あすかのさんしゃこんだん

「明日香、あんた本当に良いの?」

 お母さんが心配そうな表情で私を見つめてきました。

「決めたことだから……」

「海君には伝えたの?」

「ど、どうして海になんて」

「お母さんは伝えるべきだと思うけど……あんたがこの土地を離れること」

 そんなことくらい言われなくてもわかっていた。でも、言えなかった。言えるわけがなかった。

「心配しなくても話すつもりだから」

 あえて断言はしなかった。私,居なくなると知ったらどんな顔をするか想像が出来てしまうから。

「全く、あんたって子は。しっかりと話しなさいよ。あんたにとっても海君にとっても大切なことなんだから」

「わかったから! お母さんこの後も仕事でしょう? 早く行ったら?」

「玄関まで見送ってくれないなんて薄情な娘ね」

「仕方がないでしょう。私も生徒会の仕事があるのだから」

 適当な理由を付けてお母さんと別れた私は、三者懇談が行われている教室の前でたった一人しゃがみこみ、大きく長い溜息を吐きました。




美沙  「そこに決めたんだね」

明日香 「美沙に勉強を教わっていなければただの夢だったわ」

美沙  「明日香が頑張ったからだよ」

美沙  「でも、そうなると来年から……」

明日香 「しばらくは会いにくくなるかもしれないわね」

美沙  「言うまでも無いと思うけど」

明日香 「わかっている。わかっているから……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る