないか」

 環さんを連れてきてくれた人物にお礼を言おうとした時、その相手が俺の初めての恋戦相手であった小金井翔だと気付いた。

「ダメじゃないか。パートナーはしっかり見ていないと」

 小金井は呆れ顔をしながら環さんを俺たちに引き渡した。

「うっ……。そうだな、申し訳ない……。本当に助かった」

 ぐうの音も出ない正論を言われたので、素直にその言葉を受け取り改めて感謝を伝える。

「ホントですよ! ウチの翔くんが見つけていなかったらどうなってたことやら……!」

 火子さんこと小金井のパートナーである江良美夏にもキツくお叱りを受ける。

「火子さんの言う通りだよ……「江良美夏です!」俺の配慮が足りてなかった」

 小金井たちに再び頭を下げようとした所を小金井に制止させられる。

「恋次。謝る相手が違うんじゃないか?」

 そう言われてハッとする。

 そしてすぐさま、火燐に介抱されている環さんの元へと向かう。

「環さん。大丈夫か? 俺がしっかりしていないばかりに辛い思いさせて申し訳ない……」

 小金井たちに感謝する事も必要だが、第一に環さんを気にかけるべきだった。

「……いえ……。恋次さんは悪くないです……。……だからそんな顔はしないでください」

 少し体調が良くなったのか、血色が良くなった顔で環さんはニコリと笑ってくれた。

(大切なパートナーを見失ったばかりか。小金井たちに助けられ、環さんにも気を遣わせて。こんなんじゃ俺、パートナー失格だな……)

 環さんの手を握りながら内心落ち込む。

「……あー、コホン。色々と厳しいことを言ってしまったが、君もまだまだ発展途上。これから成長していけばいいさ。もちろん、その素敵なパートナーたちと共にね」

 落ち込んでいる俺を気遣ってか、小金井が励ましの言葉をかけてくれる。

「……あぁ。そう言ってもらえると助かるよ」

 励ましの言葉で少し心が軽くなった。

(恋戦は火燐のおかげで小金井たちに勝てたが、俺と小金井を比べるとパートナーの扱い一つとっても天と地ほどの差があるな……)

 小金井と自身を比べた時の差に呆然としてしまう。

「ここにいるということは君もこのトレジャーハントに参加するんだろう? どちらが勝つか勝負といこうじゃないか」

 小金井が闘志を燃やした目でこちらを見てくる。

「……いいぜ。負けないぞ」

 俺も少しでも小金井に近づきたくて、対抗心を燃やす。

「よし、いい目だ。それじゃあ僕たちはもう行くから、その子をしっかりと介抱してやれよ」

 パートナーを引き連れて小金井は踵を返して歩き始める。

「あぁ、分かった。……本当にありがとな!」

 小金井の背中に向かって感謝の言葉を告げると、右手を上げて去っていった。

(なんかアイツ、すごい爽やかなキャラになっていたな。二年進級時に俺に突っかかってきた小金井はなんだったんだ)

 当初の小金井とのギャップに困惑しながらも、環さんの介抱へと戻った。







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