第7話 藤沢さんと里見の関係性

 昼休みになった。

 当然里見をお昼に誘う。


「里見君、今日も一緒にお昼いいかな」

「もちろん。じゃあリーナの席に行こうか」


 リーナ、リーナねぇ。

 この時間が来るのを狂おしいほど待っていたぜ。

 白状してもらおうか。洗いざらいよぉ。


「お邪魔します」

「んー」


 今日も今日とて眠そうな藤沢さん。

 腕を重ねて斜めにもたれ掛かっている姿も綺麗だ。

 鞄から取り出した今日のお昼は、コンビニで買ってきたパンとミルクティーか。


「私も混ぜてもらうよぉ」


 宮本さんも合流。

 お昼を食べるメンバーが固まっていく、良い流れだ。

 彼女の今日のお昼は、コンビニのパスタサラダとパックのレモンティー。

 お昼を食べながら、しばし様子見に徹する。

 部活紹介があったので、その話題がお昼教室組ではもちきりのようだ。

 僕らもそれに倣う。

 里見は野球部に入学式前から参加していたらしく、そのまま入部。

 僕と藤沢さんは帰宅部。

 宮本さんは美術部に入るか悩んでいるらしい。


「漫画が好きだからね。描く方もチャレンジしてみたいんだぁ」

「仮入部期間があるから、一旦見に行ってから決めてみたら」

「だよねぇ。誰か一緒に行かない?」


 藤沢さんと僕の顔を窺う宮本さん。

 くっ、上目使いとは卑怯な。


「僕で良ければ」

「えっ、本当。じゃあ今日一緒に行こうよ」


 一緒にイこう?はい喜んで!!


「リーナも行ってみたら」

「私はパスー。さーっとお家に帰りたいから」

「だろうね。でも見に行くくらいはいいんじゃない」

「その時間ももったいなーい」


 イチャコライチャコラしてんじゃないよ、里見ぃ。

 ここらで二人が付き合っているか真偽をはっきりさせようじゃないか。


「一緒に行こうよぉ、リーナちゃん」

「えー」

「あ、あのさ、里見と藤沢さんって付き合ってたりするの?すごい仲が良さそうだし、違ったらなんていうかあれなんだけど」


 タイミングがずれて会話に割り込む形になってしまった。

 ごめんね宮本さん。

 だけど聞かなくちゃいけないんだ。これが僕の今日課せられた使命なんだ。

 質問を投げられた二人はというと、藤沢さんはキョトン顔を、里見は驚いた表情を浮かべている。

 その顔はどういう意味だ。

 バレテしまったって顔か。どうなんだ。


「なにそれー」

「そう見える?」


 どっちなのかを答えろよ里見ぃ。

 見えるから聞いてんだろうがっ。


「見える」

「私ももしかしてそうなのかなって思ってたぁ」

「だよね、宮本さん」


 仲間が出来たぜ。

 やっぱりそう見えていたのは僕だけじゃなかったか。

 さあ答えはどうなんだ。


「付き合ってないよ。腐れ縁ってやつ」


 あっけらかんと答える里見。

 違うのか。本当か?


「腐ってないしー」

「腐ってるよ。僕がどれだけ苦労してるか分かってないのかよ」

「えー、苦労なんてかけたー?」

「遅刻しないようにいっつも起こしに行ってるの誰だと思ってるのさ」

「んー、じゃー、ご苦労ー」


 はぁぁんっ?

 毎朝起こしに行ってるだぁ。

 なんだそのうらやまシチュエーションは。

 お前は寝起きの藤沢さんをいつも見てんのか。

 パジャマ姿を、ブラに守らていない無防備なおっぱいを見放題だってか。

 おいおいおいおい、許せねえなぁ。


「それで二人の関係は?」


 羨ましさと憎さで奥歯を噛みしめ、言葉も発せない僕の代わりに宮本さんが切り込んでいく。


「「「幼馴染(だよ)」」


 幼馴染格差がここに!

 うちの静香と交換してください。お願いします。


「あはっ揃ったぁ。やっぱり幼馴染っていいなぁ」

「そんないいもんじゃないよ」


 分からなくもないが、分からん。

 こんな美人でいいおっぱいした幼馴染なら万々歳じゃないか。


「えーっ、羨ましいよね幼馴染って。ねえ椎名君」

「まあ、うん」

「反応が悪いぞぉ。幼馴染って言えば漫画でもゲームでも定番だけど、普通いないじゃん。だから憧れなんだぁ。兄妹みたいに育つんだけど、大人になっていくにつれて恋心が芽生えていって、でも片方に恋人が出来て嫉妬からの略奪愛!きゃーっ」

「「「ないないない」」」


 僕が静香に嫉妬?

 はっはっはっ、冗談。

 あいつのおっぱいが膨らまない限りないね。

 膨らんだら…どうだろう。

 顔はまあ可愛い部類なんだよな、あいつ。


「なんで椎名君も否定してるの?」

「僕にも幼馴染の異性がいるから」

「ええっ!?どんな子、年上?年下?同い年?」


 うぉーっ、めっちゃ宮本さんが机に両手を着いて身を乗り出し、がっついてくる。

 そういうのは夏服の時に、胸元が無防備で胸チラする状態でお願いしたい。


「同い年で、ここの普通科に通ってるよ」

「へー、椎名君にもいるんだ」

「ふーん」

「詳しく」


 名作アニメに出てくるどこぞの機関の総司令かのように、両肘を机に付けて顔の前で指を組み合わせたポーズをとる宮本さん。


 里見への尋問のつもりが、何故か僕が尋問される側に。


「僕の話なんていいじゃん」

「いや気になるから聞きたいな」

「詳しく」


 二人が追及してくる。

 宮本さんはそのポーズ気に入ったの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る