だんす

「……この声は」

 九十分以内に戻ると言っておきながら百二十分経っても戻ってこない柚鈴先輩を探して校内を歩き回っていたワタシはダンス部の部室から聞こえてきた楽しげな声で足を止めました。

「部活動中に失礼します」

 扉を開けて部室に入ると、一周回って綺麗にさえ感じられる汗を流す柚鈴先輩と、どことなく柚鈴先輩に似た顔立ちの一年生がまるで鏡合わせのようにぴったりと同じ動きで踊っていました。

「ドゥダダ・ドゥダダ・ダダダ・ダ! イエァ!」

 全く同じタイミングで動きを止めた二人に対してワタシは無意識に拍手を送っていました。

「柚姉、生徒会の人が来ているみたいだけど?」

「本当だ! 笑舞ちゃんいらっしゃい!」

「柚鈴先輩を迎えに来ました。会議の時間はとうに過ぎていますが?」

「本当だ! もうっ! 皆教えてよ~!」

 柚鈴先輩のその言葉に対して、柚鈴先輩を柚姉と呼んでいた一年生以外のダンス部員は『何度も伝えました』と言いたげな表情をしていました。

「じゃあ皆、これからも心をよろしくね! お待たせ、それじゃあ急いで生徒会室に戻ろうか!」

 柚鈴先輩は持っていたタオルで汗を拭き取るとワタシを無理矢理背に乗せて生徒会室に向けて走り出しました。



生徒会議事録

 そういえば、柚鈴先輩と共に踊っていたダンス部員の一年生柚鈴先輩のことを柚姉と呼んでいましたが、お知合いですか? 笑舞

 心ならワタシの従妹だよ! 柚鈴

 心ちゃんって確か、中学生ダンスチャンピオンの子だよね? ユズリンの親戚だったんだ。 美沙

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