掌編・短編置き場

石野二番

窓の向こう

 窓の向こうには、別の世界があった。そこには、別の私たちがいた。


 窓の向こうの私たちは、こんな無骨な銃なんて持ってはいない。


 窓の向こうの私たちは、こんな憎悪の目でお互いを睨みつけたりはしていない。


 窓の向こうの私たちは、穏やかな目でお互いを見つめ、朗らかに笑い合っている。


 どうしてこちら側の私たちはこうなってしまったのだろう。


 どうしてこちら側の私たちは、向こう側のようになれなかったのだろう。


 頭の中を「どうして」の群れが巡る。それを振り払おうと銃を構え直そうとした時、一発の銃声が聞こえて身体から力が抜けた。


 撃たれた。どこを?逃げないと。でも動けない。


 窓の方に視線を向けると、窓ガラスにはひびが入っていた。あぁ、あそこから撃たれたのか。


 身体からどんどん血と体温が抜けていくのを感じる。足音が近づいてくる。誰のものかは、考えるまでもない。


 現れたあなたの瞳は濡れていた。それで分かった。あなたも、あの窓の向こうを見ていたのだと。


 そこで私の意識は真っ暗闇に落ちていった。

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