荒れ狂う嫉妬の炎⑨
「はぁ!」
一番に動いたのは火子だった。
拳に炎を纏い、肘の部分に炎を噴出させて威力と推進力を底上げしたパンチを放ってきた。
「恋次、私に任せて」
どのように応戦しようかと考えていると、火燐が前に出る。
「お前にばかり任せられるか」
火燐に頼りすぎるのもよくないので、後をついて行こうとする。
「大丈夫よ、今の私はーー」
ついて行ことした瞬間、火燐が目の前から消えた。
そして、次の瞬間ーー。
ドォォオオン!!!
「!? キャァァアアア!?」
大きな火柱が横向きに出現して、火子がそのまま場外へと飛ばされていった。
「「「「え????」」」」
俺と小金井たちの声が重なる。
「ーー誰にも負ける気がしないから」
火子がいた場所に、今度は火燐が凛とした姿で立っていた。
「な、なんだ今のは……」
小金井が今起きたことにフリーズしている。
「翔さん! 来ます!」
岩子がフリーズしている小金井を叩き起こす。
「ハッ!? す、すまない……。よし迎え撃つぞ!」
フリーズから戻った小金井が、火燐を迎え撃つために号令をかける。
「火燐、二人でやるぞ」
それに対抗して俺も火燐とともに戦いに出る。
今まで……というよりこの試合全て、火燐におんぶに抱っこでは男の面目が立たない。
「分かったわ。初めての共同作業ね」
違……うわけでもないので否定しずらい。
「いや……その、まぁうん! 行くぞ!」
答えに詰まってしまったので、半ば強引に会話を打ち切る。
「撃て!」
小金井たちが、先程俺に喰らわせた岩の塊を風で加速させたものを撃ってきた。
(さっきまではやられっぱなしだったが、今は違う!)
右手に握りこぶしを作り、目の前に迫った岩の塊をぶん殴る。
「おらぁ!」
バゴォーン!!
殴った岩がバラバラに砕け散る。
「くっ……! そういえば君も能力を使えるようになったんだな……」
小金井が悔しそうな顔をしている。
「はっはぁ! これで俺もお前と対等だぜ!」
火燐と一緒に飛んでくる岩をどんどん破壊していく。
「ふん! まさかたった今能力が使えるようになった君が、僕と同じレベルになったなんて勘違いしてるわけじゃないよな?」
小金井が不敵な笑みを見せる。
「ゴフッ!?」
気持ちよく岩を破壊していると、いきなりお腹に衝撃が走った。
衝撃が来たお腹を見てみると、何かが当たった形跡はない。
「見えない風の弾丸の威力はどうだい?」
疑問に思っていると、小金井が指を銃の形にして勝ち誇った顔をしている。
「くそったれ……‼ そんなの勘で避けてやーーぐぁっ!?」
再び小金井たちの方へ向かおうとしたが、今度は右肩に衝撃が走る。
「恋次!!」
火燐が岩を破壊しながらこちらへ呼びかける。
「ぐっ……、こっちは大丈夫だ! お前は岩の方を頼む!」
岩の破壊を火燐に任せて、俺は風の弾丸の攻略に意識を集中する。
(……とりあえず弾は小金井のいる方向からしか飛んでこないんだ。そっちに炎で壁を張ってみよう)
右手を半円型に動かして炎の壁を作る。
「それで防いだつもりか?」
小金井の声が聞こえてくると同時に身体に衝撃がくる。
しかも、今度は熱い。
「あっつ!?」
よく見てみると、風の弾が炎の壁を突き抜けただけでなく炎を纏ってパワーアップしていた。
(あれ、俺もしかして防御するつもりが相手の攻撃を強化させただけ!?)
自分の浅はかさに頭を抱える。
(……ん? なにか今重大な事があった気がする)
さっきあったことを思い出す。
小金井が風の弾を撃つ。
俺が炎の壁を張る。
風の弾が炎の壁を貫通して、炎を纏いながらーー。
「あっ」
弾見えるようになってんじゃん。
(これはまさに怪我の功名! 後は、炎の壁を張る位置を調整さえすれば……)
相手にバレないように壁を張る位置を決める。
「これで終わりだ!」
小金井が風の弾丸を放つ。
(ここだっ!)
さっきと同じように炎の壁を張る。
しかし、今度は自分の目の前ではなく俺と小金井の中間に壁を張った。
「何度やっても同じだ!」
こちらの意図に気付いていない小金井が弾を撃ってくる。
その弾は俺の予想通り、炎の壁を通過すると炎を纏って見えるようになっていた。
後は、それを避けるだけだ。
「なにっ!?」
炎の壁が消えて、お互いが見えると小金井は無傷の俺に驚いた。
「これで勝負は分からなくなったな」
風の弾丸を攻略したことで、火燐と合流することが出来た。
「さすが、私の恋次ね」
火燐が岩を壊しながら褒めてくる。
「火燐、一気に岩を壊して決着をつけるぞ」
火燐とタイミングを測り一気に相手に近付く作戦を立てる。
「分かったわ。合図は恋次がよろしくね」
火燐が二つ返事で了承する。
「今だ!」
岩の弾幕が薄くなったタイミングで火燐に合図を出す。
「「はぁ!!」」
二人で一斉に炎の波を作り、岩の塊を全て破壊する。
「よし、行くぞ火燐!」
そして、間髪入れずに二人で小金井たちの元へと走り出す。
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