荒れ狂う嫉妬の炎⑧
ゴォォォオオオ!!!
ーーそれはとても大きくて綺麗な炎の柱でした。
「…………ハッ!?」
突然の出来事に脳が考えることをやめてしまったが、すぐに意識を取り戻す。
「か、火燐さん? 今のはー……?」
何故か火燐に敬語で話しかけてしまう。
「やったわ、恋次! ついに私も能力が使えたわ! これで私と恋次の愛が証明されたのね!」
当の本人は腕をブンブンと振って喜んでいて、俺の声が聞こえていなかった。
あっ、手から炎が出ている状態でそんな腕を振ったら……。
「うぉぉぉおお!? 火燐ストップ! ストーーップ!
あぶっ……危ないから!」
火燐が腕を振ったことで、手から出ている火柱が縦横無尽に暴れ回る。
「掠ってる! 掠って焦げてるから!」
俺が火燐の火柱から命からがら逃げ回っている時、小金井はパートナーの三人に守られて事なきを得ていた。
「おまっ、卑怯だぞ! 俺も助けろぉ!」
自分たちだけ助かろうなんて卑怯だ。
「ハッハッハッ。パートナーの愛ぐらい君一人で受け止めたまえ!」
高笑いしながら高みの見物をかます小金井。
「あの……翔さん。そろそろっ……限界ですぅ……」
「え? 嘘ぉ」
火柱の威力は相当なようで、小金井を守っていた女子生徒の一人が腕をプルプルさせて限界を伝えていた。
しかも一人だけではなく、小金井の周りにいる三人全員が限界なようだった。
「あ、赤井! 早く彼女を止めろ!」
さすがの小金井も焦り始めたのか俺に命令をとばしてくる。
「言われなくとも!」
火柱を掻い潜りながら火燐へと近付く。
「かりぃぃぃいいいん!!!」
火燐の名前を叫びながら何も考えずに突進する。
「あっ、恋次! 見て見て! 私もついに能力が使えるようになったんだよ!」
無邪気な笑顔でこちらに掌を向けてくる火燐。
………………あ。
「ふぉぉぉおおお!!??」
目の前で火柱が生み出されたが、ガレキを踏み台にして紙一重で避ける。
「キャッ!?」
「うぉっ!?」
しかし、勢いをつけすぎたせいで火燐の胸元にそのままダイブする形になってしまった。
「も、もう……恋次ったら。そういうことするのは家に戻ってからってさっき言ったでしょ?」
胸元に顔を埋められて照れている火燐。
言ってないが?
「ぷはっ。……ふぅ。なんとか止められた……」
会場は酷いことになっているが、命があっただけで十分だろう。
「ハァ……ハァ……。な、中々いい攻撃だったじゃないか……」
疲労困憊な状態で俺たちの前に現れた小金井一行。
別に火燐本人も攻撃していたつもりはなかったと思うが……。
「それにしても、いきなり能力が発動するなんて……。まったく驚かせてくれるな」
そうだ、確かになぜいきなり能力が発動したのか。
あの時したことと言えば……。
「あっ」
思い当たることがある。というか一つしかない。
「翔くん、簡単なことですよ。彼は恋愛感情を持っていないように見えましたが、キス一つで簡単に恋愛感情が芽生えてしまう恋愛弱者だったんですよ」
「言ったァ!自分で気付いたけど目を逸らしてた事実を包み隠さず言われたァ!」
自分で気付くのと他人に言われるのではここまでダメージに差があるとは思いもしなかった。
「いずれにせよ、これで条件は対等だ。ここから真剣勝負といこうじゃないか」
ボロボロになりながらも、そう告げる小金井を不覚にもカッコイイと思ってしまった。
(俺が小金井を苦手だと感じていたのは、この真っ直ぐさに物怖じしていただけかもしれない)
「そうだな、決着をつけよう」
俺たちの正面に立つ小金井たちに対峙するように、火燐と二人で並び立つ。
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