落とし前

 今日は少し大きな抗争があった。負けてメンツを潰されることこそなかったものの、うちにも損害が出た。今俺が向かっているのは、抗争を仕掛けてきた連中の背後にいると目される男のところだ。うちに牙を剥いた落とし前をつけに行くのだ。


「だから、それはあいつらが勝手にやったことで、私は無関係ですよ」

「俺が聞きてぇのはそんな言葉じゃねぇんだよ。分かるだろ?」

「じゃあなんですか。私に身に覚えのないことで謝罪しろっていうんですか?」

「しらばっくれても無駄だ。今回の件ではうちにも損害が出てる。死んじまったやつもいる。マジなところ、俺は今すぐにでもお前をあっちに送って、そいつらに詫びさせてぇと思ってる」


 目の前の男が息を飲むのが分かった。俺がそいつの眉間から銃口を外さずに喋ってる意味がやっと分かってきたらしい。


「わ、分かった。賠償はする。金は払う。だから、命だけは……」

「オーケー。確かに聞いたからな。あともう一つ。これでこの話は終わりだ」

「な、何を……」


 俺は持っていた拳銃の銃把で男のこめかみを殴りつけた。盛大に男がぶっ倒れる。


「次はねぇからな」


 悶絶している男に短く吐き捨てて部屋を出る。部屋の外には、部下が二人待機していた。


「話はついた。帰るぞ」


 部下たちを連れて事務所への帰路に着く。あの男のせいで俺の弟分も死んだ。俺は路地を歩きながら、弟分のオンナにどう伝えればいいか考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る