第18話 KSPと里見の事情
さて告白の問題は片付いた。
だが話を付けないといけない人間がもう一人いる。
前の席にいるロリコンだ。
静香を紹介してやったという恩も忘れ、僕を怪しげな組織に売った張本人。
というわけで休み時間に今度は僕が呼び出した。
「あの秘密警察を名乗る奴らに僕を売ったのって、里見だよね」
これまでは里見君と敬称を付けていたが、もう呼び捨てで構わないだろう。
不機嫌です、ということも伝わるだろうし。
「ごめん。ついカッとなって」
「ついってさぁ」
素直に認め謝ってきたものの、なんとも腑に落ちない理由である。
「悪かったとは思ってるよ。昨日聞いたけど宮本さんに告白したんでしょ。それで振られたって」
「ああ、残念ながらね。だけど宮本さんとはこれまで通り友達として付き合うってことで決着したから」
「そっか。良かった――って言っていいのかな。今日のお昼とかどうするのか気になってたんだ」
折角手に入れた楽しいお昼の時間を手放さなくて済んだことは、本当に良かったと僕も思う。
それにしても、話しをしていて分かったがやはり僕が振られたことは組織にも知られているようだ。
告白に成功したら、これが僕の彼女だと紹介してやると啖呵を切って奴らの元を飛び出して、そのまま戻らなかったのだから察しているとは思っていた。
一体どんな顔をして奴らと顔を合わせたらいいのものか悩むところだ。
そう、僕はあの組織と再度接触しようと思っている。
何故ならば、提示されていた特典を目当てに加入したいと考えているためだ。
昨日までは宮本さんと美術部に入ってイチャイチャもみもみするから必要ないと判断して断ったが、今はもう美術部に入るつもりはない。
幸い仮入部の届け出もしない内に告白は失敗に終わったので、このまま帰宅部となり放課後は部活の覗きスポットを巡って理想のおっぱいを探そうと考えていた。
というわけで、おっぱいの為に恥を捨てて里見に奴らとの繋ぎを頼むことにした。
「昼はこれまで通りになるよ。それよりも里見にはあの組織との連絡手段を聞きたいんだけど」
「KSPに連絡を取りたいの?」
「KSP?」
「うん。管凪SecretPolice。略してKSPだよ」
あの組織だの、秘密警察だのと呼称するよりは言い易いか。
これからはそう呼ぶとしよう。
「そのKSPにはどうやったら連絡が取れるんだ」
「僕は先輩に誘われた口だから、その先輩に連絡すれば大丈夫」
「じゃあ頼む」
「了解。それでどんな用件?」
「昨日は断ったけど、KSPに入りたいって伝えてくれ」
「えっ、勧誘もされてたんだ」
「その話は聞いてないのか」
「うん。呼び出されたのは当然知ってて、後は先輩と口論になったことと、宮本さんに告白しに行って振られただろうっていうのは聞いてたんだけど」
勧誘された話だけが抜けていたようだ。
しかし今の口ぶりに気になることがあった。
「里見の言う先輩って、ロリコンの?」
「そうだよ。犯罪者予備軍扱いしたんだってね。先輩怒ってたよ」
「いや、だって本当のことじゃん」
「酷いなあ。それ僕の事も含めてるでしょ」
「当然」
「即答!?ちょっとはオブラートに包もうよ」
事実そうなのだから仕方ない。それにあのロリコンのことを僕はまだ根に持ってるし、相手もそうだろう。
「他の連絡手段はないのか?あの先輩だと繋ぎになってくれないんじゃないか」
「大丈夫だよ。もう怒ってないだろうし」
「そうなのか?昨日はかなり喧嘩腰だったのに」
「振られた奴にいつまでも怒りを向ける程狭量じゃないって言ってたから」
「なんかムカつくんだけど」
「まあまあ。とにかく連絡するからちょっと待っててよ」
次の休み時間。
「連絡来たよ。加入の話は問題ないだろうって。それで今日の放課後に昨日の場所まで来てほしいってさ」
「分かった。放課後になったら向かうって伝えてくれ」
「了解」
放課後が楽しみだ。部活を覗き放題になるわけだし、今からどの部活を見に行こうか考えておこう。
「これで椎名君も仲間だね」
なんとも嬉しくない仲間が出来たものだ。
特典がなければ誰が好き好んで入るものか。
そう考えると、どうして里見は入っているんだろうか。
まさかロリに手を出してあいつらに捕まった、とかなら付き合いを考えないといけない。
そう思い聞いてみると、
「僕は部活の親睦会で先輩にロリコンだってバレてさ、それで誘われた口だよ」
との答え。
「バレたってまたなんで」
「新一年生が自己紹介する時に皆好きな女性のタイプを聞かれてさ、その時は年下の子って答えたんだけど、それが切っ掛けかな」
「それでバレるものか?」
「なんで気付いたのか僕も聞いたよ。そしたら目線って言われた」
「目線?」
「そう。親睦会はファミレスでやってたんだけど、その時小さい女の子を連れた家族連れがいたんだ。その子を自然と目で追ってたみたいで。まあ僕も先輩がその子を見てるのは気付いてたから、もしかして同類かなって思って隠さず白状したんだ」
なるほどな。
目線って言うのは本当に厄介なものだ。
僕も里見には藤沢さんの胸を見てるって気付かれていたし、街中でもおっぱいを気付かれないように見ているつもりが腕で守るようにしたり、睨まれたり。他にも谷間が見えている格好をした女性を見ていたら襟元を上に上げて隠されたりするからな。
どれもこれも目線が原因だろう。
もしもバレずに済む見方があるなら、授業料を払ってもいいから教えて欲しい。
話がまたおっぱいに逸れてしまったので戻そう。
里見が誘われた理由は分かった。
だがどうして入ったのかが分からない。
部活覗きスポットが里見にとっても魅力的な特典とも思えないんだが。
「それでなんで入ることになったんだ?何かあるんだろ」
「……、活動理念に共感したから」
「絶対嘘じゃん。人に言えないようなことか?」
「いや、本当は二次元作品の自由貸出が目的です」
「それだけ?」
聞いておいてなんだが、拍子抜けというか変な組織に所属するほどのものなのかと疑問に思う答えだった。
「それだけって、分かってないなあ」
里見がやれやれと、アメリカ人のようなオーバーアクションで態度を表した。
殴っていいだろうか。
「待って待って」
拳を構えると何やら言い分があるようだったので顎をしゃくって話を促す。
「見ればわかるから。見たら僕の態度にも納得するはずだから」
「それは僕も見れるのか?」
「うん。KSPのメンバーなら利用できる施設だよ」
ふむ、誘われた時は聞かなかったけど、KSP特典は他にもあったようだ。
エロ本の自由貸出となれば興味は勿論ある。
好みのものがあれば、今後本屋で店員に年齢確認をされる恐怖を味わわずにエロ本が読めるのは案外良い利点かもしれない。
放課後の楽しみが一つ増えたのだった。
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