第5話 EとBとの昼休み
「椎名君、お昼だよ?」
掛けられた声に顔を上げると、坊主頭ながらも整った容姿をした男子生徒の顔があった。
「えーっと」
「里見、
「ごめん」
「気にしないで。それよりももうお昼休憩になったよ」
言われて教室の時計を確認すると、確かにそんな時間だった。
朝見た星空を思い浮かべている間に、もう昼休みになっていたようだ。
初日の授業だから大した内容の授業でもなかっただろうが、もしも重要なことを話していたら困る。
「里見君、ちょっといいかな」
「ん?なに」
「午前中の授業で何か重要そうなことって話してたかな」
「椎名君、もしかして午前の授業中、ずっとボーっとしてたの?」
驚いた顔を浮かべる里見に、僕は頬を掻きながら頷く。
「そうだな、うーん特になかったと思うけど」
「そっか。ありがとう」
それを聞いて安心した。
だからだろうか腹が飯はまだかと催促の音を鳴らすので、リュックから母親が作ってくれた弁当を取り出した。
このクラスには元からの知り合いというのがいないから、親交を深めるために誰か一緒に食べてくれる人がいないかと教室内を見渡す。
テーブルに昼食を並べているものがちらほら。
居ない人は食堂に向かったか、別の教室に向かったか。
先ほど声を掛けてくれた里見も教室組のようで、今は前の席で鞄から弁当箱を取り出していた。
「里見君、あの、もしよかったら一緒にお昼食べない」
「ん?一緒に食べる約束してる人がいるから、その人にも確認とってからでいいかな」
「ああ、うん、いいよ」
席を立つ里見の行く先を、誰と食べるのかと追う。
そこにはうつ伏せになって寝ている藤沢・E・リーナさんの姿。
嘘だろ里見。
そんな心境の僕を他所に、彼は気軽に藤沢さんの肩に手を置いて揺り動かす。
「リーナ、お昼だよ」
冬服だから動きは鈍いが確かにおっぱいが揺れる。
おいおいおい、里見よ。
君、いい仕事をするじゃないか。
「んーーー、眠いー」
「寝るにしてもご飯食べてからにしなって」
「うー、分かったー。幸くん起こしてー」
「ほら。それで一人ご飯に誘いたい人がいるんだけど、いいかな」
「誰?」
「彼。椎名君なんだけど」
指差され、おっぱいの辺りまである茶髪を手櫛で整えながら、藤沢さんが眠そうな目でこちらを見る。
今は細まっているが、垂れ目で鼻筋が通った
期待して彼女の返答の言葉を待つ。
「別にいいけど」
いよっしゃあああああああああああああああああああああ。
まさかこんなにも早く四天王の一角とお近づきになれるとは思ってもみなかった。
里見様、貴方は神ですか。
弁当を取りに戻ってきた里見が、「リーナと一緒なんだけどいいかな」と聞いてくるが断るわけもない。
何度も首を縦に振ると、爽やかな笑みを浮かべて、「じゃああっちで食べよう」と誘ってくれたので移動する。
里見は藤沢さんの正面の席に座って、前の机をくっつける。
僕は横の席の椅子を借りて座った。
机の上には弁当箱が二つと、コンビニ袋が一つ。
藤沢さんはパンとパックのミルクティーをコンビニで買ってきていたようだ。
「いただきます」
弁当箱を開け、食事の挨拶をしてから箸を伸ばすと、里見から意外な言葉がかかる。
「椎名君は礼儀正しいんだね」
「えっ、なんで」
「僕らの中学ではお昼に『いただきます』って言う人があまりいなかったから」
「日直が号令をかけて皆で言わない?」
「言わないよー」
「そうなんだ」
「それ多分さぁ、給食かお弁当持参かの違いじゃない」
横から割り込む声。
ショートボブの髪型に、猫のように大きな瞳と小ぶりな鼻、ふっくらした唇の少女。
声を掛けてきたのは宮本・B・詠花さん。
なんということだろうか。
四天王の二人目が降臨するなんて。
やはり朝の幸運星が僕の運勢を爆上げしてくれたのか。
「なるほど。椎名君のところは給食だったのかな。………椎名君?」
「あっうん、そう。給食」
幸運を噛みしめていたら反応が遅れてしまった。
「当たった当たった。詠花ちゃんってば名推理」
可愛いなこんちくしょう。
手を叩いて笑顔で喜ぶ姿がまぶしいぜ。
「ねえねえ、私もお昼一緒に食べていいかな」
「僕は歓迎するよ。二人は?」
「どーぞー」
「是非ご一緒に」
「あはは、椎名君ってば固いよぉ。それじゃお邪魔しますね」
僕のどこが固いんですか、宮本さん!
下ネタですか宮本さん!
そんなことを想っている間に、僕の正面に宮本さんが座る。
なんて幸福な昼休み。
正面と左に可愛い子がいて、一緒にご飯を食べれるなんて。
これが固定の組み合わせになったら、僕はこの高校生活で確実な勝ち組になれる。
明日からも里見くんをお昼に誘うことにしよう。
宮本さんのお昼も藤沢さんと一緒でコンビニのもののようだ。
袋からはサンドイッチとコーヒー牛乳。
ご飯を食べながら改めて自己紹介をする。
里見は野球部に入る予定で、平山一中出身とのこと。
藤沢さんは里見と同じ出身で、とにかく昼間は眠くて仕方ないらしい。
夜更かしでもしているんだろうか。
宮本さんは好きな漫画を詳しく語ってくれる。
少女漫画だけでなく少年漫画や、マイナーな雑誌のものまで読んでいるらしく意外と話が合うことが分かった。
ますます好きになりそう。
ただ僕の視線を釘付けにしたのは、机の上に乗っかっている藤沢さんのおっぱい。
何度も視線を持っていかれてしまう。
今後の関係に響くかもしれないと、なるべく見ないようにしようとしたが駄目だ。
存在感は凄まじく、藤沢さんが動いたとき、潰れた形がどうなるのかがどうしても気になって目を惹かれてしまう。
大きすぎるのは好きではないが、Eは許容範囲なのだ。
おっぱいと机の間に手を入れたい。それどころか藤沢さんの机になりたい人生でした。と十五年の生に幕を下ろしたくなる程、魅力的なものだった。
悶々としているうちに楽しい時間はあっという間に過ぎ、昼休みが終わる。
ごちそうさまでした。
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