生徒会副会長 福品美沙
「恵吾くん、ごめんね。急に呼び出しちゃって」
「いえ、今日は暇だったので。あの……美沙先輩、お話って?」
卒業式まで……明才高校を去るまでに美沙は思い残しをしたくは無くて、本当は卒業式のあれこれで忙しいはずの恵吾くんを呼びだしてしまいました。
「恵吾くん……美沙とお付き合いしてもらえませんか?」
言ってしまった。言ってしまえた。こんなにもあっさりと。もっと顔が紅潮して、もっと声が裏返って、もっと言葉が詰まると思っていました。
「はぇ? は、はわぁ。あのぉ、えっとぉ」
顔が紅潮して、声が裏返って、言葉が詰まってしまったのは恵吾くんの方でした。
「で、でも。美沙先輩は海先輩のことが……」
美沙は海が好き。いつからか周りにはそう見られていたらしいことは知っていたし、直接言われた事もあって海のことを異性として意識していました。
でもそれは、第三者によって形成された好きという気持ちで、美沙自身の気持ちではありませんでした。
そう気付いたのは恵吾くんと出会ってからでした。
恵吾くんといる時の美沙は心の奥底で何かが湧いているような感覚に陥っていました。それは会う度に大きくなっていて、明らかに海といる時とは異なっていました。
きっとそれが好きという事なのだと美沙は知識不足ながらそう結論付けました。
「美沙は恵吾くんのことが好きです。初めての事だからわからないけれど、間違いない」
「美沙先輩……」
恵吾くんは一歩、また一歩と近づいてきました。その度に美沙の中で沸いているものが強くなっていきました。
「僕も、ずっと好きでした」
美沙の右手を両手で包んだ恵吾くんは声を震わせながらはっきりとそう告げてくれました。
卒業式まで残り4日。
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