ちょっとえんがわで
「け~い~ご~くん」
縁側でぼんやと空を眺めていた恵吾くんに美沙は遠くから呼びかけました。
「美沙先輩」
「もしかしなくても疲れているよね?」
「そんな事は……ちょっと疲れました」
一度は否定しかけた恵吾くんでしたが、素直に本心を伝えてくれました。
「海と颯くんの二人だけならまだしも、ユズリンの相手までさせられて疲れないはずがないよね」
「でも、楽しかったです」
「楽しいって感じて貰えたなら良かった。無理に付き合わせていたらどうしようかと思ったから」
「きっと、美沙先輩に出会わなければこんなに楽しい時間は過ごせなかったと思います」
恵吾くんは今、どんな表情をしてこの言葉を告げているのだろう。そう思った美沙は隣に座る恵吾くんの顔を見つめました。すると恵吾くんもこちらを向いて、目と目が合いました。
「ありがとうございます」
たった十文字の言葉で美沙の心は大きく揺さぶられたような感覚に陥りました。それはまるで、海を見ている時のような……。
「そ、そうだ! もうすぐお昼出来るよ。お昼は笑舞ちゃんのご飯だからほっぺたが落ちるほど美味しい事間違いなしだよ!」
美沙は抱いた感情を隠すかのように早口でそう言いました。
幸いにも恵吾くんはいつも通りの表情だったので、美沙が恵吾くんに抱いてしまった先輩後輩とは別の感情には気が付いていないようでした。
颯 「美沙先輩、やけに溜息多くなかった?」
笑舞 「言われてみれば」
颯 「深くて長い溜息だったな」
笑舞 「何か悩み事かも」
笑舞 「それとなく聞いてみます」
颯 「よろしく」
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