てんこうせい
「これはこれは、笑舞先輩。丁度良いところに」
明才高等学校の制服を身に着けたブロンズ髪の見慣れぬ少女と共に校内を歩いていた爽香さんはワタシを見つけるとそう言って駆け寄ってきました。
「爽香さん、隣の子はもしかして……」
「流石、生徒会の情報通こと笑舞先輩ですね。お察しの通りこの子はさやちゃんのクラスに今月転校してきたキュートガールです。さぁ、名を名乗れぇい!」
「Ah~ 名乗るほどの者ではありまセン」
「ごめんごめん。さやちゃんの振りが悪かったね。自己紹介して」
「OKデス。I am双野・ターボと言いますデス。Nice to meet youデス」
そう言うと双野さんはワタシに握手を求めてきました。
「My name is “Ema” 」
「アー、日本語で大丈夫デス。むしろ、日本語でお願いしマス」
「それは失礼しました。改めまして小柳橋笑舞と申します」
「よろしくお願いしますデス。エマパイセン」
双野さんは満面の笑みでワタシの手を上下に振りました。
「爽香さん、先ほど言っていた『丁度良いところに』とはどういった意味ですか?」
「実は、さやちゃんの代わりにターボちゃんに部活動を紹介して頂きたくて。ダメですか?」
「ワタシで良ければ構いませんが……双野さんじゃどのような部活をご所望でしょうか?」
「そうですネェ~ ニホンを感じられるクラブが良いデス」
「と言うことなので、具体的には三つくらい紹介してあげてください。では、さやちゃんの出番はここまでなので失礼します」
そう言うと爽香さんはそそくさとその場を立ち去ってしまいました。
「では、爽香さんの指示通り日本らしい部活を三つご紹介します」
「ありがとうございマス」
双野さんを連れてワタシは茶道部へ向かいました。
「狭山先輩、突然押しかけて申し訳ありません」
「気にしないで。えっと、双野くんだったかな? 何か飲む?」
「どんなティーがありマスカ?」
「抹茶は勿論、紅茶に中国茶……コーヒーもあるけど」
「では、コーヒーを下サイ」
「……抹茶を淹れてあげて頂けますか?」
爽香さんの影響か、はたまた天然か、茶道部でコーヒーを選択した双野さんにワタシは頭を抱えました。
「抹茶とても美味しかったデス。今度はコーヒーも頂きたいデス」
「コーヒーでしたら別の機会に美味しいコーヒーを出すお店を紹介するので茶道部では頼まないで下さい」
というより、いつから茶道部はお茶を提供する部活動になってしまったのでしょうか。
「次は剣道部です」
「剣道……Swordで戦うクラブだと聞きまシタ!」
「まぁ、間違いではないですが」
少々認識に違いがあるのかもしれないと感じながら剣道場に入るとそこには……。
「双野さん、申し訳ありません。本日は剣道部の活動がお休みのようなので次に参りましょう」
「お休み……Sleep Time?」
「と、取りあえず、次に行きましょう」
何が起こったのか、倒れた剣道部員と空を切るだけで破裂音のような音を出す柚鈴先輩を見てとても双野さんに見せられる光景ではないと察したワタシは双野さんの腕を掴んで急いで剣道場を離れました。
「最後はここです」
「Bow……弓道部」
「ご存知でしたか」
「興味がありまシタ。やってみたいデス」
目を輝かせてそう告げる双野さんに弓道部部長の
「見まシタカ? 見まシタカ?」
「すごい! 凄いですよ。小柳橋さんわかりますか?」
「えぇ、素人目でもわかります」
初めて弓に触れたという双野さんでしたが、三度射た矢は三本とも的の中心に同じように命中していました。
「双野さん、弓道部に入りませんか? いえ、入ってください」
「Yes! 喜んデ!」
四月一日先輩の突然のスカウトに双野さんは二つ返事で答えました。
「双野さんもう少し考えてからの方が良いのでは?」
「エマパイセン、その必要はありまセン! ワタシ、弓道本気でやりたいデス!」
双野さんの言葉はとても力強くて、瞳はとても真剣でした。
生徒会議事録
明才祭で爽香と一緒に歩いていたブロンド髪の子が転校生だったのか。 芹沢
転校生の帰国子女かぁ、美沙も会ってみたいな。 美沙
弓道部に所属するとのことなので弓道部に行けば会えると思います。 笑舞
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