ななみのせんたく

「やぁ。ボクが君を呼びだすことがあっても、君から呼びだされるなんて夢にも思っていなかったよ」

 いつもの様にリップサービスでそう言っているのかと思いましたが、為奈先輩の目は真っ直ぐナナを見つめていて、とても冗談を言っているようには見えませんでした。

「今日はお話したいことがありまして」

「七海くんの瞳を見れば、何を伝えたいのか言葉にせずとも伝わって来るよ。……でも、ボクの口から言うべきではないだろうね」

「そう、ですね」

 瞳で伝えても意味がない。瞳で伝えるだけではわざわざ為奈先輩に来て頂いた意味が無いのですから。

「為奈先輩には生徒会という道に導いてもらいました。だから、誰よりも先に伝えたくて」

「誰よりも……海くんにも?」

「はい」

 為奈先輩の問いにナナは力強く答えました。

「ナナ、次の選挙で生徒会長に立候補します」

 いつもなら、と言っていた所ですがナナは言葉を濁さず断言して、宣言しました。

「おやおや、それは困ってしまったな。ボクはナナちゃんには来期もになってもらいたかったのだけれど、先日二人で話した時にその気持ちが伝わっていなかったのだとしたら、ボクの実力不足としか言えないだろうね」

「為奈先輩のお気持ちはしっかり伝わりました。伝わった上でこの結論を選びました」

 導かれるだけの人生とは決別したかったから。

「意志は固そうだ。再びボクが導くのは難しい程に。でも……覚悟は出来ているのかな? 恐らく七海くんの最大のライバルは」

「誰が相手でも生徒会長の座を受け渡すつもりはありません」

「ふふっ、七海くんを選んだあの日のボクに今のボクから拍手を送りたいと思ってしまったよ。七海くん、今のボクに選挙権は無いけれどボクは君を強く支持させてもらうよ」

「ありがとうございます。とても、嬉しいです」




海  「確かに受理させてもらった」

七海 「ありがとうございます」

七海 「あと、誰にも秘密なんてわがままを言ってごめんなさい」

海  「これくらいのわがまま、可愛らしいものだよ」

海  「正直驚いたけど、生徒会長選頑張ってくれ」

七海 「ご期待に沿えるよう精一杯頑張ります」

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