せいとかいちょうせりざわかい

「お疲れ様」

 美沙先輩、明日香先輩と共に生徒会室にやって来た会長はすぐには席に着かず、歴代の生徒会の資料が保存されている戸棚から何かの資料を探し始めました。

「海? 何か探しているの?」

「先々代の生徒会役員の資料を」

「先々代と言いますと、草木林華生徒会長の頃ですね。その資料でしたら、芹沢海生徒会長が見ていらっしゃる棚の上から三段目、右から七番目のファイルにお探しの資料がまとめられているはずです」

「上から三段目、右から七番目……あった! ありがとうって……えぇ!?」

 見つけ出したファイルを手にした会長はそのファイルのありかをまるで最初からっ博していたかのように正確な情報を伝えた声の主にお礼を告げました。が、その声の主の正体に驚きました。

「天先輩!? いつから生徒会室に」

「芹沢海生徒会長が福品美沙副会長、春風明日香生徒会庶務と生徒会室へやって来た時には既に生徒会室にお邪魔させていただいていました」

「そうでしたか」

「それにしても、先々代の生徒会ですか。つい最近のこととはいえ懐かしいですね」

「天先輩、何か知っているんですか?」

 会長は目そう言いながら前報道部部長の青山天先輩に詰め寄りました。

「草木林華先輩という人物は、失礼ながら擁護できないほど賢さの足りない方でしたが、裏表が一切ない性格で当時の明才高等学校を治めた方でした」

「賢さが足りない。汚い言葉になってしまいますがバカだったという事ですか? 生徒会長なのに?」

「芹沢海生徒会長は生徒会長という役職は必ずしも賢くなくてはならないとお考えのようですが、それはあくまで適性の一つに過ぎません。事実、これまでの生徒会長の中には賢さの足りない生徒会長も多々居ました。林華姫もとい草木林華先輩は中でも突出していましたが」

「そう、ですか」

 青山先輩からそう言われた会長はどことなく、抱えていたものが軽くなったかのような安心した表情を見せました。

「千景……先本千景前生徒会長は草木林華先輩を越えることを目標に生徒会長に立候補した。彼女は元々のポテンシャルが高かったから、君たち二年生が草木林華先輩のことをすっかり忘れてしまうくらい完璧な生徒会長に軽々となってしまったけれど、支持者の熱狂度は確実に林華姫の方が高かった。これだけは間違いない。千景はそれを認めていないと思うけれど」

「天先輩、先輩から見て俺は草木林華先輩のような生徒会長になれるでしょうか?」

 そう問いかけた会長の瞳はとても真っ直ぐで、本気でした。

「なれる訳がない。絶対に不可能。今すぐにでも諦めるべき。何故なら君は、芹沢海だから。表も裏も無い林華姫に対して君は表も裏も持ち合わせているし、林華姫や千景のように全生徒を魅了する力はない。だから君がいくら望もうと草木林華には、先本千景にはなれない。君がなれるのは芹沢海だけだ。君の周りには悩みを一緒に抱えてくれる仲間が居る。その仲間と一緒に芹沢海の生徒会を作れば良いのではないかな?」

「何故それを?」

「これでもアタシは報道部の初代部長なのでね」

 そう告げると、青山先輩は報道部時代には見せなかった純粋な笑顔を見せました。




生徒会議事録

 ナナじゃお役に立てないかもしれないですが、いつでもお話聞きます。 七海

 言いにくい個あると思うけど、ワタシも話聞くよ! 柚鈴

 同じくです。微力ながら力になりますので。 笑舞

 学習面や生活面、生徒会に関して。一人で抱えきれないときは仲間を頼って良いんですよ。それでも抱えきれなくなったら大人を頼ってください。ちなみに私は仲間側です。 小雨

 少しは吹っ切れた? 明日香

 例え個人的な悩みでも美沙たちはいつでも相談に乗るよ。だって、みんな生徒会長のことを、芹沢海のことを信頼しているから。  美沙

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