にゅうぶきぼうしゃ
「少し、話を聞いてもらえるか?」
生徒会室に役員全員が集まると、会長は小さく深呼吸をしてからとても真剣な面持ちでそう告げました。
「俺は今まで一人で抱え込んできたことがある。中には生徒会には直接関係の無い個人的な悩みもあるけど、それも含めて悩んだときは相談しても良いか?」
会長のその発言を聞いたワタシたちの口からは、ただただ大きな溜息がおよそ一分間にわたって吐き出されました。
「その反応は何だよ!」
「昨日の議事録に目を通していないのかしら?」
「ちゃんと見たけど……」
「それがワタシたちの答えだよ!」
「それは理解しているけど、俺からしっかりとお願いした方が良いと思ってだな」
「海って本当に真面目だよね。美沙だったら疲れちゃうよ」
小さく深呼吸をして覚悟を決めた会長はとても大きく見えましたが、先輩方の攻撃もとい
「ちなみに海先輩、今は悩み事ってありますか?」
「無いと言ったら嘘になるな」
「どういった悩みでしょうか?」
「吹奏楽部に関してなのだが……」
「吹奏楽部? 確か、海が卒業式の入退場時の演奏をして貰えないか部員に頼み込んでいたよね? 何か問題が発生したの?」
会長が密かに行っていたはずの計画を当たり前のように話し始めると、この計画を一切知らなかった柚鈴先輩とナナそして、密かに計画を行っているつもりだった会長が目を丸くして驚いていました。
「気付かれていたのか。まぁ、それはそれとして、吹奏楽部の練習を見ていたら今年で終わりにするには惜しくてな」
「海個人としては吹奏楽部には来年度も続けて欲しいからどうにかして部員を増やしたいと思っているという事かしら?」
「あぁ、俺のわがままだがどうにかできないかと思ってな」
「流石にこの時期から部員を増やすのは無理だと思うのだけど」
ワタシも明日香先輩と同じ思いを抱いていると、ナナが小さく手を挙げました。
「あのぅ、今更で申し訳ないですが、うちって吹奏楽部あったんですね」
「今年は四月の部活動説明会には参加していない上に、部員のほとんどが他の部活と兼部をしていて活動はほとんどしていないからナナちゃんたち一年生は知らなくても仕方ないかもね」
「実は、ナナのクラスに前々から吹奏楽をやりたいと言っている子がいて。四月に入って来る新入生に吹奏楽をやりたい子が居たらその子たちと吹奏楽部を作りたいと相談を受けていまして」
「七海ちゃん! すぐにその子に吹奏楽部のことを教えてあげなよ!」
「そ、そうですね」
柚鈴先輩に促されたナナはすぐさまそのクラスメイトに連絡を取りました。
「ナナのクラスメイトのように吹奏楽をやってみたいと思いながらも吹奏楽部の存在を知らずにいる生徒が他にもいるかもしれませんね」
「笑舞ならその生徒を見つけることが出来るか?」
会長は普通なら無茶な要求をワタシに振って来ました。
「少し時間を頂ければ」
「頼めるか?」
「かしこまりました」
会長の要求を受けたワタシはすぐさま報道部のネットワークを借りて該当の生徒を割り出しました。
生徒会議事録
なんか、今まで一人で抱え込んでいたのがバカみたいだ。 芹沢
みたいじゃなくて、バカでしょ。 明日香
吹奏楽部の美園ちゃんに入部希望者の数伝えたらびっくりしていたよ。 美沙
入部希望者九人。現部員のおよそ二倍ですからね。 笑舞
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