生徒会長 芹沢海
「そこのイケてる卒業生のお兄~さん。そろそろ下校時間ですよ」
「もうそんな時間か……」
「わかっていたクセに~」
今となってはただのイケてるお兄さんでしかないパイセンこと芹沢海パイセンではありますが、少し前まではここ明才高等学校の生徒会長を務めていました。なぁ~んてここまで読んでいる読者の皆さんはご存知でしょうが。
「でも、丁度良かった。さやちゃんにこれを渡そうと思っていたんだ」
「何ですか~? 今更さやちゃんに贈答品を送っても卒業式での告白イベントは発生しませんよ~」
そんなことを言いながら、さやちゃんはしっかりとそのプレゼントを受け取りました。
「俺だって今更さやちゃんの好感度を上げようなんて思ってはいないけど、貰ったものはちゃんと返さないとでしょ?」
「ん~? さやちゃん、海パイセンに何かあげましたっけ?」
少なくとも目に見えるところでさやちゃんから海パイセンにあげたままになっているものがあった記憶も記録もありませんが……。
「バレンタインデーのお返しだよ。明日を逃したら次はいつ会えるかわからないからさ……」
「あ、あぁ~ バレンタインのお返しですか~ よくそんな描写されていない話を持ち出してきましたね」
「描写はされていなくても記憶はしているから」
「まぁ~ったく、海パイセンのそういうところさやちゃん大好きですよ」
「さやちゃんの告白イベントは卒業式じゃなくて今日だったか」
海パイセンがさやちゃんにだけ見せてくれるこの呆れるような笑いを見ることが出来るのもあと僅かかと思うと、少し寂しいような気がしてきました。
「海パイセン、さやちゃんの告白に対するお返事は?」
「ごめんな」
海パイセンにたった一言、たった四文字そう告げられたさやちゃんでしたが、悔しいとか、寂しいという気持ちは不思議と感じられませんでした。
「どうやらさやちゃんに対する好感度が足りなかったみたいです」
「さやちゃんが攻略対象の一人じゃなかっただけじゃないか?」
正解!
「本番は明日ですからね。今日はさっさと帰って明日に備えてください」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
「海パイセーン! お返しありがとうございました。それと、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
海パイセンとさやちゃん二人きりの時間はこれが最後となりました。
「さぁ~て、明日は忙しくなるぞ~」
卒業式まで残り1日。
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