背伸び

 我ながらちょっと、いやかなり背伸びをしてしまったと思う。僕ぐらいの大学生の身分なら、女性を誘うと言ってもせいぜい居酒屋ぐらいだろう。なのに、僕たちの今いるお店は驚くべきことにコースしかないようなところだった。


 幸いなことに、目の前に座っている彼女はとても喜んでくれているようだ。普段食べることのないような料理が運ばれてくる度に目を輝かせている。正直なところ、ろくに下調べもしないで目についたお店に入っただけなのだけど、少なくとも失敗ではなかったらしい。


 楽しく話をして、美味しい料理を堪能して、あっという間に時間は過ぎていく。デザートを食べ終え、彼女がお手洗いに立った隙に会計を済ませる。一食分にしては目を見張る額を支払って席に戻る。


 きっと僕の背伸びは彼女にも見透かされているのだろう。それでも構わなかった。彼女が僕の誘った食事で笑顔になってくれた。それで良かったんじゃないかな。

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