愛すべき幽閉②
先日の放送告白と俺が火燐の頼み事を断ったことで、機嫌の悪い火燐が出来上がりというわけだ。
「なぁ、火燐。そろそろ機嫌直したらどうだ?」
さすがにずっとこのまま、というわけにもいかないので火燐の機嫌を直すことを試みる。
「ふん、私との時間よりも告白相手が気になってる人の事なんて知りません」
拗ねた口調でそっぽを向く。
(あっ、これ面倒くさいパターンに入ったやつだ)
こうなると火燐の機嫌は中々直ってくれない。
(なにかきっかけがあればいいんだが……。この状況だとヘタしたら逆効果になる可能性もある)
しかしこのままというわけにもいかない。
「そんなことないって。その告白相手だって、あの放送があって以降なんのリアクションもないじゃないか。あんなのただのイタズラだろ?」
真偽はさておき、あの告白が誰かのイタズラだったということにしておけば火燐の怒りも収まるだろう。
「あまい、あまいわよ恋次……!」
しかし火燐はワナワナと震えて俺の言葉を否定する。
「あの声は完全に恋をしているそれだったわ! 私には分かるの……!」
力強くそう断言してくる火燐。
(俺には全く分からんが……)
火燐がこの様子だと、俺がとやかく言って誤魔化すことは無理な気がしてきた。
「とにかく、いつその女がやってくるか分からない以上警戒しておくに越したことはないのよ」
どうやら俺の作戦は失敗に終わってしまったようだ。
「ま、まぁ、そう言わずにさ。とりあえず機嫌だけでも直してくれよ」
それでもめげずに火燐の機嫌を取ろうとする。
「い・や・よ! ……だから本当は学校にも来させたくなかったのに」
尚も機嫌を直してくれない火燐。
(あぁ、これはダメだな。昔も火燐の機嫌を損ねた時はしばらく機嫌が悪い状態が続いたんだよな)
しかしこうなってしまっては打つ手がない。
だが、このままにしておいてもさらに被害が拡大するのみだ。
(そして被害が増えると、俺に苦情が来るという……)
それだけは避けたい。
(仕方ない……。本当は頼りたくないがアイツを頼ろう……)
席を立って教室を見渡す。
目的の人物はすぐに見つかった。
どうやら自分の席でパートナーと話し込んでいるようだ。
「……どこ行くのよ」
俺がいきなり席を立ったことを訝しんだ火燐が声をかけてきた。
「大先生の所だよ」
俺の言葉に疑問符を浮かべている火燐を尻目に、俺は件の人物の元へと向かった。
「おっす、小金井。ちょっといいか?」
俺が声をかけたのは、先日壮大な恋戦をしてから交流が生まれた小金井である。
「あぁ、恋次じゃないか。一体どうしたんだ?」
小金井がパートナーとの会話を一時中断して俺の方に向き直る。
「それがな、話せば長くなるんだが……。簡潔に説明すると、俺のパートナーの機嫌が悪いんだ。どうにか機嫌を直す方法を教えてくれないか?」
こんなことを小金井に聞くのはあまり好ましくないが、この際ワガママは言っていられない。
「うん? そんなこと僕に聞かなくても、君たちは常に気持ちが通じあっているんじゃないのか?」
不思議そうな顔でこちらを見てくる。
あの大告白を目の前で見た小金井からすると、こんなことで喧嘩になることが考えられないのかもしれない。
「うっ……。それは……その……ほら! 色々あるんだよ!」
痛いところを突かれた俺はなんとか誤魔化そうとする。
「仕方がないですよ、翔くん。なんといったって、彼はキス一つで女の子を好きになってしまう恋愛弱者なんですから」
先程まで小金井と話していたパートナーが口を挟んできた。
この人は確か……。
「火子さん。それは酷い言い草だな」
火の能力を使っていた火子さんだ。
「火子って誰よ!? 私には
プンプンと怒りながら火子改め、江良さんが名乗ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます