第6話 藤沢さんのおっぱいは使用済み?

 幸福に恵まれた高校生活初日。

 家に帰った僕は幸運星に感謝をこめて、自家発電を三回ほど行った。

 心身ともにすっきり晴れやかとなった僕は、そこで気付いてしまった。

 気付かなければ穏やかな夜を迎えられただろう。

 だが気付いてしまった。

 気付いてしまったからにはもう考えずにいられなかった。


 「リーナ」「こうくん」だあぁ!?


 四天王の一角とお昼を一緒に出来るかもしれない期待で聞き逃していた。

 だが思いだしちまった。

 なんだその呼び方は。しかも気軽に肩に触ってやがったなぁ。付き合ってんですか。チュッチュしちゃってるんですか。もみもみズコバコパンパンしてやがるんですか。

 ええ、ええ両者揃って美形ですね。お似合いですね。だからって許されると思ってんじゃねえぞ里見ぃ。あのくそ坊主が。高身長でイケメンで高校野球の目指せスタープレイヤーってか。それで学校中にキャーキャー言われて手当たり次第に女を食い荒らす気かあの性欲モンスターが。果てにはプロ入り、目指せ女子アナですかい。良い人生設計してやがんな腐れ外道が。許さねえ。許してなるものか。許されてなるものか。



 待って、よく考えるんだ純。

 本当にあの二人は付き合っているのかな。

 勝手な被害妄想をしているんじゃないのかい。


 心の中で冷静な僕がそんなことを言う。



 楽天家は黙ってろ。あんな呼び合い方をしてるのに付き合っていない訳がないだろうが。甘ったれたことを言っていればその内痛い目をみるぞ。

 付き合っていないと期待して、アプローチをかけて「私彼氏いるから。あんたとは無理」とかそんな夢も希望もなくなるような返事を受ける。そんな目に遭いたいのか貴様は。

 あまつさえそれを学校中の人間に言いふらされて、笑いものにされてみろ。高校生活は終わったようなもんだぞ。他の女子に告白しても、「あなたってあの子にアプローチしてたよね。望み薄になったからって他の子にすぐ乗り換えるのはどうかと思うの」とか言われるぞ。そこまでの最悪を考えてからものを言え。



 同じ中学出身だと言っていたよ。

 それならただ仲の良い友達っていう線も捨てきれないんじゃないかな。

 自分に置き換えてみなよ。

 幼馴染の静香を僕は何て呼んで、静香に僕を何て呼ばれてる?

 名前を呼びあっているじゃないか。

 冷静になって。良く考えて。

 確定していない妄想で、高校生活の楽しい昼休みを捨てるのかい。

 それにもしも付き合っていたっていいじゃないか。

 友人を祝福してあげる寛容さも、モテるためには必要なことじゃないのかい。



 だけど、だけど僕は許せないよ。

 あのおっぱいが。あの美人のおっぱいが既に揉まれまくっているなんて。

 僕はこんなにもおっぱいを愛しているのに。なのにあのおっぱいを揉めないなんて。あんまりだ。



 全てのおっぱいを揉むのは無理さ。

 だからもし二人が付き合っていたなら潔く諦めるんだ。

 Eカップは藤沢さんだけじゃないんだから。別のEカップを探そう。

 そもそも僕の好みはB、C、Dだろう。



 Eは許容範囲なんだよっ。

 柔らかくてちょっと好みよりも大きくたって揉みたいんだよ。

 大きいのにも挑戦したっていいじゃないか。

 分かるだろ僕なら。



 分からなくはないさ。

 じゃあ藤沢さんのおっぱいも狙うんだね。

 だったらもし二人が付き合っていたとして、その時は別れるのを待てばいい。

 狙うのはそれからでもいいだろうさ。



 でも、でもその時にはもう揉みに揉まれた使用済みおっぱいじゃないか。



 処女厨は卒業するんだ純。

 そんなことを言っていたらいつまで経ったって童貞だぞ。

 一皮脱いで大人になれ。股間の話じゃないぞ。

 人間としてだ。

 美人は大体揉まれてる。

 そう考えるんだ。

 じゃなきゃいざという時に失敗するぞ。

 まさかお前は本番前にこれまでの経験を女性に聞き出すのか。

 ダサさが天元突破だぞ、それは。女性だってドン引きだ。百年の恋も冷めるってなもんさ。



 そうか…。

 僕が間違っていたよ。

 ありがとう心の中の僕。



 分かってくれたなら良いんだ。

 お前の目標をもう一度思い出して、明日からも励もうぜ。



 僕の目標はおっぱいを揉むこと。

 理想に近い、可愛い子のおっぱいを揉むことだ。

 そのためには一つのおっぱいにはこだわらない。

 揉めるところから揉んでいくんだ。

 まずは明日、里見に聞いてみよう。

 お前と藤沢さんは付き合っているのか、と。

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