おそろい

「……」

 生徒会室へやって来るとワタシの机に……正確に言うとワタシたち役員の机それぞれに茶色い無地の紙袋が置かれていました。

「お疲れ様。今日は笑舞ちゃんが一番乗り? って、この紙袋何だろう?」

「ワタシも心当たりがなくて。まだ中は見ていないのですが」

「美沙たちの机に置かれていたって事は、これは美沙たちに宛てられたものって事だよね?」

「恐らく」

「開けてみようか」

 美沙先輩は楽しそうな笑みを浮かべると、躊躇することなく紙袋の中身を取り出しました。

「これって、Tシャツ?」

「のようですね」

 ワタシの紙袋にも美沙先輩が持っているものと同じイラストの印刷されたTシャツが入っていました。

「海と明日香の袋の中にも同じTシャツが入っているよ」

「ということは、ナナと柚鈴先輩の紙袋の中も同じTシャツでしょうか?」

「はい。その通りです」

 そう答えたのはワタシたちが持っているTシャツと同じデザインのTシャツを着た小雨先生でした。

「同じと言っても、ここが違いますよ」

 小雨先生はそう言って自分が着ているTシャツの銀色のラインを指差しました。

「本当だ! 美沙のラインはブルーになっている」

「ワタシのラインはピンクです」

「折角イメージカラーがあるので、ラインの色をそれぞれのメンバーカラーにしてみました」

「小雨ちゃん先生、してみましたって事は?」

「はい。皆さんとお揃いでクラスTシャツのようなものがあれば良いと思いまして、勝手に作りました。と言っても、イラストを描いただけであとは知り合いの業者にお願いしただけですが」

「小雨ちゃん先生、これはエモエモのエモですよ。ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「いえ、いつも美味しいお菓子を頂いているお礼のようなものなので」

 小雨先生は恥ずかしそうにそう言いましたが、その表情はとても嬉しそうでした。



生徒会議事録

 小雨先生、Tシャツありがとうございます。 芹沢

 格好良くて、可愛くて素敵なデザインです。 七海

 動きやすくて最高! 柚鈴

 お揃いでありながらメンバーカラーが異なっている所にオリジナリティを感じました。 明日香

 皆さん、そんなに褒められると恥ずかしいです。 小雨

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る