じこしょうかい
限りなく半円柱型に近い四階建て校舎が特徴的な公立明才高等学校。ワタシたち生徒会役員の仕事部屋である生徒会室は最上階である四階にあります。
「引継ぎも終わったことだし、これからは俺たちだけの力で活動していくことになる訳だが……」
昨日とは異なり随分と軽快に語りだした生徒会長の芹沢海先輩はそう言い始めるとチラチラと姉さまの代から引き続き生徒会役員を務める福品美沙先輩を見ていました。
「最初だから自己紹介をした方が良いと思うけど。昨日は引継ぎでお互いに話す時間なんて無かったから」
「じゃあ、そうしようか。順番は俺から時計回りで、美沙、早川さん、小柳橋さん、初島さんで良いか?」
ワタシを含めた四人の役員から反対意見が出る事は無かったので芹沢会長から順番に自己紹介を行うことになりました。
「それじゃあ早速。芹沢海です。昨日も言った通り、生徒会という職に就くのは初めてなので皆に迷惑をかけることが多いと思います。誕生日は8月9日で好きな食べ物はコロッケです。これから一年よろしくお願いします」
昨日よりは少し気楽な雰囲気で話していた芹沢会長に拍手を送り、続いて福品副会長が自己紹介を始めました。
「福品美沙です。生徒会関連の事は演説でも何度も話してきたので省略させてもらいます。誕生日は4月17日で確か柚鈴ちゃんが5月生まれだったはずだからこの中では美沙が一番お姉さんになります。好きな食べ物はショートケーキで、生徒会の大きな仕事が片付いた時に自分へのご褒美で食べています。最近はお菓子作りにはまっていて今年も生徒会は女の子が多いので時間が合う時にでもみんなでお菓子作りが出来たらいいと思っています。よろしくお願いします」
ワタシの記憶が正しければ演説の際は一人称が私だったはずなのですが、素の福品会長は一人称が美沙なのだなと思っている間に早川会計の自己紹介が始まっていました。
「早川柚鈴です! 好きな教科は数学と体育で、よく運動部の助っ人をしています! 誕生日は5月4日で、好きな食べ物は鶏のササミです! 美紗ちゃんが言っていたお菓子作りワタシもやってみたいです! 生徒会と運動部の助っ人を両立させるのは難しいみたいなので皆にはすごく迷惑をかけてしまうかもしれませんがどうぞよろしくお願いします!」
今まで出会って来た人の中で最も元気が溢れている早川会計の自己紹介を聞いたワタシはノープランで自己紹介を始めました。
「小柳橋笑舞です。生徒会という活動は初めてですが、姉さまから仕事内容に関して教えて頂いたので先輩方の手を煩わせる事は無いかと思います。好きな食べ物は福品副会長と同じくショートケーキです。姉さまがいるとイチゴを盗られてしまうので、姉さまが生徒会で家を留守にしている間に食べています。誕生日は7月8日です。福品副会長が仰っていたお菓子作りに興味があるのでもし行うことがあればご一緒したいと思いました。どうぞよろしくお願い致します」
ノープランだった割にはスラスラと言葉が出て来たことにワタシ自身驚きながら、次に控える七海副会長にバトンを渡しました。
「ナナは初島七海と言います。誕生日は11月3日で、好きな飲み物は牛乳です。福品副会長とお菓子作りナナもしてみたいです。あとは……ナナが副会長になるなんて思いもしていなかったのでまだ信じられないですが、ナナに投票してくれた人たちの為にも頑張ります。以上です」
ワタシの独自の情報網から得た情報では、明才の全校生徒が七海副会長に投票したらしくワタシとしては生徒会役員の中で最も気になる存在でした。
「さて、これで全員の自己紹介が終わった訳だが。俺から一つだけ提案があるのだが」
全員がまだ発言が続くのかと思い沈黙を貫いていたら、誰かが返答をしてくれると思っていたらしい芹沢会長は千景先輩の真似をするように小さく咳払いをして誤魔化しました。
「これから共に活動していくうえで、互いを役職で呼ぶのではなく名前で呼ぶのはどうだろう?」
「良いと思います! ワタシ堅苦しい関係が苦手なので!」
「美沙もそれには賛成だけど、笑舞ちゃんや七海ちゃんは美沙たちの事を名前では呼びにくいと思うけど、どうかな?」
「お三方が良いのでしたらワタシは構いませんが」
ワタシはそう言って七海副会長もとい七海さんの方へ視線を向けました。
「海先輩、美沙先輩、柚鈴先輩、笑舞先輩じゃなくて笑舞ちゃん……よしっ」
七海さんはうっかりワタシの事まで先輩呼びをしてしまいながら自分の中で何か決意を決めたようにそう呟いて、
「ナナも大丈夫です」
小さな手で大きなブイサインを作ってそう言いました。
「改めて、美沙、柚鈴、笑舞、七海。これからよろしく」
「はい、よろしく」
「頑張りましょう!」
「よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします」
こうして明才高等学校新生生徒会の活動はようやく幕を開けるのでした。
生徒会議事録
あの、笑舞ちゃん。ナナの事は呼び捨てでも良いよ。 七海
わかりました。ナナ。では、ワタシの事も笑舞とお呼びください。 笑舞
仲良きことはなんとやらだね! 柚鈴
『仲良きことは美しきかな』って言いたいのかな? 美沙
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます