第14話 勧誘、そして
管凪高校秘密警察と名乗る連中に拘束され、注意勧告を受ける身となった僕だったが、何故かその組織の成り立ちを聞く羽目に陥った。
卒業生と在校生を醜聞に晒されないように組織されたとのことだが、語りだした黒子姿の男の話はまだまだ続く。
「本物の警察が出張ってくるような事件が起きる前に、その芽を摘む。そのために我々はどうすると思う?」
事件が起こらないようにする方策。
どんな手段があるだろうか。
監視カメラでも設置して、抑止するとか。だがそれだと突発的な事件には対処できないよな。うーん。
「思いついたまま言ってみなよ」
「監視カメラとか」
「まあ防犯カメラくらいはうちの高校にもあるね。だけど校内の全てを網羅しているわけじゃない。どうしても映したら倫理的に拙い場所もあるからね。だが惜しくはある。正解はね、人を使うさ」
「ああ。生徒を目と耳、監視カメラや盗聴器代わりに使ってるのか」
答は既に聞いていたようなものだった。
僕がここに呼ばれた理由も、里見と静香の言葉が原因だし。
「それも少し違う。生徒だけじゃない。教師もだよ」
「は?あんたらの組織に教師も関わってるのか?」
「名乗っただろう。管凪高校秘密警察だって。学校の名を冠してるんだから学校公認の組織だし、大人だって関わっているさ。後ろに座しておられるのも先生だよ。そもそも学校で起きる犯罪は何も生徒が起こすものだけじゃない。教師が犯罪を犯すこともあるんだからね」
後ろの三角形の被り物してるの教師かよ。なにしてんだよ。働けよ。
もう呆れるばかりだ。
こんなのと関わっていても時間の無駄にしかならない。
さっさと解放してもらおう。
「もう分かったんで、注意勧告っていうのを聞くんで帰してもらえますか」
「ふむ、いいだろう。幼馴染といえど幼い容姿の少女にみだりに手を出すのは今後控えるように。たとえ君の好みのタイプじゃなかったとしてもだ。もしもその行為が人目に触れて、醜聞として広まったら学校に損害が出るという事を忘れないでくれ。僕らの組織には幼女趣味
「いや、そいつらを監視しろよ。ロリコンとか犯罪者予備軍だろ」
「なんだと!?」
さっき僕を断罪しろと言った黒子がいきり立った。
こいつやっぱりロリコンか。
「落ち着くんだ。椎名君、君も不用意な発言は控えてくれ。我々の組織員は節度を持って性と向き合っている。彼だってそうだ。幼い少女を見ても、お喋りしたい、触りたい、連れ帰りたい、そんな衝動を抑えて日々生活しているんだから」
「いやその思考は犯罪者予備軍だろ」
「おかしなことを言うね。君は女性の胸が好きなんだろ。揉みたいとか吸いたいとか思わないのかな?」
「それは、まあ」
「じゃあ彼らと一緒じゃないか。任意でなければ犯罪になるから、したいけどしないってことはさ」
一緒、なのか?
「ちなみに我々の構成員は全員が男だ。しかも性欲が強かったり、世間から冷たい目で見られる趣味嗜好の者を集めている」
「犯罪者予備軍集団じゃねーか」
「情熱的なだけさ。だからこそその情熱を傾けたいと思える対象に危険が及びそうならばいち早く察知できるし、犯罪を犯しそうな同族を見つけることもできる。素晴らしい能力を持った仲間たちさ。そして私は君を組織にスカウトしたいと思ってもいる」
「いや、入らないよ。今までの話を聞いて頷くわけがないだろ。何が悲しくてそんな集団に入らなくちゃいけないんだ」
「特典があるよ」
「特典?」
「ああ。我が校は部活が盛んだろ?その部活をばれずに見学できるスポットを我々は抑えているんだ。盗撮犯から女子を守るためにね。そしてその場を組織員には開放している。意味は分かるね?写真さえ撮らなければ、明言はしないけど標的になりやすい部活動の練習風景を見放題だよ」
な、ん、だ、と。
なんて魅力的な特典なんだ。
運動部のということは、躍動するおっぱいが拝めるわけだろ。
見たい。映像では感じられない生の臨場感で、誰に咎められるわけでも揺れ動くおっぱいを、僕は是が非でも見たい。
それにこれは僕の理想のおっぱいを探すには絶好の機会になるんではなかろうか。
だがそのためには怪しげな組織に入らねばならない。
どうする。どうすればいいんだ。
「入り…ま……」
駄目だ!何を言おうとしているんだ。
こんな組織に入ったことが万が一にでも女子に知られたら軽蔑の眼で見られるぞ。
それは駄目だ。
彼女が出来そうだっていのに、そんな綱渡りなことはできない。
「入りません!」
欲望を跳ね除け、断固とした口調で宣言する。
「おや、思惑が外れましたね。君ならばこの特典を聞いて組織に加入すると思ったのですが」
「僕にはもうすぐ彼女が出来る予定なんだ。それなのにこんな組織に入れるかよ」
理由を説明してやると、彼らは一様に狼狽えて見せた。
「君に彼女が?」「嘘だろ」「一年のくせに」「俺たちを差し置いて」「妄想だ」
口々に否定や妬みの声が上がる。
「僕に惚れている可愛い子がいるんだ。嘘じゃない。僕に笑顔を向けてくれるし、一緒の部活に入りたいって言ってくれた。別れ際には手を振ってくれるし、気軽に触れてもくる。僕が告白すればいつだって付き合えるくらいに好意を持たれてる。だからお前たちの組織に入っておっぱいを見る必要なんてないんだ。彼女と付き合えばおっぱいなんていくらだって――」
言い募る毎に、彼らから嘲笑や安堵と言った吐息が零れた。
それだけでなく、ロリコン黒子が高笑いをし始めた。
「あはははははははは、はーっはっはっはっ」
「何がそんなに可笑しいんだよ」
「それは幻想だ」
「いいや、現実だよ。今日までに僕が実際に受けた行為であり、僕だけが受け取った好意だ」
「違う違う。それをされたっていうならそうなんだろうさ。だけどな、きっとそれをした女子はお前の事なんてなんとも思っちゃいねーよ。ただの知り合いに対するスキンシップさ」
「そんなわけないだろ」
「いいや、そうさ」
「拘束を解いてくれ。今から証明してみせてやる。告白してきて、お前に僕の彼女だって紹介してやる」
「出来るもんならやってみろよ」
売り言葉に買い言葉。
つい宮本さんに告白すると宣言してしまっていた。
告白なんてしたら、宮本さん以外のおっぱいを揉めなくなるかもしれないのに。
彼女のおっぱいは理想に近いものであるけれど、僕の目標である可愛い子のおっぱいを揉むってことにも合っているけれど、だけどこんなに早く彼女を作っていいものだろうか。
宮本さんが他の女子のおっぱいを揉んでも良いって容認してくれれば別だけど。
理想としては友達以上恋人未満な関係を多くの女子と結んで、たくさんのおっぱいを揉める高校生活にしたいところだったんだが。
でももう後には退けない。
宣言した以上、このロリコンに目にもの見せてやりたい。
「冷静になって、落ち着いて私の話を聞きなさい。女子が思わせぶりな態度を取るのはよくあることです。君がさっき話した体験談では、必ず告白が成功するとは到底思えない」
組織の話や加入を勧めてきた黒子が、僕の肩に手を置きそんなことを言ってくる。
「あんたも僕の言葉を信じていないんだな」
「それは……」
「ほら解いたぞ」
ようやく手足の拘束が解かれ、自由に動けるようになった。
「じゃあ、行ってくる」
僕は部屋を飛び出し、宮本さんがいるであろう美術部部室に向けて駆け出した。
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