第11話
テミアに着く頃にはもう日は落ちかけていた。
「ついたあーー」
「往復6時間はちよっときついね」
「そうね。効率も良くなさそうだし。こういうクエストはあんまり受けない方が良さそうね」
なんて呑気に会話しているが、俺は今とんでもないことに気づいてしまった。
クエストを終えテミアに戻ってきたのだけれども、
「身分証なくね???」
「「「あ、」」」
そう、俺たちはまだギルドカードをもらっていないのだ。師匠にもらった仮身分証も最初にテミアに入るときに渡してしまった。
「俺に名案あるぜ!」
ライエルの聞いたことあるセリフに耳を傾けてる。
「カイがシャドウステップで入ればいいじゃん!!そんでギルドカードもらってもう一回出てこいよ。出てくる時は衛兵もなんも言ってこねーし、なんとかなるだろ」
「ばか!この街で問題起こしたら師匠にも迷惑かけるでしょ!!」
ただの馬鹿だった…
「やっぱり、正直に言った方がいいんじゃないかな?依頼書見せれば通してくれるかもだし。無理ならジョーさんに連絡とってもらおうよ」
んー、それしかないか。
「分かった。とりあえず聞いてみるか。
すみません、俺たち今日冒険者になってまだギルドカードを貰ってないのにクエスト受けちゃったんですけど…」
「ああ、お前たちか!!ちょっと待ってろ」
必死に言い訳しようとしていたが、この感じは事前に話を聞いているみたいだった。
「念のため名前だけ言ってくれるか?」
「カイです」
「ライエルだ」
「レナよ」
「ゴ、ゴードンです」
「よし、間違いないな。ジョーから話は聞いてるよ。これがギルドカードだ。これから頑張れよ!!」
衛兵の男はジョーさんと知り合いらしく、ギルドカードを渡してくれた。
「な?なんとかなるって行ったろ?」
「お前の言う通りにしてたら無駄に衛兵に捕まるとこだっただろうがばか」
「なんだお前、ちょっとスキルが出たからって調子乗ってんじゃねえぞ!」」
「羨ましいんだろう?正直に言えよ」
「羨ましくなんてねえよ!シャドウステップって英雄じゃなくてどっちかっていうと悪者のスキルだろ」
「おい!俺のシャドウステップばかにすんなよ」
「フフッ。やめなさいよこんなとこで」
「何笑ってんだレナ。お前もばかにしてんのか?」
「そんなこと言ってないじゃない!!カッコいいと思うわよ?悪者ステップ」
「シャドウステップだって言ってんだろ!!!」
「カイくん。僕は本当にカッコいいと思ってるよ。」
「やっぱゴードンはプロの分かり手だなあ」
俺の味方はゴードンだけだ。
「ゴホン!話は終わったかな?終わったなら門を早く通ってくれると助かるんだが」
「す、すみませんでした」
門の目の前でグダグタ言い合っていたら衛兵さんに怒られてしまった。申し訳ない。
門を潜った足のまま冒険者ギルドに向かう。
なんとなく今日のうちに報告しておきたかった。
「おう!兄ちゃん達!ギルドカードは受け取れたようだな」
「はい。どうやって街に入ろうかと思いましたよ」
「ガッハッハ。言うの忘れててなすまんかった!それで?初クエスの方はどうだった?」
「もちろん余裕だったぜ!!どっかの誰かは剣折られてたけどな」
そう言ってライエルは俺の方を見てくる。
「あー、あのモグラの爪は固えからな。その分いい素材にはなるんだが。ま、怪我は無いようでよかったよ。サインはもらってきたか?ついでに換金もしてくっからあったら渡してくれ」
「はい。これです」
依頼書と、魔石2つ、爪モグラの爪を4つ渡した。
「お、こっちのは爪モグラにしてはデカめの魔石だな。待ってろよ」
そう言ってジョーさんはギルドの奥に行って戻ってきた。
「今回も金貨2枚だ。魔石が銀貨50枚とでかい方が70枚、爪が1つ銀貨20枚ずつだ。クエストクリアおめっとさん!これからも頑張れよ!!」
「はい!ありがとうございます」
「それと明日は休みにしてみたらどうだ?剣も買わないといかんだろうし、あんま根を詰めすぎてもよくねえしよ」
「ええ、そうしようと思ってたところです。」
シルさんのとこにも行こうと思ってたし、ちょうどいいと言えばちょうどいいな。
「そうか、コツコツだ。忘れんなよ」
このコツコツってのはきっとジョーさんの座右の銘かなにかなんだろう。
「じゃあまた明後日来ますね!」
「おーうゆっくり休めよ」
冒険者ギルドを出て宿屋に帰る。
「休みってなにすんだ?」
「俺はとりあえずシルさんのとこに短剣買いに行こうと思ってる。顔出せって言われてたし。」
「私もマナポーション買っておこうかな?あった方がいいわよね?」
「じゃあ僕も盾見てみたいな。まだ今の盾を使うつもりだけど、消耗品だし見るだけでも楽しそうだから。」
「なんだよお前ら結局いつもと大差ねえな。んー、じゃあ俺も剣見てみっかな。カッケーやつがあるかもしんねえし。」
「結局ライエルも一緒か。なら、明日はみんなでシルさんのとこに行くとするか」
「そうね、じゃあとりあえずお風呂行きましょう!もう、ムズムズしてしょうがないわ!」
レナは風呂に入りたくて仕方なかったようだ。
ということで、俺たちは風呂に入ってアルさんの旦那さんの料理を食べて寝る事にした。
もうあの料理がないと1日の終わりを感じられない。
そういえば旦那さん厨房から出てきたの見たことないな。旦那さんも狼人族なんだろうか?今度お礼を言っておこう。
ベッドに入って30分。なんで俺がこんなことを考えていたかというと、全く寝れる気配がないからだ。
昨日は疲れてすぐ寝れたのですっかり忘れていたが、レナが同じ部屋にいるんだった。
しかもレナのやつパジャマの露出度が高えんだよな。胸元が見えている。
日本にいたら15歳とは思えない。なんでそんなスタイルいいんだよ。
仲間だと思っていたライエルとゴードンはスヤスヤ寝てやがる。
あいつらは、レナとベッドが隣り合っていないので、俺だけがドキドキしているという馬鹿みたいな状況だ。
「ンッ」
レナが寝返りと同時に色っぽい声を出す。
ベッドに押し付けられて胸元が押し出される。
くそおおおおお
俺はこの後1人で3時間ドキドキし続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます